ビジネスモデル設計で注意したい5つのリスクについて解説

新規事業をリリースする前にはビジネスモデル設計は欠かせません。しかし担当者や担当部署が綿密にリサーチをし戦略を考えても、いざリリースをすると「思っていた計画と違う」と失敗をしてしまうことは多々あります。例えば「顧客が興味を示してくれない」や「オペレーションが巧く回らずに無駄なコストがかかってしまう」などがその代表格です。

そんな失敗を避けるために、戦略のまとめとして「あらためてビジネスモデル全体を見直すこと」が重要になります。そのなかでリスクを洗い出して「きちんとリスクを回避できているか」を精査しなければいけません。

今回はビジネスモデルキャンバスの9つの項目をもとに「ビジネスモデルのどこにリスクがあるのか」についての考察法をご紹介します。現在のビジネスモデルに潜むリスクを俯瞰するために、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

ビジネスモデルキャンバスの9項目は5つのリスクチェックができる

ビジネスモデルキャンバスの9項目とは以下の通りです。「顧客のジョブをどんな価値で解決するのか」「そのためにどのチャネルでどういった関係を築くのか」「関係性を構築するためにどんな活動が必要であり、社内リソースとパートナーリソースはどれくらい必要なのか」「その結果、コストはどれくらいかかり、いくらの利益になるのか」といった視点で記していきます。

・顧客セグメント(CS)
・提供価値(VP)
・チャネル/販路(CH)
・顧客との関係(CR)
・収益の流れ(RS)
・主要な資源(KR)
・主要な活動(KA)
・主要パートナー(KP)
・コスト構造(CS)

この9項目は5種類のリスクで分類できます。では具体的に5項目について考えていきましょう。

1. ジョブ(「顧客セグメント」)

顧客セグメントは「ジョブ」の部分を占めます。ジョブとは「ある状況下において顧客が求めているもの」や「抱えている不満」「こなさなければいけない用事」などを指す言葉です。「顧客が何を実現したいのか」を把握しておくことで利用されやすい商材になります。ジョブについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

2. ソリューション(「提供価値」)

提供価値(バリュープロポジション)はソリューションの部分を占めます。顧客のジョブを把握したうえで、きちんと悩みを解決するためのバリューを書き記す部分です。バリュープロポジションに関しては以下の記事で解説しています。

 

3. マーケティング(「顧客との関係」「チャネル/販路」)

「顧客との関係」と「チャネル/販路」はマーケティングの領域を占めます。どの販路で顧客に商材を利用してもらい、どのように顧客との関係を構築し維持、展開していくのかを考える部分です。

 

4. オペレーション(「主要な活動」「主要な資源」「主要パートナー」)

主要な活動(KA)、主要な資源(KR)、主要パートナー(KP)の部分はオペレーションを司ります。まず顧客のジョブを満たすバリュープロポジションを生み出す、提供するための活動を書き出しましょう。そのうえで自社のリソースとパートナーのリソースを生かします。活動を最適化するためのオペレーションを考える分野になります。

 

5. ファイナンス(「収益の流れ」「コスト構造」)

収益とコストはビジネスモデルのなかでファイナンスを占めます。活動をするためにかかるコストと、利益を生むための収入を考えていきます。安定して事業を進めるためにも必要な部分です。

 

 

5つリスクの考え方

ではこの5つのリスクに関して、ビジネスをリリースする前にどのようなリスクを精査する必要があるのでしょうか。各領域に関してリスクをチェックする視点についてご紹介します。

 

1. ジョブのリスク

まず「ジョブ」について失敗する点としては「そもそもジョブがなかった」という問題です。「顧客は本当にそのジョブを抱いているのか」を考えましょう。「なんとなくありそうだから」でジョブを考えてはいけません。あらかじめ顧客にインタビューをするなどのリサーチをしたうえで「顧客がいまどのような状況にあるのか」「その状況下で何に悩んでいるのか」をあらためて見直しましょう。具体的には以下の3点に注目するとよいでしょう。

