
カスタマージャーニーの11種類の購買行動モデルをまとめ【AIDAから5Aまで】
「購買行動モデル」とは、顧客がどうプロダクトやサービスを認知して、どのように購買に至るのか。また購買後にどのようにリピーターになるのか、という顧客の行動をモデル化したものです。しかし購買行動はライフスタイルに大きく左右されるものです。古くは1920年代に発表された「AIDA」や「AIDMA」といわれるフレームワークから、現在の5A理論まで、購買行動モデルは変化を繰り返してきました。
また購買行動は、時代だけに左右されるものではありません。会社のビジネスや、サービス・プロダクトの特性によっても大きく変化します。そのため、ビジネスモデルによっては必ずしも最新のものを使えばいいわけではありません。
今回はAIDAから5A理論まで2020年現在で提唱されている顧客の購買行動分析フレームワークを11種類ご紹介します。
目次
マス向けのメディアが主流だったころの購買行動モデル
まずは1920年代のアメリカで提唱され始めたマス向けの購買行動モデルについてご紹介します。当時の集客メディアが今と違い、テレビや雑誌、新聞などの大衆向けのものしかありませんでした。AIDMAなどは現在のビジネスでも使われる手法です。
AIDA(アイダ)
AIDAは1925年にセント・エルモ・ルイスが提唱した購買行動モデルです。
・Attention(認知):マス向けの広告によってプロダクト・サービス商品の存在を知る
・Interest(興味・関心):消費者がプロダクト・サービスに興味を持つ
・Desire(欲求):プロダクト・サービスを求める
・Action(行動):購入する
AIDAは主にBtoC向けの購買行動をあらわすフレームワークです。当時の認知活動は今とは違ってマス向けの広告が主流でした。そのためシンプルな4フェーズで説明されています。このAIDAがベースとなってその他の購買行動モデルが構築されていきます。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAはサミュエル・ローランド・ホールが提唱したモデルです。
・Attention(認知):マス向けの広告によってプロダクト・サービス商品の存在を知る
・Interest(興味・関心):消費者がプロダクト・サービスに興味を持つ
・Desire(欲求):プロダクト・サービスを求める
・Memory(記憶):プロダクト・サービスの存在を覚える
・Action(行動):購入する
AIDAにMemory(記憶)が加わりました。顧客は欲しいと思ってもすぐに購買するわけではなく、いったん「買おうとしていたこと」を忘れてしまいます。そのため記憶を呼び起こすための施策が必要なのです。またMを「Motivate(動機)」とする場合もあります。
AIDCA(アイドカ・アイダカ)
AIDCAはAIDAの提唱者であるE・K・ストロングが唱えた購買行動モデルです。
・Attention(認知):マス向けの広告によってプロダクト・サービス商品の存在を知る
・Interest(興味・関心):消費者がプロダクト・サービスに興味を持つ
・Desire(欲求):プロダクト・サービスを求める
・Conviction(確信):プロダクトを購買してもいい、と確信する
・Action(行動):購入する
AIDAにConviction(確信)が加わったモデルです。購買欲求を覚えている顧客の背中を押してあげるような戦略が必要だとされました。リーズナブルなサービス・プロダクトでは確信させるアクションは必要ないかもしれません。しかしある程度の価格の製品の場合は革新は非常に重要だといえます。
AIDCAS(アイドカス)
ADCASは購入後のリピーター獲得に関して視点を拡大したモデルです。
・Attention(認知):マス向けの広告によってプロダクト・サービス商品の存在を知る
・Interest(興味・関心):消費者がプロダクト・サービスに興味を持つ
・Desire(欲求):プロダクト・サービスを求める
・Conviction(確信):プロダクトを購買してもいい、と確信する
・Action(行動):購入する
・Satisfaction(満足):購買した商品について満足する
これまでのモデルは購買がゴールでした。しかし購買後の体験によって人は同じ商品を再度買うかを決めます。リピーターの獲得こそが効率のいいマーケティングです。またSatisfaction(満足)を、現在のビジネスに置き換えるとSaaSやサブスク製品について解約率を下げる働きにも関わります。
