バリュープロポジションキャンバス(VPC)とは?

バリュープロポジションとは

バリュー(Value)は「価値」
プロポジション(Proposition)は「提案」を意味します。

つまり、バリュープロポジションは直訳すると「提供価値」。企業が提供するサービスや商品の価値を示した言葉です。そもそも「バリュープロポジション」という言葉は、マーケティングやビジネスモデルのトレンドが変化するのに合わせて出現しました。

これまでマーケティングのカタチは情報やモノのレベルが進化するにつれて変わってきました。商品が主導だったモデルから、ライバルとターゲットを設定して差別化を図るようになり、現在では「顧客へのバリュープロポジションを最重視するモデル」ができあがっています。

そもそも、なぜここまで「価値」に重きが置かれるようになったのか。その背景として「ニーズのずれ」という問題が挙がるでしょう。企業側が「便利だろう」「差別化できるだろう」と考えてリリースしたサービスや機能、商品が、エンドユーザーのニーズとずれてしまったのです。結果的に消費者は「使いづらい」と感じる瞬間が増え、消費者としても企業としても無駄なコストが発生するようになりました。

また、単純に商品やサービスの母数が増えており、消費者がニーズに合うモノを自由に選択できるようになったことも「価値」の注目度を高めている一因でしょう。膨大な情報量から、最適な商品やサービスを選ぶのは簡単ではありません。そこで顧客にとっても企業にとっても指標となるのが「バリュープロポジション」です。企業が提供する価値は自社のブランディングのためにも必要不可欠な要素となりました。

「バリュー=企業が提供する価値」だとしたら、「バリュープロポジション=消費者のニーズにフィットする価値」でしょう。消費者のニーズとサービスや商品の価値とをきちんと照合するべき時代に入っています。

 

 

バリュープロポジションキャンバス(VPC)とは

「自社のサービスや商品の価値」が顧客のニーズとずれてしまうことは頻繁に起こります。このような問題を防ぐために生まれたのが「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」。簡単に言うと「ニーズのずれ」を解消するためのフレームワークです。

2015年に和訳が発行された『バリュー・プロポジション・デザイン』という書籍で紹介されると、注目を集めました。

右側に「顧客の情報」を、左側に「バリュープロポジションを構成する要素」を記載し、双方を一枚の紙上で比較することで、バリューがニーズに合致するかを確認します。

バリュープロポジションキャンバス(VPC)には2つの特徴があります。

 

1.市場・製品フィットを検証する

右側(顧客情報)と左側(バリュープロポジションを構成する要素)を可視化し、バランスを取ることで、顧客のニーズに合致したバリュープロポジションを考えられます。

 

2. ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスを補完する

バリュープロポジションキャンバスとビジネスモデルキャンバス、リーンキャンバスの3つには関係性があります。バリュープロポジションキャンバスを埋めることで、ビジネスモデルキャンバス内の「提供価値(VP)」と「顧客セグメント(CS)」や、リーンキャンバス内の「独自の価値提案(UVP)」と「顧客セグメント(CS)」の項目を、論理的に説明できるのです。

ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスを作成する前に、まずバリュープロポジションキャンバスを利用して「顧客セグメント」と「価値提案」を設計します。その2項目を元にして組み立てた事業モデルをビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスに落とし込んで「正しいビジネスモデル」を設計できているかの検証をするのです。もちろん、このフローは逆算して考えてもかまいません。最後に作成したビジネスモデルの仮説を検証するため、MVPキャンバスで事前準備をしてから、テストすることでといった流れで使うことが可能です。

現在のサービスや商品の価値がニーズに合っているかを確認するのはもちろん、これから商品やサービスを立ち上げる予定がある方にも有効ですので、以下よりWEB上で簡単にVPCを使ってみましょう。

しかし、バリュープロポジションキャンバスの構成要素を知らなければ、話になりません。内容を詳しく知らない方のために、以下に構成要素や設定するうえでの注意点などをご紹介しますので、はじめにご覧いただき、進め方を把握しておくことをおすすめします。

