
ペルソナシートの進化版「ペルソナキャンバス」とは!作り方やテンプレートを紹介
新規事業をスタートするうえで、ペルソナの設定は重要です。特に現在のビジネスではニーズに当てはまったサービスやプロダクトを構築することが必要不可欠になっています。そこで今回はペルソナを設定するために役立つフレームワーク「ペルソナキャンバス」と、その使い方をご紹介します。
目次
ペルソナとは
ペルソナとはサービスやプロダクトを販売する相手の人物像を指した言葉です。似た言葉にターゲットがあります。ペルソナとの違いは、設定のリアリティや細かさです。
ターゲットは「10~20代の男性」や「ビジネスパーソン」など大まかな人物像を設定します。一方のペルソナは「35歳男性の山田太郎、既婚、息子と娘が1人ずつ。東京都港区在住、大手商社に勤務、趣味はジム通い、最近禁煙をはじめた」と、よりリアルな人間像を構築します。ターゲットに比べてペルソナのほうが、より深く人物像を設定できるのがメリットです。
なぜペルソナを設定しなくてはいけないのか
マーケティング1.0といわれていた以前のビジネスでは、顧客の属性よりも製品の価値に重きが置かれていました。しかし市場に商材が溢れ、ただモノを作っているだけでは利用してもらえなくなった現在のビジネスでは、顧客のニーズを踏まえたうえで商品開発をする必要があります。「何を売るか」ではなく「誰に売るか」を重視すべきだからこそ、ペルソナの設定が重要なのです。
またペルソナを明確にして、フレームワークにまとめることで、チーム内で共通の意識を持つことができます。開発担当者やマーケティング担当者、営業担当者などが同じ視点を持って動くことで、商品のバリューがぶれません。さらに1つの指針があることでプロジェクトが進むスピードも速くなります。
ペルソナマーケティングの成功事例
ペルソナ設定の成功事例として有名なのは「Soup Stock Tokyo」でしょう。「秋野つゆ」という架空のモデルをつくり「彼女に好かれるためにはどのような商品を作るべきか」という視点でターゲティングをしました。
驚くべきはその細かさです。37歳の女性、都内在住、経済的に余裕がある。都心で働くキャリアウーマン、社交的だが、自分の時間も大切にする、装飾よりは機能を重視しており、フォアグラよりはレバ焼きを頼む、プールではいきなりクロールからスタートするなど、いかにも本当に存在しそうなペルソナをつくりました。
その結果、自然素材を用いた「食べるスープ」を製造、出勤途中でも食べやすい容器を作り、オフィス街の駅ナカなどに出店、Soup Stock Tokyoはブランディングに成功し創業からたったの10年で、売上高42億円までの組織に成長したのです。
ペルソナの欠点とは
しかしそんなペルソナ設定にも欠点があります。それが「仮説要素」が強いことです。
たとえば先述のSoup Stock Tokyoの例を用いましょう。「都心で働く37歳のかっこいいキャリアウーマン」というと確かに、派手な装飾よりも機能的で無駄がなく、それでもセンスがいい物を選びそうなイメージはあります。
しかしそれはあくまでイメージであり、提供者側の仮説にすぎません。実際のところ、同じ属性の人物がどれほど存在するのかも定かではなく、またペルソナがどのような悩み、願望を抱えているのかも分析できないのが現実です。
マーケティングをするうえで犯しがちなミスが「企業側が都合のいいペルソナ像を作ってしまうこと」。デスク上でブラストをしながら話すうちに、主観が混ざってしまうと、いるはずのないペルソナを構築してしまうこともあります。
ターゲティングはビジネスのスタート地点です。利用してもらう対象を間違えてしまうと、MVPをつくる際に思ったようなフィードバックを得られなかったり、いざリリースしても利用されることなく撤退したりすることにつながります。
客観的にペルソナを作成するためにジョブ理論を
そこで顧客のインサイトやニーズを可視化するために、ジョブ理論を併用することをおすすめします。ジョブ理論とはマーケティングの権威、クレイトン・クリステンセンが提唱する理論です。
顧客の願望や悩みを「ジョブ」、商材を使って実現、解消することを「ハイア」として顧客の本質的なニーズを発見するための理論になります。
ジョブ理論を使用し、実際に顧客候補となる人物にインタビューを敢行することで論理的かつ客観的にペルソナを設定できるようになります。今回、紹介するフレームワーク「ペルソナキャンバス」には顧客(候補)のニーズを分析する要素も含まれているのが特徴です。では実際に各項目についてご紹介しましょう。
ペルソナキャンバスの各項目について
ペルソナキャンバスは全部で8つの項目に分かれています。すべての項目を埋めることで顧客の抱えている願望や悩みを把握しながら、適したペルソナを作成することが可能です。では各項目について紹介していきましょう。
1. 願望・悩み・ゴールValue・Goals・Job to be done
まずは顧客がどのような願望や悩みを抱えているのか。そしてサービスやプロダクトが顧客のどのような悩みを解決し、願望を叶える存在を目指しているのかを決めます。すべての項目の軸になる大切な要素ですので、最終的なゴールを明確にしておきましょう。
2. 制約・状況Situation
1のバリューはどのような状況において発揮されるのかを記します。例えば「防寒具」であれば冬の寒い時期に効果が出るでしょう。また「懐中電灯」であれば夜の散歩時か、停電時などの制約が生まれます。
3. 最小化したい・最大化したい成果Pain・Gain
顧客が最小化したいこと、もしくは最大化したいことを成果として書き出します。例えば共働きの家庭の場合、奥さまは出勤前の家事の時間を最小化したいと思っているでしょう。これはPain(痛み)です。また余裕をもって出勤できることはGain(利得)になります。
4. 感情Empathy
ここにはジョブ理論でいう「感情的なジョブ」と「社会的なジョブ」が入ります。顧客がジョブを解決することでどう感じたいのか、またどう感じたくないのか、また他人からどう見られたいのか、どう見られたくないのかを簡単に書き出しましょう。
5. 代替手段Existing Alternatives
現状、顧客がジョブを解決するために用いている代替手段を書き出しましょう。他社のアプリケーションサービスや、競合の店舗などが記入されます。
6. 支払い意思Willing to pay
ジョブを解決するために顧客がいくらほどの金額を費やせるのかを記入します。現状の代替手段を参考に、実際に顧客にもインタビューを取りながら決めましょう。
7. 好むメディアInfo sources
ペルソナが普段、どのようなメディアから情報を仕入れているのかを書きましょう。新聞やネットニュース、SNS、テレビ、ラジオなどが例に挙がります。
8. 人口動態特性・属性Demographics・Attribute
1~7を踏まえたうえで、ペルソナを確定させましょう。年齢や性別、職業、家族構成、休日の過ごし方、財務状況などをこれまでのジョブの観点を含めながら作成するのがコツです。
「誰に売るか」を重要視すべき時代だから
先述したように、現代のビジネスでは「何を売るか」ではなく、ニーズを踏まえたうえで「誰に売るか」を重視すべきです。だからこそ倫理性をもってペルソナを決めてからビジネスをスタートさせましょう。その際はチーム内で共通言語を構築するためにも、フレームワークを用いることがおすすめです。
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