・確実に商材を購買してもらえるペルソナは発見できているか
・ペルソナという人物像だけでなく「顧客セグメント」というセグメンテーションが見えているか
・設定したターゲットには「代替手段がない」または「競合が入り切れていない弱いセグメント」になっているか

なおジョブ理論の観点で顧客にインタビューをする方法は以下の記事で解説しています。

 

2. マーケティングのリスク

マーケティングの戦略において失敗しがちな点は「接触点がなかった」「自社が考えているマネタイズの方法を顧客が良しとしていなかった」などがあります。そもそも使おうとしているチャネルに顧客がいるのか、そしてマネタイズの方法は合っているのか、などを考えなければいけません。ここでいうマネタイズの方法とは「一括支払いなのか。サブスク課金なのか」「アップセルなのかクロスセルなのか」といった項目になります。顧客へのインタビューを材料にして考えていきましょう。

特に以下の4点に注目してリスクを考えましょう。

・顧客が繰り返し使っているか
・購買後の顧客の行動が高い解像度で把握できているか
・そのチャネルを使った場合にCPA(Cost Per Action)よりLTV(Life Time Value)が大きくなっているか
・オンラインとオフラインのチャネルは見極められているか

 

3. ソリューションのリスク

提供価値では「他社に対する優位性なかった」という点で間違ってしまいがちです。既に市場に存在しているバリュープロポジションの二番煎じになっては使ってもらえません。あらためて市場を見渡して独自の提供価値を構築できているかを考えましょう。

特に以下の4点に注目してリスクを考えましょう。

・お金を払ってでも購買したくなる価値があるか
・構想しているニーズは存在するか
・「顧客が何に対してお金を払うのか」が分かっているか
・「非購買理由」を避けられているか

 

4. オペレーションのリスク

自社の活動をするうえでのリソースが間に合っておらず、破綻してしまう可能性もあります。大前提として「ちゃんと事業を継続していくためのオペレーションが構築されているか」を見直しましょう。またそのうえで「自社の強みが発揮されているか」を考えなければいけません。パートナーや人員体制として、現状のオペレーションが他社に比べて優位性があるかを見直していきましょう。

特に以下の4点に注目してリスクを考えましょう。

・選択と集中をすべきポイントは見えているか
・必要なリソースはあるか
・パートナーは顧客セグメントの開発と同時並行で進めているか
・パートナが参加する「条件」と「制約」は明確か

 

5. ファイナンス(事業化)のリスク

ファイナンスの部分はシビアに見ていく必要があります。「KGI・KPIを達成した場合、どのくらいの期間で損益分岐点を迎えるのか」また「その後はどれほどのペースで黒字が拡大していくのか」をきちんと精査することで「そもそもこのビジネスを事業化すべきか」という根本的な部分が見えてきます。コストと収益の数字は市場の人口動態や他社との優位性など、ビジネスモデル全体を俯瞰してみたうえで算出しましょう。

特に以下の4点に注目してリスクを考えましょう。

・圧倒的なコストダウンは可能か
・欠けるべきコストは明確でロジックがあるか
・業界のキャッシュポイントは理解できているか
・収益モデルは把握できているか。そのうえでビジネスにフィットする形になっているか

 

 

ビジネスモデル全体が論理的につながっているかを確認しておく

今回は9つのビジネスモデルキャンバスと5つのリスクから、ビジネスモデル全体のリスクを確認する方法を紹介しました。

前提として気を付けておきたいこととしてはビジネスモデルキャンバスの各項目がすべてつながっているのかということです。もともとのジョブから目を離して自分都合のソリューションをしてはいけません。またマーケティングとオペレーションが合っていないと、コストの面で齟齬が出てファイナンスの計画も崩れてしまいます。ですので、必ずビジネスモデルの各要素がつながってストーリーができているのか?ということが大事です。

今回ご紹介したビジネスモデルキャンバスはBizMakeでどなたでも無料でご利用いただけますので、新規事業に関わっている方はもちろん、今後既存事業を見直したい方もぜひご利用ください。

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