
ビジネスモデルキャンバスを有効活用するために。ビジネスを加速させる
目次
自社ビジネスの全体像を分析できる
ビジネスのトレンドが移り変わるにつれて、ビジネスモデルやマーケティングのカタチを定めるためにあらゆるフレームワークが誕生しました。自社の強みと弱み、外部要因などを確認する「SWOT分析」や、会社・顧客・競合を把握する「3C分析」などが有名ですが、今回はなかでも「ビジネスモデルキャンバス(BMC)の4つのメリット」と「より完成度の高いビジネスモデルを作るための方法」についてご紹介します。
自社のビジネス全体を俯瞰で確認でき、内的要因と外的要因の両方を加味したビジネスモデルを考案できるツールとして活躍しますので、ぜひご活用ください。
ビジネスモデルキャンバスを使う4つのメリット
では早速、ビジネスモデルキャンバスを使う4つのメリットをご紹介します。
1. ビジネス全体を俯瞰し、主要なポイントを細かく可視化
SWOT分析や3C分析などは、事業開発の初期段階で効果を発揮するビジネスフレームワークです。競合の分析や外的要因のリサーチができるので、自社事業の競争優位性をロジカルに分析できるのがメリット。しかし、その1点にフォーカスし過ぎてしまうため、ビジネスモデル全体を俯瞰的に分析するには至りません。その点ビジネスモデルキャンバスでは、9つの項目から自社のビジネスモデルを多角的に観察できます。競争優位性だけではなく、より詳細なビジネスモデルを一度に可視化できるのが大きなメリットです。
2. 顧客のニーズと提供価値のバランスを保ったビジネスモデルを考案
3C分析やSWOT分析などは他社との差別化やターゲット像、商材の強みなどを調査するにはうってつけのフレームワークでしょう。ただし「顧客のニーズ」や「販促チャネル」「マネタイズ」などに関しては項目が無く、収益をあげるためのプロセスを具体化できかねます。だからターゲットやペルソナ設定を別のフェーズで設定しなくてはいけません。すると差別化とペルソナが同じシート上に並ばないので、サービスやプロダクトが顧客ニーズと乖離してしまう危険性があるのです。
その点、 ビジネスモデルキャンバスには「誰のどのような課題を解決するのか?」といった項目(CSとVP)があります。「顧客ニーズ」と「バリュープロポジション(提供価値)」を並列して考えられるので、確実にマーケットの需要に答えられるビジネスモデルを作れるのがメリットでしょう。
「他社との差別化」を重視するビジネスモデルだけでは、昨今のビジネスは生き抜けません。大切なのは「顧客のニーズ」と真摯に向き合うこと。そして顧客に興味を持ってもらい、自社のビジネスに巻き込めるようなプランを練ることです。ビジネスモデルキャンバスを利用すれば、顧客ニーズに寄り添った提供価値を考えられ、より成功確率の高いビジネスモデルを描くことができます。
顧客のニーズと提供価値をより深く知りたい方は、以下のフレームワークを試してみてください。ビジネスモデルキャンバスとの親和性が高く、併用することをおすすめします。
3. ビジネススキルを高めるためのツールとなる
ビジネスモデルキャンバスを使って自社のビジネスモデルを練っている時間はビジネススキルを磨くうえで大切です。ビジネスと真摯に向き合い、自身のビジネスアイディアを生み出しながら、自社やマーケットの現状を深く考えることで、あなた自身や事業の価値は高まっていきます。
イチローや本田圭佑などのスポーツ選手だって、最高のパフォーマンスを発揮するためには、日々のトレーニングが重要です。ビジネスも同じ。スキルを高め、ノウハウを積みあげるためには、毎日のトレーニングが必要不可欠でしょう。
ビジネスアイディアを創出するのは簡単ではありません。特に普段、社内の狭いつながりで仕事を進めている人にとっては外的な刺激がなく知見が広まりにくいので、革新的なアイディアを創出したり、あっと言わせるビジネスモデルを考案することは難しいでしょう。
しかし個の力に注目が集まり「会社」ではなく「個人」の能力が重視されている現在では「クリエイティビティ」のない人材は淘汰されます。ビジネスモデルキャンバスを使えば、あらゆる会社のビジネスモデルを俯瞰的に分析できるので、あなたの「創造性」を伸ばしてくれるでしょう。
ビジネスモデルキャンバスには正解がありません。正誤は実際にローンチするまで分からないのです。だからこそ自由に創造性を発揮しながら記入できます。ビジネスアイディアを膨らませて、自社だけではなく身の回りの会社のビジネスモデルまで日常的に分析してみましょう。その行為があなたのビジネススキルに磨きをかけます。
