リーンスタートアップとは? 言葉の意味や基本的な知識を徹底解説【時代遅れ?】

ビジネスのトレンドは「会社の成長に貢献する」から「自分のスキルやノウハウを高める」という考えに変わっています。フリーランスや起業家という働き方が増えるにつれて注目が集まっているのが「リーンスタートアップ」という言葉。「聞いたことはあるけど、実はよく分かっていない」という方のために、今回は「リーンスタートアップ」についてご紹介します。

 

 

そもそも「リーンスタートアップ」の意味とは

「リーン」と「スタートアップ」を掛け合わせた言葉である「リーンスタートアップ」とはそもそもどういう意味なのでしょうか。2語の意味から紐解いていきましょう。

 

1. リーンとは(Lean)

リーン(lean)を日本語に訳すと「痩せ型の」とか「脂身のない」という意味になります。これらがビジネスにおいてどのような意味に置き換わるのかを説明するために、現・ヒュンダイ・モーター・アメリカのCEOであるジョン・クラフチック氏のリーンスタートアップに関する論文を参考にしましょう。

彼は「トヨタ生産方式」を「リーン生産方式」と呼んでいます・トヨタ生産方式とはいわば「無駄な作業や工程を排除し効率性にフォーカスした方法」のこと。「各工程が少ない分量の作業に徹底すること」と「機械が異常を察知して自動で停止することによる問題の見える化」が主な特徴です。この2つを軸に、量よりも質に焦点を当てることで優良製品だけを効率的に生み出せる生産ラインを完成させました。

つまりリーンとは生産効率にフォーカスすることで構築された「無駄の排除」という意味になります。

 

2. スタートアップとは(Start Up)

近年、頻繁に取り沙汰されている「スタートアップ」。ベンチャーとよく混同されがちですが、はっきりとした違いがあります。新規事業を総称した言葉であるベンチャーに比べて、スタートアップはローンチ後、短期間で価値があるモデルを作成し、IPOやバイアウトなどのエグジット戦略によって高い報酬を狙う手法を指す言葉です。だからスタートアップには「イノベーション」が付随します。過去に見られなかった革新的なサービスやプロダクトを武器としていることが最低条件だといえるでしょう。

 

3. リーンスタートアップとは(Lean Start Up)

つまりリーンスタートアップとは「無駄を徹底的に排除し効率性に焦点を当てて完成した、前例の無い革新的なサービスやプロダクト」ということ。この概要をしっかりと押さえておかなければ、どのフレームワークを試したとしても、しっくりきません。まずは言葉の意味を知っておきましょう。

 

 

リーンスタートアップ期に設定すべきこと

ビジネスアイディアもないままリーンスタートアップを始めてしまってはいけません。リーンスタートアップは0から1を生み出すツールでは無いことを覚えておきましょう。0から1を創るのはクリエイターの思考です。その「1」を100にも200にも膨らませていくのがマネジメントの思考であり、リーンスタートアップの役目。つまりリーンスタートアップは1つのビジネスアイディアを事業化できるレベルまで膨らませるために使われます。

創り出した革新的なアイディアをそのまま事業化して進めてしまうのは、ハイリスク過ぎますよね。顧客のニーズだって分からないし、自社が参入すべきマーケットも判然としない。コストやチャネルについても、適切に設定できません。自己満足でサービスやプロダクトをローンチすると、ほとんど失敗します。だからこそ計画を練って事業化するために「リーンスタートアップ」があるのです。

 

 

リーンスタートアップの6ステップのプロセスとは

リーンスタートアップのビジネスの本質は先述した通り「顧客」にあります。顧客が求めているものを提供することでビジネスを進めていきます。では具体的にどのようなプロセスでマーケティングをする必要があるのでしょうか。5ステップで解説しましょう。

 

1.仮説をつくる

まず仮説を立てましょう。ビジネスアイディアをもとに顧客にインタビュー・アンケートをしながら「サービスやプロダクトが顧客の求めていることを満たすか」についての仮説を立てます。

 

2.MVPを開発する

仮説検証のためのMVPを作ります。MVPとは「必要最小限のプロダクト」です。最初からコストをかけてフル機能を搭載したサービスやプロダクトを作ると、顧客のニーズとかけ離れていた際に無駄な費用になってしまいます。ですので、仮説を検証する際はMVPを作りましょう。

