
「消費者インサイト」とは?調査方法・企業事例・生かせるフレームワークなど
昨今マーケットの潮流は常に変化を繰り返してきました。ビジネスの中心に据えるべきものが「組織や市場」から「消費者」に変わってきたのです。優れたプロダクトの開発、競合との差別化だけではビジネスに勝てません。
現在のビジネスを生き抜くためにイチバンに考えるべきは「消費者のインサイト」です。消費者は何を欲しているのか、自社商材はどのような価値を提供できるのか、などを考えることで、やっとビジネスの土俵に上がれます。
そこで今回はビジネスモデルを考えるうえで欠かせない「消費者インサイト」についてご紹介しましょう。
目次
消費者インサイトとは
「インサイト」は直訳すると「洞察」や「眼識」。マーケティング用語としては「消費者の購買行動の裏に隠された購入意欲」を指す言葉です。つまり「消費者インサイト」とは「消費者がその商材を利用する潜在的な理由」や「消費者が無意識下に抱えている欲求」などを指します。
現在は消費者ニーズに当てはまるビジネスモデルを構築することが、成功するための最低条件です。企業は市場調査に多くのリソースを割いていますが、本当にリサーチすべきは消費者でしょう。消費者を取り巻く環境や生活、興味・関心、願望、悩みなどを理解したうえでビジネスを進める必要があります。
消費者インサイトによって成功した企業事例
例えばAppleがローンチしたiPodは「消費者インサイト」を理解することで生まれたプロダクトでしょう。当時はCDやMDなどのプロダクトが隆盛していた時代。そんななかAppleは、消費者がデジタルコンテンツでアーティストや曲を検索し、ダウンロードして視聴できるシームレスな方法を望んでいることを見抜きました。これは消費者自身もはっきりと自覚していない水面下のニーズです。
当時は違法アップロードにより音楽が無料で蔓延していた時代。そんななかAppleはiTunesのアプリとオンラインストア、iPodをローンチし、マーケットを整備しました。このバリューを軸に音楽市場をリードする存在になったのです。
消費者インサイトの把握のためのリサーチの注意点
こうした水面下のニーズを拾いあげて商材化するのは難しいことでしょう。現にインテルやルキアなどの企業には人類学者や社会学者、心理学者がおり、論理的に消費者の心境を分析しています。大手だとしてもその道のプロに任せているのです。
多額の外部リソースを割けない中小企業のなかにはマネジメント層が直接売り場に出向き、消費者にインタビューするという方法を取っている企業もあります。消費者のニーズを確実にキャッチするためには、時としてオフラインで確実な情報を仕入れるのもひとつの手でしょう。インタビューするのは簡単です。「消費者のインサイト」を知るためには、もう一歩深くまで消費者を理解しなければいけません。
では「もう一歩」とはどういう情報なのでしょうか。
まだ消費者自身も気付けていないニーズを見つける
自動車製造のパイオニアであるヘンリー・フォードの名言にこのようなものがあります。「もし消費者に直接何が欲しいかと問えば、もっと速く走る馬がほしいと答えただろう」。彼は「消費者が何を欲しているのか」ではなく「どのような悩みを抱えているか」に注目しました。より速く移動できる手段として自動車を製造したのです。「消費者インサイト」の肝はこの考え方にこそあります。
イノベーティブなビジネスモデルを作る際は、既存の消費者セグメントにこだわってはいけません。消費者自身でさえまだ気付けていないニーズに注目し、未開拓のセグメントにまで視野を広げたビジネスモデルを作るべきなのです。革新的なビジネスモデルは常に新しいセグメントの消費者のニーズを叶えることで成功しています。
アメリカのカーシェリング会社・Zipcarが良い例です。月額や年額を払えば、時間単位で車を借りられるアイディアがもとになっているこのサービスは、都市部に住む人間に車移動という手段を提案しました。既存のカーレンタル事業では車の使用率が高い、田舎の住民にサービスを訴えかけていた。Zipcarはあえてセグメント外だった都市部の住民をターゲットにすることで、成功をおさめたのです。
消費者インサイトを探るためのフレームワーク「ジョブマップ」
「ジョブ理論」というイノベーションビジネスに有用な考え方をご存知でしょうか。願望や悩みに基づいた消費者が取る行動を「ジョブ(仕事)」、消費者がサービスやプロダクトを利用することを「ハイア(雇う)」と名付け、消費者のニーズをロジカルに分析するための理論です。消費者インサイトを分析するためにジョブ理論は大きな役割を果たすでしょう。ジョブ理論に関して詳しく説明した記事は以下からご覧ください。
またジョブ理論をもとにして作られたフレームワークを「ジョブマップ」といいます。各項目を埋めるだけで消費者のジョブが可視化される画期的なツールです。ジョブマップは以下のBizMakeのWeb上で簡単に作成できますので、ぜひお気軽にご利用ください。
ジョブマップは「消費者インサイト」をキャッチするために大きな役割を果たします。消費者自身でさえ気付けていないニーズをつかんで、より質の高いビジネスモデルを構築しましょう。
消費者インサイトの調査はジョブ理論をもとにしたインタビューで探る
消費者インサイトは先述したようなフォード社の例をもとに考えることで調査しやすくなります。まだ顧客すら気が付いていない部分を聞き出すためには「はいorいいえ」で答えられる質問ではいけません。とはいっても「あなたは今何に悩んでいますか?」といった質問をしたところで効果的な答えは返ってきません。
そこでジョブ理論をもとにした質問を想定顧客へのインタビューで探ることが非常に重要になります。具体的には以下の質問項目をで消費者インサイトを突き止めましょう。
- 顧客になりうる方の願望や成し遂げたいこと
- 困っていることや、解決したいこと
- 成し遂げたいことを阻んでいる障壁
- いま不完全なサービスやプロダクトを用いて解決を図っていないか
- どのような機能があれば願望は叶うのか。その解決方法を得るためにはどのようなコストを払えるか
これらの質問をすることで、具体的に「顧客が何に悩んでいるのか」「顧客はどうやってその悩みを解消するのか」が分かります。ただし企業側(特にマネージャーや開発者)は自社の商材に対する愛が強く、想定顧客の返答を都合の良いように捉え間違えてしまう可能性もあります。ですので、質問をする際には以下の3点に気をつけましょう。
- 質問者の主観を込めないこと
- 課題と問題の判断を誤ってはいけないこと
- 顧客の現状の不満を見出すこと
消費者インサイトを調査するうえで大事なジョブ理論のインタビュー術に関しては以下の記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
