「10%の成功」を掴みとるための、スタートアップ向けジョブ理論活用術

「10%の成功」を掴みとるための、スタートアップ向けジョブ理論活用術

複数のIT企業を経営する著名な起業家、スティーブン・ブランクは著書「アントレプレナーの教科書」でスタートアップ企業について衝撃的な文章を残しました。

「大きな会社も小さな会社も9割は新製品の立ち上げに失敗している。製品を購入しそうな市場に無理にプロダクトを持ち込んでおり、何十億ものお金を費やしている」。

実に9割のプロジェクトがニーズを把握できないがために失敗しているという発言は、スタートアップの常識を大きく揺るがしました。それまでのプロダクトアウトとは違い、製品をローンチする前にMVPをつくって市場のニーズを調査することに重きが置かれるようになったのです。

ブランクの発言でも分かる通り、スタートアップの失敗例として最も多いのが「ニーズを見抜けないこと」。そこで今回は起業家や、社内の新規事業の責任者に向けて、スタートアップビジネスのためのジョブ理論活用法をご紹介します。

 

 

なぜスタートアップは失敗するのか

顧客のニーズが重要視されるよりも前、シリコンバレーではプロジェクトがキックオフして“売れそう”な商品をつくり、PRをしてから販売を進めていくという流れがありました。ここで注目したいのが「売れそう」な商品という点です。顧客のリアクションがないのでロジカルに商品の未来を予測することができず、トレンドやセグメントでしかマーケティングの基盤を築けませんでした。

そこで先述したように、リリースする前にMVPを作成して、確実に効率よく顧客の声をキャッチすることが大前提となったのです。しかしここで1つ問題があります。「どうやって顧客のニーズを把握するのか」ということです。つまりジョブ理論の観点からいうと「どのように顧客のジョブを理解するのか」ということになります。顧客のジョブを把握することは、言葉にすると簡単そうに感じますが、実はとても難しい工程です。

そこでジョブをつかむために「アーリーアダプター」という顧客層に注目しましょう。

 

 

商品の未来を予測する物差しになるアーリーアダプター

製品やサービスをリリースしたあと顧客は5つのカテゴリに分かれるといわれています。

まずいわゆる年齢層が若い、新しい物好きとして「イノベーター」、そのあとに最も市場への影響力が高い「アーリーアダプター」、平均的なタイミングで商材を利用する「アーリーマジョリティ」、用心深いがゆえにトレンドに遅れてしまう「レイトマジョリティ」、そして伝統を好み仲間内の情報しか信用しない「ラガード」です。

このなかで最も注目すべきなのが2番目の「アーリーアダプター」です。一見、はじめに利用してくれる「イノベーター」が大切そうに見えますが、彼らは商材の利用価値を見出すのではなく「新しい刺激を得たい」というマインドで動いているので、参考になりません。

その点、アーリーアダプターは確固としたジョブを抱えています。ジョブを解決するために、現状では仕方なく別の商材を利用しているのです。だからMVPだとしても、ジョブをクリティカルに解決できそうな商材ならば快く利用してくれます。また自身の課題を解決するために、商材のアップデートにも協力的で建設的な意見をくれる可能性が高い。商材を本格的にリリースした際、はじめに利用するのもMVP時のアーリーアダプターである可能性が高いのです。

だからこそ、イノベーターが現れたあとアーリアダプターが出現するか否かを注意深く観察しましょう。そしてもし発見できたら「使ってみた感想」や「また利用したいか」「他に欲しい機能はあるのか」「値段はいくらまでなら許容できるか」など、細かい項目に分けてインタビューをする必要があります。アンケートという手もありますが、やはり文字だけではリアルな感情をキャッチしにくいには確かです。実際に対面して話を聞くことをおすすめします。

またアーリーアダプターを確認できなかった場合は、商材の提供価値を見直さなくてはいけません。なぜなら3、4番目のアーリーマジョリティやレイトマジョリティはアーリーアダプターの反応を見てから利用するからです。市場に強烈な影響を与えるアーリーアダプターが利用しない限り、製品は失敗します。

 

 

現状の不満から自社の商材に乗り越えるまでの流れ

ではジョブを解決しようともがいているアーリーアダプターが「仕方なく他社の製品を使っている現状」から「ニーズにフィットする自社の製品を使うようになる」までの流れを、Uberを例に解説します。

 

1. ジョブを解決するための現状の不満

元来、顧客は移動をするときにタクシーを使っていました。しかしタクシーは台数が少ないのでなかなか捕まらない。またアメリカのタクシーは車内が汚い場合が多かったのです。顧客は「電車やバスが使えない状況で移動したい」というニーズを満たすために仕方なくタクシーを利用していました。

 

2. ジョブを解消するためのより優れた代替策の提案

そこでUberは顧客のジョブに代替案を提案しました。自家用車があれば誰だって登録できるので、多くの台数を確保できるうえに明瞭な価格設定により、安心感と快適性を高めています。顧客は以前よりも快適かつ便利な移動手段を得たのです。

 

3. レビュー機能によって不安を払拭

とはいえタクシー会社のブランドがないので、はじめは誰もが警戒したでしょう。そこでUberは運転手のレビュー機能を搭載。ドライバーの安全性を可視化したことで安心感をプラスしました。顧客が感じる不安は自社ではなかなか把握できません。MVPを使ってリアクションを得る際、アーリーアダプターに向けて「不安に感じる部分は?」と質問し、答えに合わせて商材に機能を足しましょう。

 

4. 新しい習慣の植え付け

Uberはタクシーに代わって顧客に新しい習慣を植え付けました。例えばタクシーであれば手を挙げるだけで止まってくれますが、Uberはアプリを起動して現在地を登録しなければいけません。移動のためのコストは増えましたが、そのフローが定着し一般化したのです。例えば以前、記憶媒体としてフロッピーディスクが最も一般的でした。しかしUSBが使われるようになり、今ではもはや外付けのプロダクトを利用することすら少なくなっていますよね。このようにスタートアップやベンチャーのイノベーティブな商材が普及することで、世の中の常識が変わっていくことはよく見受けられます。逆にこれからUberに代わる配車システムが構築されるかもしれません。その際に「新しい習慣」を軸に競合の戦略を見抜くことで、先手を打ちながら長く市場のシェアを維持できる可能性もあるでしょう。

 

 

2つのフレームワークでスタートアップの準備を整えよう

ジョブマップ

スタートアップの失敗例として最も多いのが「ニーズ」を見出せないことです。そのためにジョブ理論を活用し、顧客のジョブを正確に把握しておきましょう。そして「ジョブ」を導き出すために有効なツールが「ジョブマップ」です。顧客が自身のジョブを商材を使って(ハイアして)か解決するまでを、一連の流れで可視化できるフレームワークになっています。

 

リーンキャンバス

またスタートアップのビジネスモデルを整理するためにおすすめしたいのが「リーンキャンバス」です。9つの項目を埋めるだけでスピーディーかつ論理的にビジネスを設計できます。ジョブをキャッチしたうえでスタートアップとしてビジネスモデルを固めることで、ロジカルに事業を構築できるのが2つのフレームワークの魅力です。

BizMakeではジョブマップとリーンキャンバスを無料で作成できますので、お気軽にご利用ください。

 

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