PEST分析とは? 作り方のコツ・事例・PESTEL分析などを紹介(テンプレート付)

ビジネスを取り巻くマクロ環境を分析するために古くから使われているフレームワークが「PEST分析」です。「政治」「経済」「社会」「技術」の4項目を調査、分析することはマーケティングのスタート地点であり、必要不可欠なフェーズになります。

今回はPEST分析について詳細な概要や使い方、作成するコツ、2021年の現在でも通用するのかなどの情報を掲載いたします。

 

 

PEST分析とは

PEST分析とはビジネスを取り巻いている4つのマクロ環境を言い表した言葉です。「Politics(政治的要因)」、「Economy(経済的要因)」、「Society(社会的要因)」、「Technology(技術的要因)」の4項目それぞれの頭文字を取って「PEST」と名付けられています。

マーケティングの神様、フィリップ・コトラーが提唱し、古くから、ビジネスを進めるうえで欠かせないフレームワークとして多くのビジネスマンに親しまれています。

 

 

PEST分析はどのような悩みを解決するのか

PEST分析を用いることで「自社・ビジネスを取り巻く外部環境」を検証できます。どれだけ機能性が高い商材をつくってもトレンドにフィットしないと利用してもらえませんし、最新のテクノロジーに注目していないと、他社よりも機能性が低い商材ができてしまいます。

また政治や社会、経済、技術などはサービスやプロダクトにとって大きな影響力を持っていますたとえば、2018年10月にカナダで大麻が合法になりました。これにより新たなニーズが生まれ、それに従ってビジネスも活性化しています。政治や経済などの変化により大幅に落ち込んでしまう商材ももちろんありますが、ビッグチャンスが眠っているのは間違いありません。

逆に言うと、マクロ環境を踏まえないと自社のビジネスモデルは定まらないといってもいいでしょう。マクロ環境の分析は、ビジネスを進めるうえで最初に取り組まなければいけません。マクロ環境を把握したうえで、今度はミクロの環境を分析し、その後、ターゲティングやセグメンテーションを決定していくのがマーケティングをするうえで定石の流れです。

 

 

PESTの4要素の概要

ではPESTの4つの要素それぞれを開設しましょう。

 

1. 政治的要因Politics

政治環境の変化はビジネスに大きな変革を与えます。特に規制が多い業界では政治の方向転換によって、ビジネスモデルがガラッと変わる可能性もあるでしょう。一見、政治家に振り回されているように感じるかもしれません。しかしこれはチャンスです。これまでは「規制があるから……」としょうがなく使っていたユーザーに新たな価値を提供でき、市場が開拓できていないサービスをスタートできる可能性があります。

例えば最近では民泊に関する法律が変わりました。「ホテル業で10室以上、旅館業で5室以上の空間が必要」という規制が撤廃されたのです。民泊業界には追い風になっています。

だから政治環境の変化には常に敏感でありましょう。法案提出の頃にはサービスを構築しMVPを設定、PMFに到達しておくことが理想です。施工日と同時にスタートを切ることで他社に先んじることができます。

MVPとは「必要最低限の機能を備えたサービスやプロダクト」のこと。これから自社がローンチする商材が本当に顧客のニーズに応えられているかを、低コストで仮定・検証するために役立ちます。

詳しくは以下の記事でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

PMFとは「プロダクト・マーケット・フィット」の略で「自社のサービスやプロダクトが適切な市場でローンチされている状態」を指します。マーケティングの基礎として非常に大切な用語ですので、以下の記事からチェックしてください。

 

2. 経済的要因Economy

景気の上がり下がり雇用率賃金の動向などが関わってきます。景気が良くなると、もちろんエンドユーザーの消費率も上昇し物価が変動します。サービスやプロダクトの価格も潮流に合わせて変えなければいけません。経済は流動的なので、常に監視しながら他の要素とのバランスを見て、商材に変化を加えましょう。

例えばアメリカでは現在貧富の差が広がっているという経済状況がある。そこに敏感に反応したのが資金融資などの事業を展開する「LendUp」です。資金力がない貧困層でも低金利でローンなどを組めるように、クレジット履歴だけではなく住所やSNSの利用状況などを鑑みて信用情報を登録するサービスを打ち出しました。ニーズに合致する事業によって規模を拡大しています。

 

3. 社会的要因Society

新たな文化の出現流行の変化世間を騒がすような社会問題などで、つくるべき商材の内容が決まることも多々あります。現在ではSNSの流行によってより社会的要因が強くなりました。情報が拡散され、膨大な数のユーザーがすぐに情報を確認します。企業の評判の浮き沈みがより顕著になっているので、常にチェックをしておきましょう。

 

4. 技術的要因Technology

技術的なトレンドは他の3つと比べて簡単に予想できます。なぜなら他の3つはときどき前時代的な動きをすることがあるのに比べて、技術革新は常に未来を見据えているからです。ただし大きなインパクトを持つので、乗り遅れると痛手をこうむる可能性があります。スマートフォンやAI、インターネットなどの普及によってビジネスの形は180度変わりました。それだけのインパクトがあるのです。