4. 社内/関係者間での共通言語として有用である
ビジネスモデルキャンバスを設定すれば、チーム全体に指標ができます。つまりチーム全体が目指すべき「ゴール」と「道筋」が明確になるということ。このようにチーム内で共通言語を定めることによって、無駄な工数やストレスを減らせるのもメリットです。
例えば「あなたが新事業のチームリーダーを任された」とします。ビジネスアイディアが承認されてローンチに移すまでには、さまざまなハードルがあるでしょう。発案者や協力者、承認者といった複数のステークホルダーの認識がズレていて、それぞれが好き勝手に意見を言い合い、立場の違いや認識の齟齬によってコミュニケーションエラーが発生する。結果、リスケにリスケを重ねてやっと上層部に掛け合ったけれど、事業計画書の内容がブレていたり現実的ではなくなったりして、プロジェクト自体が白紙になってしまうことだってありえます。
こういったミスコミュニケーションや、無駄なコストをカットできるのがビジネスモデルキャンバス(BMC)です。ゴールと道筋を共有しておけば、ステークホルダー間の認識のズレが無くなります。A4用紙で簡潔にビジネスモデルが示されているので、チーム全員がベクトルをあわせてプロジェクトを進めていけるのです。ビジネスモデルを俯瞰的に具体化・可視化することで、バグを修正できるのはもちろん、新たなアイデアが生まれるきっかけにもなり、チームが活性化します。
また上層部や社内説得用の事業計画書も、これまでのように長ったらしくて分かりづらい数十枚のレジュメを作る必要はありません。簡潔にビジネスモデルを説明できるので、渡された側としても理解が早まるでしょう。
ビジネスモデルキャンバスの完成度をもっと高める
最後に、もっと完成度の高いビジネスモデルキャンバスを作るための方法をご紹介しましょう。
1. 顧客ニーズと提供価値を徹底的にリサーチする
「誰の、どんな課題を、解決するのか」は、ビジネスモデルを考えるうえで最も重要な要素です。そのためには事前リサーチが欠かせません。適切な情報源のもと、顧客のニーズを掴みましょう。
ネットで表層だけの情報を集めていても意味がありません。時間はかかりますが「顧客へのヒアリング」や「アンケートの実施」、「競合の調査」などで、客観的かつ確実にマーケットのリサーチをしましょう。「正確性の高い情報」から「正しい問題定義(仮説)」をすることで、ビジネスモデルが現実味を帯びてきます。
2. 他のビジネスフレームワークと組み合わせる
他のフレームワークとの親和性が高いのも、ビジネスモデルキャンバスの魅力の1つでしょう。更に精度の高いビジネスモデルを創出するために「SWOT分析」「3C分析」などの広く認知されているマーケティングフレームワークや、「バリュープロポジションキャンバス」などのビジネスフレームワークと組み合わせることをおすすめします。より多角的で専門的な視点から自社のビジネスモデルを精査できるので、成功確率が高いビジネスモデルを構築できるでしょう。
3. ビジネスモデルキャンバスで作られたビジネスモデルは「仮説の1つ」でありゴールではないことを理解する
ビジネスモデルキャンバスを作成するメリットについてご紹介してきました。ここで改めておさえておきたいのは「ビジネスモデルキャンバスを作成する事はゴールではない」ということ。むしろスタート地点であり、あくまで最終目的は「ビジネスで成果を出すこと」です。
チーム全体で、時間と頭を使って生み出した製品やサービスは我が子のように可愛いもの。肯定されたら嬉しいでしょうし、否定されたら悔しいでしょう。だから自分たちの都合のいい結果に誘導してしまいます。たとえアウトプットが間違っていても、認めたくないという心理が働いてしまうのです。(俗に「選択的認知」または「確証バイアス」という)。ビジネスモデルキャンバスを使ってビジネスモデルが完成した際は、顧客の視点から客観的かつ批判的な視点で見直し、チームで十分議論しましょう。
ビジネスモデルキャンバスで完成したビジネスモデルは、あくまで仮説の1つです。ここから実際に価値あるビジネスモデルを創出するためには、検証と改善を繰り返して精度を高める必要があります。主役は企業ではなく、利用するエンドユーザーです。「いかにして顧客を満足させられるサービス・プロダクトを作ればいいのか」をチーム内で考えて深めていくプロセスを最も重要視しましょう。
