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「破壊的イノベーション」と「持続的イノベーション」とは

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「ジョブ理論」で有名なクレイトン・クリステンセン教授は、イノベーションについて「持続的」「破壊的」の2つに分けました。2つのワードは次々に新製品が生まれ、ビジネスの潮流が高速化している現在だからこそ重要です。革新なき製品やサービスはいつしか淘汰され、流されてしまいます。

今回は「破壊的イノベーション」「持続的イノベーション」の2つについて実例を挙げながらご紹介しましょう。そのうえで破壊的なイノベーションを起こす方法について解説します。

 

 

持続的イノベーションと破壊的イノベーションの違い

持続的イノベーションとは「顧客の満足のために、今ある製品に起こした革新」になります。例えばタイガー魔法瓶の電気ポットが主な例です。最初はお湯を沸かすだけのシンプルな道具でしたが、徐々にタイマーや温度設定、省電力などの機能が追加されて顧客により大きな価値をもたらしています。

一方の破壊的イノベーションは、さらに2つの種類に分別できます。1つは「全く新しい製品やサービスを生み出すこと」。身近な例でいうと任天堂のファミリーコンピューターです。それまでゲームセンターにしかなかったゲーム機を家庭でも楽しめるハードウェアを生み出しました。

2つ目は「既存の製品のうち一部の価値に焦点を当てて、顧客に価値を提供するもの」です。タイガーに対応してここではティファールの電子ケトルをあげましょう。多くの機能が搭載されたタイガーの電気ポットはもはや、顧客の満足を十分に満たす「満足過剰」の状態でした。顧客のなかには「こんな機能はいらない」と感じる人もいたでしょう。そこでティファールは「少しのお湯を短い時間で沸かせるだけの電気ケトル」を低価格で発売し、大成功を収めました。

破壊的イノベーションのなかでも、前者はどうしても費用や時間がかかります。ものが飽和している現代において、まったく前例がない商材をつくるためにはアイディエーションが試されますし、どれほどの顧客に受け入れられるかの予想がつきません。

一方の後者はコストをカットしながら、成功予測を立てやすいタイプだといえるでしょう。既存の製品から顧客が真に欲している機能だけを抜き出すので、コストをかけずにイノベーションを起こしやすいのです。

そこで今回は2つ目の「ローエンド型の製品やサービスをつくる方法」を取り上げて、破壊的イノベーションを深掘りましょう。

 

 

機能・感情・社会の3つのジョブを見極める

破壊的イノベーションを生み出すためには「顧客が本当に欲している機能」を見抜く必要があります。そこで役立つのが「ジョブ理論」です。

ジョブ理論とは、顧客が解消したい不満や達成したい願望を「ジョブ(仕事)」、そのためにプロダクトやサービスを用いることを「ハイア(雇う)」として顧客のインサイトを見極める理論を指します。

クリステンセン教授は『顧客のジョブには「機能的」と「感情的」「社会的」の3つがある』といいます。「機能的=そのジョブをどのように成し遂げるか」「感情的=どのような感情を味わいたいのか」「社会的=周囲からどのように見られたいのか」というジョブの種類があることを把握しておきましょう。3種類のバランスを考えて新たなローエンド型の製品を作り出すことで、破壊的イノベーションは成功に近づきます。

 

 

ジョブを理解するために4つの要素

また顧客のジョブを理解するためには「顧客のジョブそのもの」はもちろん「目的」「障害」「現状の代替策」を把握しておかなくてはいけません。「目的=ハイアを決定づける目的」、「障害=ジョブを片付けにくくしている事象」、「現状の代替策イコール現場の解決策として使っている製品やサービス」を指します。

特徴としては状況によって、障害と代替策は変化しやすいことです。ジョブと目的は顧客が自身の問題を解決しない限り変わりませんが、障害や代替策は新しいサービスやプロダクトがローンチされたり、市場のトレンドが変わると、変化します。

ではジョブ理論の基本を踏まえたうえで、実際に破壊的イノベーションを起こした事例を紹介しましょう。

 

 