テクノロジーの現在と未来については「ガートナーのハイプサイクル」を参考にするといいでしょう。「ガートナーのハイプサイクル」とは、アメリカのガートナー社が全世界に向けて年に一度発行するグラフ指標です。各テクノロジーを「黎明期」や「啓蒙活動期」「安定期」などに分けて紹介することで、テクノロジーのトレンドを俯瞰的に解説してくれます。

参考:ガートナー社「ハイプサイクル

 

 

PEST分析の事例

ではPEST分析の各要素について紹介したところで、PEST分析の事例をご紹介します。今回は航空業界と自動車業界という変化が著しい交通インフラの業界を分析していきましょう。

 

航空業界のPEST分析

JALとANAの二大巨頭が長年リードしてきた航空業界はLCC(格安航空)の登場によって見違えるほど利用しやすくなりました。そんな航空業界のPESTは以下のようになります。

 特に航空業界の変化で注目したいのが「自動運転」や「景気の悪化に伴う利用者減少」などでしょう。またそのうえでLCCなど社会的な要因も非常に重要な位置を占めています。今後はより搭乗券の料金が安くなることが予想されるなか、各社がどのような動きを見せるのかに注目です。

航空業界のPEST分析についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

 

自動車業界のPEST分析

また自動車業界の変化が目まぐるしい状態にあります。PEST分析によって以下のような分析ができます。

自動運転車への切り替えや、モノを欲しがらない若者の急増などが自動車業界のトレンドになっている状態です。またそのほか環境に関する捉え方なども自動車業界の未来に関する予測になるでしょう。

 

 

PESTのアップグレード版「PESTEL分析」とは

PEST分析は大きく4項目に分かれており、非常に使いやすいフレームワークだといえます。しかし約20年前に誕生したフレームワークであり、今では不足している部分があるのも確かです。

そこで数年前から進化版として登場したのが「PESTEL分析」になります。従来のPEST分析に「Enviromental(環境的要因)」「Legal(法律的要因)」を加えたものです。

もともと環境的要因は社会的要因のなかに、法律的要因は政治的要因のなかに内包されていました。しかしこの2つの要素は時代が進むにつれて、特に注目すべき要素になっています。

先述した大麻の合法化や、現在東京五輪に向けて日本が取り組んでいる民泊に関する法改正を見れば分かる通り、国の法律は、ビジネスに大きな提供力を及ぼします。これまでになかった新たな市場が生まれるほか、一瞬で事業継続ができなくなることもあるでしょう、法律は特に重視しておくべきポイントです。

また、地球の環境汚染が社会問題になってからは、さまざまな企業がCSR活動などで環境問題に立ち向かうようになりました。コトラーは「マーケティング3.0」を「価値主導」の時代としており、企業の社会的な貢献などがSNSで拡散され、サービスやプロダクトが売れるようになると予測しています。環境問題もこれから大きなトレンドになるでしょう。

PESTをPESTELに拡張することで、より高度な外部環境分析を行うことができます。

 

 

PEST分析に事業環境マップを取り入れてより強固な外部分析を

フレームワーク上でマクロ環境を分析できるのがPEST、PESTEL分析の魅力ですが、実は外部環境はこれらの要素だけではありません。競合他社からの圧力もありますし、水面下で市場が変化している可能性もあります。そこで網羅しているフレームワークが「事業環境マップ」です。

事業環境マップには「市場」と「産業」「トレンド」「マクロ経済」の4種類を記載する欄があります。「トレンド」「マクロ経済」の2種類は先述したようにPESTEL分析の内容となります。そこに「市場」と「産業」の変化を付け加えることで、より多角的に外部環境の変化を見極めながらビジネスを展開できるのが魅力です。

またマーケティングなどの知識がある方はピンとくるでしょうが、前半の「市場」と「産業」はマイケル・ポーター氏が提唱した5つの競争要因である「5forces」と関連性があります。つまり外部環境マップはPESTEL分析と5forcesの両方のフレームワークを網羅しているのです。

 

 

BizMakeでは2020年、2021年のPEST分析も公開中

BizMakeでは毎年、最新のPEST分析を公開しています。特に2020年、2021年は「新型コロナウイルス」という外部環境によって、ビジネスのあり方が大きく変わった年でした。今まで以上にPESTに気を配った方も多かったことでしょう。以下の記事で4つの項目に分けて紹介していますので、ぜひ最新のPESTの状況を知りたい方はお気軽にご覧ください。

 

PEST、PESTEL分析だけでは、競合他社やステークホルダーなどとの関係性は明らかになりません。ビジネスを進めるうえで、分析不足になってしまう可能性がありますので、事業環境マップにまとめることをおすすめします。するとより柔軟に外部環境の変化についていけるようになるでしょう。

BizMakeでは、どなたでも無料でPEST分析、事業環境マップを使用できます。マーケティング担当者の方や、自社の商材が現在、どのような外部環境にいるのかを可視化したい方はぜひご利用ください。

 

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