イノベーションの起こし方とは? 考え方のコツや成功事例などをご紹介

ビジネスモデルを決めるときに、まず「既存のビジネスモデルにならうのか」または「革新的なビジネスモデルを構築するのか」を考えるでしょう。この2つは大きく違います。前者は具体例を参考にできますが、後者には現状のビジネスモデルを打破するための破壊的な思考が必要です。これを「アイディエーション」といいます。革新的なアイディアを創造するのは、まったく新しいビジネスモデルを生み出すのに欠かせません。

今回はアイディエーションを使ってイノベーションを起こす方法をご紹介。イノベーションビジネスに成功した会社を例に出しながら説明します。

 

 

なぜイノベーションビジネスが重要なのか

イノベーションは数年前から重要視されている言葉です。以前は各産業内に支配的なビジネスモデルが存在し、多くのリソースを割いて優れたプロダクトやサービスを生み出せる企業が勝利していました。しかし現在は産業構造に縛られずにあらゆる機能を追加したビジネスモデルを作れます。産業の枠組みを超えた競合も頻繁に現れるようになりました。

イノベーションがキーワードになった背景には「まったく新しいビジネスモデルで複数の産業を横断できるようになった」という事実があります。過去を振り返らず、競合を観察せず、隠れた顧客を発掘して新しい仕組みを構築し、価値を提供する。これは現状の「権威への挑戦」ともいっていいでしょう。

逆にいうとイノベーションを起こさず、昔ながらのビジネスモデルで戦っている企業は、容赦なく淘汰されるようになったのです。

 

 

革新的なビジネスモデルを構築するための2つのフェーズ

新しい機能を搭載したサービスやプロダクトを構築するためには、決して1つのビジネスアイディアに拘泥してはいけません。膨大なアイディアのなかから最適なものを選ぶ必要があるのです。

つまりアイディエーションを起こすためには2つのメソッドがあります。1つが「シンプルに量を追求する手法」。もう1つが「アイディアを議論し、2つ以上を組み合わせて実装可能な機能に落とし込む『アイディアの統合』という手法」です。当たり前のようなビジネスアイディアから明らかに実行不可能に見えるアイディアまで、膨大な案を出すことによって、アイディエーションを駆使してイノベーティブなビジネスモデルを作成できるでしょう。

アイディエーションを使ってイノベーションを起こす方法について、ここでは2つの手法をおすすめします。

 

 

イノベーションを起こす2つの手法

・ビジネスモデルキャンバス(BMC)を利用する

ビジネスモデルキャンバス(BMC)は9つの項目から自社のビジネスモデルを定めるためのフレームワークです。この9つの項目の全てがイノベーションの出発点になります。具体的な事例とともに説明しましょう。

 

1. 主要なリソース(KR)

既存のインフラやアウトソーシングなどのリソースをそのままに、ビジネスモデルを拡張、変換します。例えば「Amazon」はもともとの小売インフラを使って他企業にサーバー能力とメモリを提供することで、サービスを開発しました。

 

2. 提供価値(VR)

提供する価値にイノベーションを起こします。その際はもちろん、ビジネスモデルキャンバスの他のブロックの内容も変化することを覚えておいてください。

例えばメキシコのセメントメーカー「Cemex」は4時間以内に建設現場にセメントを届けるサービスを展開しました。その時に業界でかかっていた平均時間は48時間。12分の1にまで工期を短縮したのです。このビジネスモデルによりもちろんリソースやターゲットなどの項目まで変化し、世界最大のセメントメーカーに進化しました。

 

3. 顧客セグメント(CS)

顧客ニーズを変化させる事で得られるイノベーションです。価値提案同様、他のブロックに変化を与えます。例えばアメリカの「23andMe」は医療専門家と研究者しか受けられなかったDNAテストを一般層にまで拡大させました。ニーズの拡大です。

 

4. ファイナンス(CS・RS)

収益の流れや設定価格、コストカットなどでイノベーションを起こす手法です。こちらも他のブロックに変化をもたらします。ファイナンスでのイノベーションに成功したのがコピー機の「Xerox」です。彼らが最初に製作したコピー機は当時、高級品でした。そこでリースのサービスを開始し価格設定を大幅に変えることで、フロービジネスからストックビジネスへの移行に成功しています。

ここでは4つをご紹介しましたが、もちろんこの他の5つのブロック、また2つ以上の組み合わせによっても革新的なビジネスモデルは構築できます。さらに「強み」「弱み」「機会」「脅威」からなるSWOT分析を変化、拡大してもいいでしょう。


 

 

・「もし~なら」でビジネスモデルにイノベーションを

アイディエーションを起こせない理由の大半が現状のビジネスモデルを捨てきれていないこと。現状の姿は想像力をセーブしてしまいます。そこで役に立つのが、イノベーティブな仮説に「もし~なら」というクエスチョンを投げてみる思考法です。

イノベーションビジネスに成功した企業を「もし~なら」で置き換えてみましょう。

 

1. IKEA

「もし、パッケージングされた家具を持ち帰り、自分で組み立てることで安く購入できたなら」という思考に基づいてIKEAは現在のサービスを1960年に導入しました。今ではあらゆる家具メーカーが模倣しています。

 

2. ロールスロイス社

「もし航空機のエンジンを販売せずに時間貸ししたら」。ロールスロイス社はこの思考に基づいてエンジンの時間貸しサービスを展開し、赤字続きからV字回復。世界2位の大型ジェットエンジンの提供企業になりました。

 

3. Skype

「もし無料で海外に通話できたなら」という考えからネット回線を使った無料通話サービスを展開しているのがSkypeです。ローンチから5年でユーザー数は4億人、通話回数は1000億回を突破しました。

 

4. ダイムラーのca2go

「もし自動車メーカーがクルマを販売しなかったら」という考えのもとドイツのダイムラーは利用料を払えば街のどこからでも車をピックアップでき、いつでも乗り捨てられるca2goをローンチしました。

 

5. Zopa

「もし銀行を経由せず個人間でお金の貸し合いができたら」。イギリスのZopaはネット上で融資サービスのプラットホームを構築。イノベーティブな融資サービスを展開しています。

 

6. グラミンフォン

「もし携帯電話を使わない地域の人間全員が電話を持ったら」という考えをもってバングラデシュに進出したのはグラミンフォンです。「グラミン銀行と協力する」「女性には融資をする」などの工夫を織り交ぜることでバングラデシュの携帯電話普及率は飛躍的に上昇。グラミンフォンはバングラデシュで最も納税額の多い企業にまで成長しました。

 

 

アイディエーションはチーム構成も大切

イノベーティブなビジネスモデルを構築するにあたって、1人やクリエイティブだけなど限られたコミュニティで進めてはいけません。多角的な分野からそれぞれ違った意見を集めるために事業部や年齢、専門領域、勤続年数、バックグラウンドなどが違うメンバーを招集しましょう。何も知らない子どもをチーム内に入れてもいいくらいです。

そして他種多様なアイディアが集まったらビジネスモデルキャンバスを利用してプロトタイプに落とし込み、さらに議論していきましょう。

アイディエーションをもとにした革新的なビジネスモデルで潜在的なニーズに応えられるような「前例の無いビジネス」を展開し、唯一無二のモデルを築くのは、現在のビジネスシーンを生き抜くうえでの鍵となるでしょう。ぜひ自社の事業を見つめ直してみてください。

 

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