
VRIO分析とは? 4つの要素や作成方法、トヨタ・ユニクロの事例などをご紹介
VRIO分析とは1991年に生まれたフレームワークです。企業の経営資源の観点から「V:Value(経済的な価値)」、「R:Rareness(希少性)」 、「I:Imitability(模倣可能性)」、「O:Organization(組織)」の頭文字で構成されており、この4要素を客観的に評価していきます。この4つの要素は自社の競争優位性を確保するための内部環境として重要なものです。VRIOの4要素について答えることで強みなのか弱みなのかを評価できます。自社のビジネスモデルの重要な経営資源は強みになっているのか、また仮に弱みの場合はどうすれば強みに変えられるのかを考えたいときに使います。
今回はVRIO分析の考え方の基本から作成方法、一緒に使いたいビジネスフレームワーク、トヨタやユニクロの事例などについて総合的にご紹介します。
目次
VRIO分析の概要と考え方について
VRIO分析は1991年にジェイ・B・バーニーが提唱したフレームワークです。先述した通り「V:Value(経済的な価値)」、「R:Rareness(希少性)」 、「I:Imitability(模倣可能性)」、「O:Organization(組織)」の4つのそれぞれについてYes or Noで回答するとされています。しかしより細かく把握するために5段階評価で回答する方法もあります。5段階評価を採用した場合は、改善する際のコストをおよそで把握できるというメリットがあります。
この4項目の経営資源は業界における競争において優位性を示すものです。経済的な価値が強ければ、ピンチに耐えられますしチャンスを生かせます。希少性や模倣可能性が高ければ競合や新規参入者の少ないブルーオーシャンで勝負することが可能です。属人的でなく組織のリソースを生かしていれば、企業として安定して価値を提供できるでしょう。
この際に注意したいポイントとしては「自社の内部リソースのみで考えること」です。外部パートナーは含めません。外注先のパワーはいつ失ってもおかしくない。またそもそもコストを割いているので単純なケイパビリティとして数えられないからです。
VRIO分析の使い方と思考の流れ
では実際にVRIO分析を使ってみましょう。具体的には以下の質問に回答することになります。前提としては「価値」「希少性」「模倣可能性」「組織」という4つの項目について1つずつ設定しなければいけません。「価値」をクリアしたら次に「希少性」に進みます。「希少性」がOKであれば「模倣可能性」について回答します。「模倣可能性」を通過したら最後に「組織」に回答します。この4段階のどこでストップするのかによって評価が変わり、改善することが求められるのです。
「Yes or No」で回答する際は明確なので分かりやすいでしょう。5段階評価で回答する際は及第点を「2.5」とすることで、次のステップに進めるかどうか、自信をもって回答できます。では4項目の詳細と、それぞれの評価についてご紹介しましょう。
経済的な価値Value
「企業やプロジェクトの内部リソースはピンチに対応でき、チャンスを最大限に生かせるか」
企業の経済的な価値といっても、単純に金銭的なリソースのことではありません。マンパワーや建築物、機器類などのリソースもすべて含めて考えます。こうした社内リソースをすべて含めたうえでピンチを最小限に食い止められるか、チャンスを最大限に生かせるか、という観点で考えましょう。この時点でNGだった場合は「競争劣位の状態」となります。他社に比べて競争力に欠けるということです。
希少性Rareness
「業界においてそのビジネスは希少性が高いか?」
業界において自社やプロジェクトのビジネスは希少性が高いのかについて考えましょう。「競合も実行しているのか」という観点で考えることが重要です。この時点でストップした場合は「競争均衡の状態」になります。価値はあるが希少性が低いので、競合が多く他社との競争力が拮抗しているということです。
模倣可能性Imitability
「業界においてそのビジネスを模倣する場合はコストやリソースがどれだけかかるのか?」
業界において自社やプロジェクトのビジネスは模倣しやすいのか、簡単には真似できないのかについて考えます。「現在のビジネス活動をするためにはリソースやコストがどれくらいかかるのか」という観点でいうと分かりやすいです。この時点でNGだった場合は「一時的な競争優位の状態」です。希少性が低い市場にいるものの模倣されやすいので、現状だけは競争優位性を担保できていますが、いつ競争均衡に戻ってしまうか分からない状況です。
組織Organization
「現状の経営資源をフルに生かすために組織の構築やフローは適切に設定されているか」