インターネット時代の購買行動モデル
インターネットが普及して顧客は知りたい情報を自由に検索できるようになりました。またブログにはじまりSNSなど個人の考えを発信できる場所が広がっています。顧客の行動は大きく変化しました。当然、企業のアクションもマス向けのモデルとは変わっています。
AISAS(アイサス)
AISASは2004年に大手広告代理店の電通が提唱しはじめた購買行動モデルです。
・Attention(注意):消費者が広告などでサービス・プロダクトの存在に気づく
・Interest(関心):商材について興味や関心を抱く
・Search(検索):商品の評判や詳細をインターネットで検索する
・Action(行動、購入):実際に購買する
・Share(商品評価をネット上で共有):レビューなどをWebやアプリ上でシェアする
インターネットを用いた購買行動に合わせてマーケティング施策も変化しました。興味深いのは3と5がリンクしていることです。購買した人のレビューをこれから買う方が見ることになります。悪い評判が流れてしまうと、その後の購入者にも影響を及ぼすことが含まれています。
ASCEAS(アイシーズ)
AISCEASは有限会社アンヴィコミュニケーションズの創業者・望野和美氏が提唱したモデルです。
・Attention(注意):消費者が広告をみて商品・サービスを知る
・Interest(関心):商材について興味や関心を抱く
・Search(検索):商品の評判や詳細をインターネットで検索する
・Comparison(比較)
・Examination(検討)
・Action(行動)
・Share(情報共有)
AISASに「Comparison(比較)」「Examination(検討)」が加わったのがAISCEASです。口コミサイトやレビューサイトなどが増えたことから比較検討の時間が長引き、AISCEASが生まれました。より細かいタッチポイントが必要になったのです。
SNS時代の購買行動モデル
インターネットが普及するとともに、SNSが商材の購買に大きく関わるようになりました。現在でも消費者はサービス・プロダクトを買う際にSNSなどで検索をします。そんなソーシャルメディア全盛の時代に有効な購買モデルを紹介しましょう。
VISAS(ヴィサス)
VISASとは2010年にITアナリストの大元隆志氏が提唱したモデルです。
・Viral(口コミ):まずはSNSの口コミ情報によって商品を認知します。
・Influence(影響):その情報を発信した人に影響されます。
・Sympaty(共感):商品の特徴や魅力に共感します。
・Action(行動):実際に購入します。
・Share(共有):SNSなどにレビューを書きます。
VISASもまたサイクルになっているのが特徴です。1~5までをたどった後に、他の人がレビューを確認してまた1に戻るような設計がされています。SNSを活用して商品を購入する、特に若い世代をターゲットにしたマーケティングで役立つフレームワークです。
SIPS(シップス)
SIPSとは2011年に電通コミュニケーションズの佐藤尚之氏が提唱した購買モデルです。
・Sympathize(共感):友だちや家族などの身近な人の投稿を見て、商品を認知し、共感します。
・Identify(確認):商品のより詳細なレビューや情報を確認します。
・Participate(参加):共感して投稿にリアクション(いいね!)などをしたり、購入したりします。
・Share&Spread(共有と拡散):商品の情報をシェアします。
VISASとの違いでいうと、より共感や影響のレベルが下がったことでしょう。好きなインフルエンサーの投稿などではなくより身近な存在からの伝達に共感するようになりました。またあくまでも購入にこだわるだけでなく、いいねや投稿のシェアなどの「緩い参加」を強化することで「共感」の量を増やすのが狙いです。
コンテンツ発見型の購買行動モデル
2015年以降になるとSNSやインターネット上にコンテンツが溢れるようになりました。消費者は毎日、膨大な情報に囲まれるようになり、よりコンテンツに対して自分に役立つものなのかを選別する意識が生まれています。そこでコンテンツ発見型の購買行動モデルが生まれました。
DECAX(デキャックス)
DECAXは2015年に電通デジタル・ホールディングスの内藤敦之氏が提唱したモデルです。
