リバース財務ツリー(逆損益計算書)とは? 新規事業推進の強い味方

ビジネスをするにあたって、損益計算は必要不可欠です。「すべての売り上げ」と「事業を展開するうえでかかるコスト」を見比べて、最終的な利益を算出することで計画的な経営が実現します。

しかし、いざ事業を始めてみると想像以上にコストがかかり、予想していた利益率には届かないケースはよくあります。もちろん、反対に大幅な利益が出る場合もあるでしょう。新規事業を始める際は、参照できる過去のデータがありません。確証がないので、仮定の連続によって損益を決めなければいけないのです。正攻法で利益を決めると確証がないあやふやなコスト計算になってしまいます。

そこで新規事業を始める際、可能な限りコスト構造の齟齬をなくすために有効な「リバース財務ツリー(逆損益計算書)」というフレームワークをご紹介します。逆説的な思考を用いて損益をプランニングできるのが魅力です。不確定なビジネスモデルを前提としたとき、利益の達成に大きく貢献します。

 

 

リバース財務ツリー(逆損益計算書)とは

リバース財務ツリーとは「最終的な利益」を決めたうえで、コスト構造を定めていくフレームワークです。ゴールを定めたうえで過程を考えることで、それぞれのフェーズで必要な金額がより分かりやすくなります。また、かけるべきコストや、残りのリソースを俯瞰的に把握できるのもメリットです。

一般的に損益計算をする際は「自社が挙げるすべての売り上げ」を出発点とします。その後、段階的にコスト構造を考えて「最終的に残った利益」をゴールとして策定するでしょう。反対に、リバース財務ツリーの出発点は「最終的な利益」です。「仕入れ」や「人件費」などをフェーズごとに分岐させながら、逆算的にコストとリソースを記入していきます。

確証がないなかで目標利益を立てる場合、それぞれの数値が曖昧になってしまいます。リバース財務ツリーを使うと「数値を算出した根拠」が明確になるのです。より実現性の高い計画書が完成します。

 

 

コスト構造において仮説を立てやすくなる

財務計画を立てるうえで、明らかにすべき損益項目が4つあります。

「単価×客数(収益)」「直接費と間接費(コスト構造)」「サービスやプロダクトそれぞれの目標利益率」「回転率(スタッフの稼働率や在庫のサイクル)」です。

リバース財務ツリーはゴールから決めていくので、4つの要素について仮説を立てて具体的に設定できるのが魅力です。「最終的に〇〇円の利益を出すためには、このサービスで〇〇の利益率を出す必要がある。するとスタッフの人件費は〇〇までかけられる」と、単なる損益計算書ではなく、ビジネスモデルを含めたシナリオが完成します。逆説的に考えることで、過去のデータがなくても数値に信憑性が出るのです。

 

 

逆算思考で財務を決めるメリット

通常のフローとは逆に、ゴールから答えを導き出すことを一般的に「逆算思考」といいます。リバース財務ツリーは、まさに逆算思考を取り入れた財務計画です。

逆算思考にはあらゆるメリットがあります。例えば「優先順位がはっきりすること」です。最終的な利益目標が見えていると、割くべきリソースが明らかになります。逆に無駄なコストも明確になるでしょう。すると「この段階でかけるべきコストは妥当なのか」と、コスト構造を疑問視して観察できるようになります。積極的に投資すべきモノやコトが鮮明になるのです。

ユニバーサルスタジオジャパンの経営を見事にV字回復させたことで有名なマーケターの森岡毅氏は「戦略を立てる際には、何をゴールとするかを認識おくことが大事」といいます。ゴールを明確にすることで、ようやくマーケティングに取りかかれるのです。

 

 

リバース財務ツリー(逆損益計算書)の書き方

では最後にリバース財務ツリーの書き方についてご紹介しましょう。フレームワークなのでA4用紙1枚で完成するほか、手順もシンプルなので、ぜひお気軽にお試しください。

 

1. 最終的な利益

まず初めに左の大枠を埋めましょう。ここにはプロジェクト全体で目指すべき最終的な利益が入ります。

 

2. すべての売り上げとコスト

総売上コストを記載しましょう。当然、利益の金額と合致するように記載する必要があります。

 

3. 顧客の数と1顧客あたりの収入を記載

総売上に合うように「単価×客数」を記しましょう。プロダクトやサービスの単価を決めるきっかけになります。

 

4. 収入を挙げるためにかかるコスト

コスト構造を記載します。飲食店であれば「人件費」や「仕入れ費」「電気代」「新商品開発」とあらゆる要素があるでしょう。しかし1つのボックスからは3つまでしか派生できません。4つ以上になる場合は独立したボックスを作って、より細かく分析する必要があります。

 

5. より細かくコスト構造を作る

コスト構造をできるだけ細かく記載することで、より精密なフレームワークが完成します。「人件費」と一言で言っても、マネージャーやバイトなどあらゆる種類があるでしょう。同じように売り上げもプロダクトやサービスごとにさまざまあります。種類別に細かく記載することが大切です。「1つのボックスからは3つの要素しかつなげられない」という約束を守りつつ、詳細な計画を練っていきましょう。

 

 

リバース財務ツリーで新規事業の財務を明確にする

明確なデータを参考にできない新規事業だからこそ、リバース財務ツリー(逆損益計算書)を利用しましょう。

逆説的にお金の流れを決めていくことで、しっかりとした根拠を持って計画を立てられるのが魅力です。財務計画があやふやだと、メンバーも不安なままスタートします。また、終盤になって目標数値に届かず、デスマーチのような働き方を強いられる場合もあるのです。

BizMakeでは以下のリンクからWeb上で簡単にリバース財務ツリー(逆損益計算書)を作れます。新規事業を任されている方はもちろん、展開中の事業の財務を見直したい方もご利用ください。

 

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