経済的な価値、希少性、模倣可能性の3点を守るために組織的な運営がきちんと回っているかについて考えます。運営方針が固まっていることで、長期的にわたって今の内部環境の強みを維持できます。この時点でNGだった場合は「持続的な競争優位の状態」です。希少性が高く模倣可能性が低いので長きにわたって競争優位を確保できます。4項目を通過した場合は「持続的な競争優位であり、経営資源を最大に生かせている状態」になります。
バリューチェーン分析でビジネス活動全体を見渡したうえで分析することが重要
バリューチェーン分析とは、自社の提供価値を定めるためのフレームワークです。「企業活動全体を見渡したうえで、どのフェーズでどんな価値が付随されているか」を分析することで自社の提供価値を具体的に把握できます。
バリューチェーンでは基本的に「購買物流」「製造」「出荷物流」「商品企画・マーケティング」「サービス」という流れで考えるものです(ただし実際は各社のビジネス活動を細かく分けたうえで考えましょう)。各活動の1つひとつに関してVRIO分析をすることで分かりやすくなります。
たとえば「接客・販売」という活動で見るとしましょう。「もし教育体制チームにコストを割いていたら「価値」は高まる。しかし通常の社員教育はどの企業もしているので「希少性」は低い。ただし社員にマナー講師がおり、特別な教育をしている場合は「希少性」は高まるが、ハードルは低いので「模倣可能性」は低い……」といったように各活動に関して評価をすることで、自社の強みが分かりますし、弱みを補完する方法を考える出発点になります。
バリューチェーンの解説記事はこちらから
https://media.bizmake.jp/method/about-valuechain/
VRIO分析をトヨタの事例で紹介
では実際に作成する際の参考にするためにトヨタの事例で作成事例を分析します。トヨタ自動車のビジネス上の強みといえば「世界最大級の自動車メーカーであること」「トヨタ生産方式」「車のサブスクに早めに乗り出したこと」などが挙がります。たとえばトヨタの「生産」というフェーズに関してVRIO分析をしてみましょう。
経済的な価値Value
トヨタは自社で工場を構えていますので、ピンチやチャンスの際に柔軟に対応できます。生産台数などをスピーディーかつ細かく設定し直せるのが大きな強みです。価値に関しては通過できます。
希少性Rareness
自社工場を持つことは珍しくはありません。しかしロボット共存型の工場を構築していることは非常に希少性が高いものです。なかなか他社が入り込んでいない部分になります。
模倣可能性Imitability
世界的に称賛されている「7つの無駄」を無くした「トヨタ生産方式」は、簡単には真似できない仕組みになります。膨大なコストを費やしたとしても完璧に模倣することはできません。
組織Organization
もちろん生産方式に関してトヨタは長年続けており、組織化もできています。市場で長年、優位性を保ち続け、海外での仕組み化にも成功しているトヨタの組織化には隙がありません。
VRIO分析をユニクロの事例で紹介
ユニクロを運営するファーストリテイリングをVRIO分析でご紹介します。ユニクロは生産から販売までを自社ですべて補う「SPA方式」を採用しており、経営資源として非常に大きな魅力になっています。なかでも「低価格で質が高い製品開発」という活動に関してVRIO分析で紹介しましょう。
経済的な価値Value
「低価格で質が高い衣類」を提供できていることはユニクロの大きなバリューです。また自社一貫であるため、ピンチのときには生産数を少なくするなどの調整もスピーディーにできます。
希少性Rareness
希少性という面ではSPAが大きいでしょう。他のアパレルメーカーは基本的にパートナー企業との連携のもとで生産や物流をしており、資金力があるからこその珍しいモデルになります。
模倣可能性Imitability
他のアパレルブランドがSPAに舵を切れない理由は真似できないからです。構築するためには一時的に大きな金銭的・人員的コストを割かねばなりません。また時間もかかります。模倣可能性も低いといえるでしょう。
組織Organization
組織力も抜群です。ユニクロはデザインから販売までの組織が横でしっかりつながっています。また海外まで組織を伸ばしており、それぞれに教育をしているのが特徴の1つです。
VRIO分析で企業の経営資源を強みに変える
VRIO分析とバリューチェーンを併用することで、企業活動をセグメント化したうえで1つひとつの強みと弱みを細かく分析できます。内部環境を最適化することで長期にわたって安定した事業を続けられるでしょう。また希少性や模倣可能性は、日々新しい企業が立ち上がる現在のビジネスにおいて非常に重要な部分です。ぜひVRIO分析で自社の経営資源を最適化しましょう。

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