・Discovery(発見):自分にとって有益なコンテンツを発見
・Engage(関係):発信した企業を好きになり関係を深める
・Check(確認):コンテンツ発信元の商品を確認
・Action(購買):消費者が商品を購入する
・eXperience(体験と共有):商品を体験してSNSなどでシェアする
消費者は広告やSNSの投稿、ブラウザの検索結果などで自分にとって有益な情報に出会います。企業としてはそれまでの営業感満載の広告ではなく、あくまで消費者にとって意義のあるコンテンツを認知させるという点です。その後ファンになり、商品の存在を認知します。あくまで商品を知るのは3の段階です。その後、購入して快適な体験をSNSなどでシェアするというサイクルになります。
Dual AISAS(デュアル・アイサス)
Dual AISASはインターネット時代の手法であったAISASを2つに分割した発展形の購買行動モデルです。2015年にアタラ合同会社と電通プロモーション・デザイン局が開発・提唱しました。
従来のAISAS(購買をすることが目的)
・Attention(注意):消費者が広告などでサービス・プロダクトの存在に気づく
・Interest(関心):商材について興味や関心を抱く
・Search(検索):商品の評判や詳細をインターネットで検索する
・Action(行動、購入):実際に購買する
・Share(商品評価をネット上で共有):レビューなどをWebやアプリ上でシェアする
追加されたAISAS(拡散することが目的)
・Activate(起動):商品・サービスに興味をもつ
・Interest(興味):商品・サービスに参加の意識をもつ
・Share(共有):ブランド情報に共感し、Webで共有
・Accept(受容):第三者が受け取る。
・Spread(拡散):第三者が拡散
2015年に、デジタルマーケティング支援企業の「アタラ合同会社」が、電通プロモーション・デザイン局の協力のもと開発し提唱した概念です。本来のAISASは購買だけを目的にしたものでした。そこにコミュニケーションをとって商品を拡散したいというAISASを付け加えたものです。従来のAISASのAttention(注意)に内包される形で新しいAISASが追加されています。情報過多の時代において、興味関心を抱くまでには、序盤で膨大なタッチポイントが必要になったのです。
接続性の時代における購買行動モデル
それから現在にかけて、マーケティングはより高度になりました。サブスクリプション型のマネタイズやSaaSツールの隆盛を見ても分かるとおり、現在は利用客をファン化し、長い期間にわたってサービス・プロダクトを利用してもらうことが重要になっています。マーケティングの権威、フィリップ・コトラーは2017年に刊行した「マーケティング4.0」のなかで現在のビジネスを「接続性の時代」と形容しました。
消費者はとにかくつながりを意識しており、企業はどれだけ商材を販売できるか、というより「どれだけ多くのファン(ロイヤルカスタマーを増やせるか」を考えなければいけません。そんななかあらためて定義した購買行動モデルが「5A理論」です。
5A理論(ファイブエー)
5A理論は2017年にフィリップ・コトラーによって提唱された購買行動モデルです。
・Aware(認知):顧客が商材を認知する
・Appeal(訴求):顧客に商材や企業の魅力を訴求する
・Ask(調査):顧客は気になっている商材を調査する
・Act(行動):購買する
・Advocate(推奨):他の人に奨めるようになる
コトラーは「マーケティング4.0」のゴールは奨励者を増やすことだ、といいます。現代ではSNSなどを駆使して消費者が誰とでもつながれるようになっています。つながりを求めている消費者をファンにすることで、伝道師になってくれるのです。最終的には自社の営業担当者として周りに勧めてくれる存在になります。
カスタマージャーニーマップで顧客の行動を追いかける
今回は時代ごとに顧客の購買行動モデルの変遷を紹介しました。テクノロジーの進化によって顧客の行動は変化していきます。企業のタッチポイントや施策なども移ろっていくでしょう。常に外部環境の変化を観察しておく必要があります。そして、その都度カスタマージャーニーを見直さなければいけません。
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