床屋業界に破壊的イノベーションを起こしたQBハウス

実例として、QBハウスのビジネスを見てみましょう。そのために従来の床屋のビジネスモデルと、散髪をする顧客のジョブを知っておく必要があります。

従来の床屋では平均約4,000円ほどで1時間ほどかけて、身だしなみを整えていました。髪を切るだけではなく、髭剃りをするところもあれば、流行りのスタイルを取り入れてスタイリングまでをしてくれる美容室もありました。

顧客のジョブとしては「髪を整えたい」という機能的ジョブ「気持ちよく過ごしたい」という感情的ジョブ、また「かっこよくオシャレに見られたい」という社会的なジョブがあります。この3点を満たすために、1時間もの時間と4,000円ほどの費用をかけていました。

しかし、すべての顧客が同じジョブを抱えていたわけではありません。QBハウスは感情的ジョブと社会的ジョブをあえて軽視し機能的ジョブに絞ったビジネスモデルを打ち出しました。「髪を整えたい」という願望に焦点を当てたのです。

QBハウスのメニューにはカットしかありません。パーマやカラーはおろか、ワックスでのスタイリングやトリートメント、シャンプーもない。その代わり10分程度で散髪が終わり、価格は一律1,000円です。

子育てに忙しかったり、仕事に追われていたりすると感情的ジョブや社会的ジョブではなく、機能的ジョブだけが成長します。長時間かけてオシャレにする必要はなく、短時間・低価格で最低限の散髪をしたいと考えているニーズにQBハウスはぴったり当てはまりました。

タイガー魔法瓶の電気ポットと同様、美容室の従来型の充実したサービスは、一部の顧客にとって”おせっかい”だったのです。そこにこそ顧客の本質的なニーズがあります。破壊的なイノベーションを起こす際は、ジョブ理論の3つのジョブ(機能・感情・社会)を踏まえたうえで最低限のローエンドサービスやプロダクトを考えることが重要でしょう。

 

 

イノベーションのジレンマによって無意識に罠にはまる

破壊的イノベーションによって、コストを削減しながらも効果的な利益を出せる製品やサービスを生み出せます。イノベーションの必要性が高まるにしたがって、破壊的イノベーションによって商材を開発する企業は増えました。

タイガー魔法瓶の電気ポットも、はじめは革新的なプロダクトだったのは間違いありません。しかし持続的イノベーションを繰り返すうちに顧客のニーズから乖離し、いつの間にか”おせっかい”な機能が増えてしまったのは確かです。そのうちに破壊的イノベーションを起こしたティファールにシェアを明け渡してしまいました。

ジョブ理論を提唱するクリステンセンは、この問題を「イノベーションのジレンマ」と呼んでいます。どうして、このような問題が起こってしまうのでしょうか。

 

1.大企業になるに従って革新的な動きができなくなる

商材が成長し会社の規模が伸びるに従って、ベンチャーやスタートアップのように革新的には動けなくなります。組織が複雑化し、株主をはじめとしたステークホルダーに対する責任も生まれるでしょう。その結果、自由に動きづらくなるのです。新たな商材を作るのではなく既存の商品をいかに伸ばすかに注力してしまいがちになります。

 

2.持続的イノベーションを重視しすぎる

また既存の商材に関して、分かりやすい指標やインタビューにより表面的な顧客の要望が集まっててきます。製品が多くのシェアを持っている限り多くのデータが集まるので、つい既存事業に縛られてしまうのです。

無駄な機能までも搭載するとともに商品の単価も高めてしまい、いわゆる「オーバーシューティング(供給過剰)」になります。持続的イノベーションを繰り返すからこそ「使いにくい商材」ができてしまう”皮肉な状況”に陥るのです。

比較的、大企業が陥りやすい罠ですので、現在既存の商材を次々にアップデートしている方は注意しておきましょう。

 

 

破壊的イノベーションを起こす際はジョブマップを

ジョブ理論に基づいて顧客のインサイトを見抜くために有用なフレームワークがジョブマップです。ニーズを段階的に可視化することで、よりインサイトを見抜きやすくなりますし、マーケティングチームにとっては顧客についての仮説を共有できるというメリットがあります。

BizMakeでは誰でも無料でジョブマップを利用できます。まずは作成して商材の在るべき形を改めて見つめ直しましょう。またローエンド型の破壊的イノベーションを狙う際にもご利用ください。

 


 

 

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