 

3.仮説の計測

1で立てた仮説について検証するためにデータを収集しましょう。アンケートやインタビューなどで顧客の生の声を収集するのが必要です。

 

4.検証で得たデータからの学習

3で収集したデータを生かして、学習をしましょう。この際に「変えるべきこと」「変えてはいけないこと」などを決定していきます。

 

5.意思決定

4で得た学びを生かして、より顧客に寄り添ったサービス・プロダクトを作っていきます。ですが、はじめからフル機能にしてしまうのは危険です。必ず自信を持ってリリースできるようになってから、本機能を開発しましょう。

また仮説検証の結果「商材自体が求められなかった」という可能性もあります。この際は、計画を変更するか、いったん撤退をしなくてはいけません。

 

 

リーンスタートアップ時に有用なフレームワーク

最後にリーンスタートアップ時に役に立つフレームワークを2つご紹介します。なお、両方ともWeb上で簡単に作成できますので、ぜひお試しください。

 

1. リーンキャンバス(Lean Canvas)

事業をローンチする前には仮説を立てる必要があります。「ターゲットは誰か」「マーケットはどこか」「コストはどのくらいか」「利益はどれほどなのか」などを考えなければいけません。そこで作成すべきなのがビジネスモデルであり、使うべきなのがビジネスモデルキャンバスです。

リーンキャンバスとはいわば“ビジネスモデルキャンバスのスタートアップ版”。事業計画書のようなモノです。9つの要素から自社のビジネスモデルを俯瞰的に分析することで「やるべきこと」が明確になるうえ、ステークホルダーにも共有しやすくなります。

 

2. MVPキャンバスMVP Canvas

仮説を検証せずに、たくさんのリソースを費やして商材をつくるのはリスクが高すぎます。見切り発車的にローンチしても顧客のニーズに合致していないがために、無駄なコストだけが掛かってしまうケースもあるのです。

それを解消してくれるのがMVP。MVPとは「Minimum Viable product」の略で「必要最小限の価値を搭載する商材」のことを指します。「プロトタイプ」や「デモ動画」などが代表的なMVP。いわばリーンキャンバスで立てた仮説を検証するためのツールです。そしてMVPを簡単に作成できるのがMVPキャンバスです。各項目を埋めるだけで、最適なMVPの形や学べることなどが分かります。

より、リーンスタートアップについて役立つ手法を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

 

 

リーンスタートアップは時代遅れなのか?

2000年代、スタートアップやベンチャーが増えていくなかでリーンスタートアップは非常に人気が高まった手法です。しかし一方で2020年現在「時代遅れなのではないか」ともいわれています。その理由についても解説をしましょう。

 

SNSによって顧客離れが早まっている

TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSはここ10年でどんどんアクティブユーザーを増やしています。そんななかSNSの投稿1つでサービスやプロダクトの評判が拡散し、あっという間に企業の価値が下がってしまうようになりました。MVPは当然100%、プロダクトやサービスの魅力を打ち出せるものではありません。効果検証をしている間に評判が下がってしまい、信頼を取り返せないのではないか、という批判的な視線もあります。

 

ピボットによって信頼が失われる

リーンスタートアップにとってピボットは必要なものです。顧客の意見を取り入れながら持続的に変化をしなければいけません。しかしあまりに変化をしてしまうと顧客から「基盤が定まっていない」「地に足がついていないサービスだ」という意見も出てしまいます。その結果、信頼されなくなるという声もあります。

 

「技術力」がイノベーションのカギになってきた

近年ではテクノロジーが市民権を得ました。あらゆる企業が開発コストさえ割けば技術力でイノベーションを起こせる時代です。しかしテクノロジーを取り入れると、その分コストがかかってしまいます。リーンスタートアップのように金銭的なコストを最小限にするのではなく、むしろスタート段階でお金を使って技術力を打ち出したほうがいい、という考えもあります。

 

 

「顧客本位」は変わらない

リーンスタートアップは2000年代に始まった経営の手法です。近年では時代遅れといわれているとはいえ「顧客の声を重視する」「顧客のジョブを大切にする」というビジネスの基本は変わりません。常にアップデートをしながら顧客が求めていることを満たしていきましょう。

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