
Amazon式インターナル・プレス・リリースとは?顧客課題から逆算で新規事業を作るツール
書籍の小売りから始まって、今や世界最大のECプラットフォームとなったAmazon。しかし彼らはECだけでなく、動画や音楽のプラットフォームやFire TV Stick、Kindleタブレットなどのハードウェアの販売など、常に新規商材をつくり続けています。
そんなAmazonでは新規事業を始める際に、社内向けにプレスリリースを発信する文化があります。その理由は「顧客ニーズから逆算してマーケティングを進めるため」また「感情的でなくロジカルに説得力をもって事業創生するため」です。
今回はAmazonが新規事業を始める際に使う「Amazon インターナルプレスリリース」について、意義や書き方などを紹介しましょう。
目次
Amazon インターナル・プレス・リリースの9つの項目とは
はじめにAmazon インターナル・プレス・リリースにはどのような内容を書くべきなのかを紹介しましょう。前提としてこのプレス・リリースは、社内向けに書くものですが、届ける相手は「顧客」になります。つまり顧客が読むことを前提して書くべき資料です。
Amazon インターナル・プレス・リリースの作成を立案したAmazonのサービスディレクター、ラン・マカリスター氏は「1ページ半以下、段落を3〜4文以内というシンプルなものにすること」を約束事にしています。顧客がプレス・リリースを呼んで、他者に勧める際に長々と説明はしないからです。シンプルで魅力を感じる文章こそ拡散されやすい、ということを表しています。
Amazon インターナル・プレス・リリースには全部で9つの項目があります。これらの項目は顧客思考から逆算的に成り立っているものです。では9項目について見ていきましょう。
1. 見出し・タイトルHeading
まずは新商材のタイトルです。仮定したターゲットが理解できる言葉で製品に名前を付けます。
2. 小見出しSubheading
タイトルに沿って「どの市場の誰がターゲットで、どのような利益が得られるかを説明します。小見出しはタイトルの下に一行だけ付け加えるものです。
3. サマリSummary
新商材のプロダクト概要と利益を簡潔に記述しましょう。なお、普段私たちが読むときと同じく、仮定する顧客はこのサマリ以外は読まないはずなので、この段落を大事に書く必要があります。
4. 課題Problem
新商材がターゲットのどんな課題を解決するものなのかを書く部分です。ここで解決策や利益までを書くと蛇足になってしまいます。課題にフォーカスして書きましょう。
5. 解決Solution
課題をもとにどう課題を解決するかを書きます。この部分で重要なのはその解決策が下品、または無理やりなものでなく、上品かつ鮮やかなものであることです。
6. 提供側の声Quote from You
提供者側の声を記載する部分です。例えば「マーケティング部マネージャーの山田は「○○」といいます……」といった具合に、開発側が課題をどう解決するのかをリアルな声として顧客に届けます。
7. サービス・プロダクトの始め方How to Get Started
顧客がどうやって商品を使い始められるのかを書きます。例えば登録や契約がいるのか、月額いくらをどんな手段で支払うのか、といった部分になります。使い始めることがいかに簡単かを記述しましょう。
8. 利用客の声Quote from Customer
実際に使った顧客の声を書きます。どんなベネフィットがあり、どんな感情が生まれているのかを書く部分です。もちろん商材の開発前なので「想定」です。しかし顧客の声を書くことで改めて課題とソリューションがロジカルに合致しているかを把握することができるのです。
9. まとめ・次の行動の呼びかけClosing and Call to Action
プレス・リリースのまとめと顧客が次に取るべきアクションを書きます。
参考:Medium「Amazon Uses a Secret Process for Launching New Ideas — and It Will Transform the Way You Work」
Amazon インターナル・プレス・リリースを書くべき3つの理由
画期的なアイディアを思いついたとしても、Amazonはいきなり開発することをNGにしています。まずは必ずロジックを作って計画を練ったうえで、新規事業に投資するのです。Amazon インターナル・プレス・リリースはまさしくAmazonの企業理念を象徴する試みと言えるでしょう。では、なぜ商品の開発前にAmazon インターナル・プレス・リリースを書くべきなのでしょうか。その理由を3つ紹介します。
1.「開発者のエゴ」というリスクを回避できるから
新規商材を作る際に陥りがちなのが「開発者のエゴ」という問題です。商品に対する愛情が強くなってしまい「きっと顧客の役に立つはずだ」と信じ切って事業を進めてしまうこともあります。顧客の課題から逆算思考でプレス・リリースを書くことで、顧客ベースでビジネスを考えられます。
2.フィルタを通して「ロジックが通っているか」を考えられる
Amazon式インターナル・プレスはビジネスを進めるうえで「ロジックが通っているか」を最終的に確認するツールともいえます。顧客の課題とそれに対するソリューション、開発者側が伝えたいこと、また顧客の声に至るまでがきちんとロジカルになっているかを、見極めるためのものです。
3.企画段階でブラッシュアップをすることでリソース削減になるから
開発者のラン・マカリスター氏は「開発をはじめた段階で修正をすることももちろん可能だが、ディレクションの段階で磨き上げたほうが早い」といいます。マーケティング戦略を練って開発に着手した後に、プランを修正するのは余計な工数がかかるものです。あらかじめプレス・リリースを作って違和感がない商材になっているかを確認しておくことで、無駄なリリースを割かずに済みます。
Amazon インターナル・プレス・リリースで新規事業のロジックを通わせる
新規事業は必ず顧客の課題をベースに考えなくてはいけません。Amazon インターナル・プレス・リリースは、まさに新規事業のプランをまとめるうえで役に立つツールです。ただし企画の最終段階で作るものであり、その前には顧客の課題を発見したり、競合・代替品との差別化を図るなどの「準備」が必要になります。
BizMakeでは顧客の求めていることを発見するために使う「ジョブ理論」や、競合との差別化を考える「STP分析」など、新規事業開発で欠かせないフレームワークをご用意しています。Amazon インターナル・プレス・リリースについては、2021年2月に実装予定です。どなたでも無料で登録できますので、ぜひお気軽にご利用ください。
