
コロナ禍だからこそ未来を予測した新規事業が大切な理由【シナリオプランニングの使い方】
2020年のはじめから世界中のビジネスに影響を与え続けている新型コロナウイルス。飲食業や旅館業などリアルでの顧客とのタッチポイントが必要な業界はもちろん、それ以外でも既存のビジネスでは勝負できなくなった事業もあるでしょう。
そこで「新規事業の必要性」を痛感した方も多いのではないでしょうか。今回の例のようにビジネスには不測の事態がたびたび襲い掛かってくるものです。そこで今回は「新規事業が必要な理由」や未来を予測して事業戦略を考えるうえで必要な「シナリオプランニング」の使い方についてご紹介します。
目次
「感染症で外出できなくなる」という未来予測について
帝国データバンクの調査によると、コロナショックでの倒産件数は47都道府県全体で893法人(2021年1月15日現在)となっています。「飲食業」がトップ、次いで「旅館・ホテル」と「建設・工事業」、「アパレル小売店」、「食品卸」、「食品小売」、「アパレル卸」とやはりオンライン上でのビジネスが難しい業界が特に打撃を受けている状態です。また販売店の倒産によって下請け、孫請けの企業も同じく苦境に立たされているのがデータから分かります。
なお、2020年の2月から現在にかけてほぼ右肩上がりで倒産件数が増えており、2021年1月~2月の二度目の緊急事態宣言によってこの数はさらに増えるのではないか、と予測されています。
参考:帝国データバンク「特別企画:「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査 <1月15日(金)16 時現在判明分> 」
「治療法のないウイルスによって人が外に出なくなり顧客を獲得できなくなる」という正確な未来は予測できません。しかし「オンラインに顧客体験が移行する」という可能性は、予想をしてアクションがとれていた可能性もあります。飲食では既に出前館やUber Eatsを使ったデリバリーができました。アパレルでは既にECプラットホームがいくつもあり、人の購買チャネルはありました。コロナ以前から店舗での販売と同等かオンラインにも分散投資できていればよかったのかもしれません。
未来予測で売り上げを伸ばしたアパレル企業・株式会社アダストリアの事例
例えば「グローバルワーク」「ローリーズファーム」などのアパレルブランドを展開する株式会社アダストリアはコロナショック以前からECを強化していました。自社ブランドを含める30以上のブランドを1つのプラットホームに集約し、購買しやすい環境を構築していたのです。
コロナ禍においても自宅待機中のショップ店員に洋服を送付。スタイリングの写真をEC上に投稿したり、SNSでのLIVE配信などで遠隔で顧客とコミュニケーションを取ることで、接客ができる環境を作り上げていました。同社の北村嘉輝取締役は「コロナ禍で他者が縮小している間に、次のアクションを考えている」と語っています。「若者向けから60代向けへのターゲットの拡大」「海外への進出」といった戦略を既に構想しているのです。こうした「未来志向」が現代の不確実なビジネスを生き抜いていくための要因でもあります。
シナリオプランニングとは「未来の不確定なシナリオを作る」フレームワーク
ただし未来に向けた戦略をゼロから考えるのは難しいものです。そこでフレームワークの活用をおすすめします。フレームワークを利用し、思考に制限をかけることで発想がしやすくなるのです。なかでも未来の予測に特化したストーリーを組み立てるためのフレームワークがシナリオプランニングとなります。
シナリオプランニングの考え方
シナリオプランニングの考え方とは「不確定な外部環境の変化を予測して外部環境や自社のストーリーを描く」というものです。将来に起こり得る市場の変化を予測したうえで、自社が今のうちにどのような準備をすべきなのか、またどう対処すれば回避できるのかを考えるための手法です。
同じく外部環境を分析するツールにPEST分析があります。PEST分析は「政治・経済・社会・技術」の4要素について「点」で変化を記載していくツールです。
それに対してシナリオプランニングは「〇年後に政治情勢はどうなっているのか」「トレンドはどう変わるのか」という点の要素をもとに「ストーリー」をつなげていくイメージで作ります。「数年後に外部環境が変化することが予測されるから、自社は今のうちにどのような戦略を取るべきなのか」のシナリオを考えることで、変化に対応できるようなアクションプランまでを考えるフレームワークです。
ただし確定した未来の要素は誰にも想像がつきません。ですのでシナリオプランニングでは「不確定な未来を予測する」という前提のもと、起きる可能性がある変化をすべて書き出していきます。
シナリオプランニングの作り方
では続いてシナリオプランニングの作り方を紹介しましょう。シナリオプランニングでは「外部環境の変化のインパクト」と「不確実性」で4つの象限に分けて考えていきます。
まずは自社のビジネスを定義して必要な外部環境を洗い出す
まずは事業の市場を定義しましょう。外部環境分析をする際に自社に関係のないステークホルダーを含めると軸がぶれてしまうからです。ここではジョブ理論を用いて「着目すべきジョブはなにか?」「ジョブを抱えている顧客は誰か?どんな状況なのか?」を考える必要があります。ジョブによる市場の定義の後に、外部環境分析で市場に影響を与えそうな(着目すべき)要因を洗い出していきます。
ドライビングフォースをもとにシナリオを考える
ここまでで「点」の要素ができたら「何年後にどの地域で起こり得る変化を考えるのか」について書き出しましょう。10年後に東京で起こる変化なのか、20年後に海外で起こる変化なのかを定義することが必要です。時間軸と地域軸について定義できたら、現状から未来にかけての変化のシナリオを作っていきます。「1年後に○○が発生。競合と顧客の変化は○○となる。なので自社は今のうちに○○のような準備をすべき」といった具合に、変化を書く必要があります。そのシナリオに対しての実現性と発生時インパクトの2軸でシナリオを分類した後に自社で備えるべきシナリオを選定していきます。
最終的に自社のビジネスモデルと照らし合わせながら「〇年後の未来の変化に対応するために、今どんな戦略を練るのか」を書き出していくことがゴールになります。先述したようにシナリオプランニングは複数のストーリーができることになりますので、1つに絞らず可能性があるシナリオをいくつも書き出していきましょう。
まさにVUCA時代!すべての企業に新規事業が大切
現代のビジネスはそもそもVUCAといわれるほど不確実で複雑な市場になっています。そのなかでコロナショックのようなイレギュラーも発生する。リスク・ヘッジのためにも既存事業を伸ばすだけでなく、新規事業が必要になっている状況です。新規事業の戦略を考えるうえで、フレームワークは「発想するためのツール」として、また「事業をまとめて共有するためのツール」として役に立ちます。
BizMakeでは新規事業開発に役立つツールをさまざまご用意しています。どなたでも無料で使えますので、ぜひご利用ください。また使い方については「フレームワーク図鑑」をご覧ください。