 

 

バリュープロポジションキャンバスの構成要素

バリュープロポジションキャンバスのフレームワーク

右側の円で顧客セグメントを、左側の円で提供価値について記載していきます。

 

顧客セグメントは以下の3要素で構成されます。

1. 顧客のしたいこと(仕事)Customer Jobs

2. 顧客が嬉しいこと(メリット・恩恵)Gain

3. 顧客が嫌なこと(障害・リスクや悪い結果)Pain

 

提供価値は顧客セグメントの各要素に対応しており、以下の3要素で構成されます。

1. 提供する製品、サービス+特徴Product&Services

2. 提供サービスによって得られる嬉しい要因Gain Creators

3. 提供サービスによって減らすことのできる嫌な要因Pain Relievers

とてもシンプルなつくりなので、専門的な知識は必要ありません。ではどのような手順で最適なバリュープロポジションが作れるのかを、考えていきましょう。

 

 

バリュープロポジションキャンバスの作成方法

1. 誰に何を提供するか?

まずは提供価値と顧客セグメントを記載します。自社のサービス内容とターゲットとしている顧客の情報とを簡潔に記載しましょう。長ったらしく書く必要はありません。誰にでも分かるように一文で書くことがキャンバスを作成するうえで重要です。

 

2. 顧客がしたいことは何か?

顧客がしなければいけないこと、望むこと、ありたい姿について記載します。「おいしい料理を安く食べたい」や「毎日の家事をもっと手軽にしたい」など、顧客が望むことをまとめてください。

顧客セグメントの3要素を書くうえで、注意するべきなのがターゲットの心理や行動を「客観的に」認識すること。ときには社員や顧問などに聞くのもいいでしょう。主観を捨てて客観的に考えることで真のニーズが表れます。

 

3. 顧客が2をするにあたって嫌なことは何か?

顧客にとって悪いこと、したくないこと、減らしたいことについて記載します。「サービスを使うのに時間が掛かってしまう」や「費用対効果が悪く無駄なコストがかかる」など、思いつくことをシンプルに書いていきましょう。

 

4. 顧客が2をするにあたって嬉しいことは何か?

顧客にとって良いこと、やりたいこと、増やしたいことについて記載します。

2や3を踏まえたうえで総合的な顧客のよろこびがわかるでしょう。

たとえば2で「家事をもっと手軽にしたい」と設定し、3で「貯金が少ないので、最新家電は購入したくない」とするならば、4は「お金を掛けずに家事を手軽にすること」となります。

 

5. 顧客の2のニーズに対して提供できる価値は何か?

続いて、バリュープロポジションのセグメントに移っていきます。まずは顧客が抱える2のニーズを満たすような製品・サービスの提供価値について記載しましょう。顧客セグメントとバリュープロポジションとを、必ず呼応させなければいけません。

 

6. 顧客の3のニーズに対して提供できる価値は何か?

嫌なことを減らすための提供価値について記載します。ここで呼応するのは3の「顧客が嫌だと思うこと」。3が「お金は掛けたくない」という内容であれば「新たなアイテムを買う必要はなし」となります。

 

7. 顧客の4のニーズに対して提供できる価値は何か?

顧客が嬉しいと感じるようなサービスや商品のカタチを探っていきましょう。4で記載した内容を叶えられるようなバリュープロポジションを考えることで「ニーズのずれ」を解消します。

 

 

「ニーズのずれ」を解消しよう

冒頭でお伝えしたとおり、現在のビジネスは「顧客に喜んでもらえる価値」に最も重点を置いています。サービスも商品も溢れかえっている現状のマーケットにおいて、ニーズのずれは大変危険です。バリュー・プロポジション・キャンバス(VPC)を使うことで、顧客のニーズと提供価値の相関を整理でき、提供価値の機能の選定訴求ポイントの把握に役立ちます。その際は、ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスを併用しましょう。より質が高く、ニーズに響くビジネスモデルを構築できます。

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