
ビッグハイアとリトルハイアとは?「売ること」をやめるのが成功するためのファクター
「製品をつくれば売れるという時代は終わった」。
昨今、さまざまなビジネスメディアでこのような文言が唱えられています。今は顧客のニーズを最優先しなければ商材は利用してもらえないのは明らかな事実です。たくさんの方が「そんなこと当然だよ」と思うでしょう。
しかし理論的には把握していても、いまだに売り上げばかりを追ってしまう企業が山ほどあるのも確かです。そしてこうした企業は「ニーズ」の本質的な意味をよく理解できていないケースが考えられます。
そこで今回はクレイトン・クリステンセン著「ジョブ理論」の文中にある「ビッグハイア」と「リトルハイア」の違いから、マーケティングをするうえで本当に重視すべき顧客のニーズについて解説しましょう。
目次
そもそもビッグハイアとリトルハイアとは
ジョブ理論は顧客が抱えている課題や願望を「ジョブ」、解決するために会社のサービスを使うことを「ハイア」として、顧客のニーズの本質を探る理論です。あくまで顧客の目線に立って自社の商材の価値について考察することで「どうして商材が利用されているのか」について深掘りすることができます。
ジョブ理論ではビッグハイアとリトルハイアという2つのタイミングが紹介されています。ビッグハイアは「顧客がサービスやプロダクトを購入した瞬間」であり、リトルハイアは「顧客がサービスやプロダクトを利用した瞬間」です。
ここで重視しなければいけないのはもちろん「リトルハイア」です。
多くの企業がビッグハイアばかりを追っている
しかし多くの企業が「商材の購入=ニーズの満足」だと誤解しており、購入者のデータばかりを収集してしまいます。購入客のプロフィールの情報やセットで購入したプロダクトなどを追いかけ、リトルハイアのデータをないがしろにしているのです。すると頭ではニーズが大事だと分かっていても、結果として自社の売り上げを優先してしまうことになります。
大切なのはリトルハイアですので「どうして利用価値を見出しているのか」を探る必要があります。利用した顧客のリアクションを収集しなければいけません。不足していると感じた部分や、これから継続して使いたいと感じるか、いくらまでならコストを割けるかなどをインタビューで明らかにしていきましょう。
リトルハイアへの転換によって成功した例
ジョブ理論を使って経営改善に成功した実例として有名なのが「ミルクシェイクのエピソード」です。詳しくは以下の記事からご覧ください。
このファストフード店では、はじめミルクシェイクの不振を脱却するために、顧客の表面的な購買データを取りながらフレーバーや量などをブラッシュアップしていました。つまり売り上げの数値に着目していたのです。しかし結局のところ本質的なニーズは「平日に車内での口寂しさを紛らわしたい」や「休日に子どもに買ってあげることで良い父親だと思われたい」など、売り上げ後の数値的なデータには現れない部分でした。その本質的なニーズに合うようにミルクシェイクを改良したところ、売れゆきは改善したという成功体験になります。。
ここではミルクシェイクを購入したタイミングがビッグハイアとなります。また車内でなんとなく飲んでいたり、子どもに手渡したりする瞬間がリトルハイアです。
このファストフード店の例でも分かるように、企業は顧客データを取る際にどうしても年齢層や性別、職業などの指標データを重視する傾向にあります。その理由としてロジカルにデータを収集したほうがつながりやす”そう”に見えるからです。ターゲットやペルソナはもちろん重要ですが、論理的なデータばかりを追いかけてしまうと机上の空論ばかりが積み重なってしまい、顧客の本質的なニーズは見えにくくなってしまいます。
一方、リトルハイアに集中して「顧客のジョブ」を探ることで、業績を回復することに成功しました。「製品が売れた理由を探る」のではなく「顧客が自社の商材を使って快感を得た理由を探る」ことが重要です。そのうえでリトルハイアは大いに役に立ちます。
サブスクリプションモデル構築にもリトルハイアは有効
「製品を売るのではなく、顧客の体験を重視する」という意味ではサブスクリプションのモデルに通ずる部分があります。BizMakeでは以前、数社のサブスクリプションモデルの成功の秘訣をご紹介しました。これらの企業は往々にしてリトルハイアを重視することを意識しています。
フェンダー社は「ギターを買ってもらうこと」を目指したわけではありません。「かっこよく思われたい」という顧客の社会的なジョブを満たすために、顧客のギタリストとしてのスキルを高めることに力を入れました。CLASは「家具を買う」のではなく。不自由のない生活を、もっと身軽に楽しみたいというジョブを満たすためにシェアリングサービスを展開しています。サブスクリプションモデルを構築する場合にも、ビッグハイアではなくリトルハイアに力を入れましょう。
ジョブ理論を活用して顧客の本質的なニーズ、またインサイトを探る際に有効なのが「ジョブマップ」です。フレームワークを利用することでチームメンバーとも簡単に共有できますし、自身のビジネスモデルを具体化するのにも役立ちます。
BizMakeでは誰でも無料でジョブマップを作成できますので、ぜひお気軽にご利用ください。
