
ジョブマップとは?顧客の購買行動のメカニズムを洗い出し
目次
ジョブマップの目的
ビジネスモデルを決定するうえで「ニーズ」を正しくキャッチすることは欠かせません。顧客の利益になる機能でなければ、サービスやプロダクトはすぐに廃れるか、方向転換を余儀なくされてしまいます。
例えば空前の大ヒットとなり社会現象を巻き起こしたスマホゲームの「ポケモンGO」。はじめは若年層をターゲットにして開発されたはずでしょう。しかし現在のメインユーザーは50〜60代です。中高生は離れてしまいましたが、逆に子や孫からゲームの存在を教わった高齢者が「引きこもり対策」として利用しています。
このようにニーズは制作者ですら予想がつかない方向にシフトする可能性があります。そのため常に市場を見つめてすべての顧客層の現状を把握し「最も満たされていないニーズ」または「過剰に満たされているニーズ」を見つけなければいけません。
そのために「ジョブマップ」は大きな成果を発揮します。ニーズをキャッチし、顧客の動向に従って、充実させるべきコンテンツやデリートすべき機能などを考えられるので、自社の事業がブラッシュアップされるのです。
ただし、ジョブマップに書き込むべき各項目について、理解する必要があります。まだ作成したことがなく「なにを書き込めばいいのか分からない」という方のために、作成方法や記入の順序、注意点を記載しますので、ぜひご覧になってください。
ジョブマップの使い方
まずは、最上部の2つの窓を埋めていきましょう。ターゲットとなる市場を「中核となる機能的ジョブ」と「ジョブ実行者」によって定義します。
例えば音楽市場においては中核となる機能的ジョブは「音楽を楽しむこと」です。ジョブ実行者は「音楽ファン」となります。また、マーケティングオートメーションの市場ではジョブが「顧客を獲得すること」で実行者は「マーケッター」と設定することが可能です。
その後は下部の窓を埋めていきましょう。「中核的ジョブ」は「感情的」「社会的」「関連する」「台頭する」の、4つのジョブとして細分化されます。ここでは「ジョブの実行者」の視点に立って、ジョブマップを記載しなくてはいけません。
1. 感情的なジョブEmotional Jobs
中核となる機能的なジョブの履行中に、ジョブ実行者が個人的に得たい感情、また反対に欲しくない感情を記載します。例えば音楽市場における感情的なジョブは「ワクワクする」や「高揚する」などが考えられます。
ここで気をつけたいのは負の感情だからといって「感じたくない」とは限らないということ。「失恋したから泣いてスッキリしたい」という場合には「悲しい気持ちになる」というニーズも考えられます。顧客になりきって考えましょう。
2. 社会的なジョブSociety Jobs
中核となる機能的なジョブを実行するにあたって、ジョブ実行者が「第三者から認められたいこと」また「認められたくないこと」を書いていきます。
例えば音楽市場における社会的なジョブは「音楽好きだと思われたい」や、「センスが良いと思われたい」「異性にモテたい」などが挙がります。反対に「ダサいと思われること」は防ぎたいでしょう。
3. 関連するジョブRelated Jobs
中核となる機能的なジョブに関連して、ジョブの実行者が日常的に履行する可能性のあるジョブを書き入れてください。
音楽市場の場合、実行者である「音楽ファン」は「新たなアーティストの捜索」や「未知の楽曲の発掘」をするでしょう。ライブ日程を調べたり、音楽フェスに参加するために友人や恋人と予定を打ち合わせることも考えられます。
4. 台頭するジョブAlternative Jobs
新たなトレンド、技術、規制などに関してジョブの実行者が新たに関心をもつ可能性がある「機能的ジョブ」を考えます。
引き続き音楽市場を例に出すと「アーティストが着用するアパレルブランドの人気が高まる」可能性があるでしょう。また、ファンは音楽だけではなく「美術などへの関心」が現れるかもしれません。「自分で楽器を買って好きなアーティストの曲を練習する」可能性もあります。
個人・法人問わず「中核となる機能的ジョブ」はステップバイステップのプロセスに分解することができます。「顧客」と「企業」の両方についてジョブを完了し、改善するまでの経過を分析することで、ビジネスモデルを適宜最適化できるでしょう。
ジョブ理論の提唱者でイノベーションビジネスの権威・クレイトン・クリステンセン教授は「それは進化(プログレス)であり、現在の状態から望ましい将来の状態を進もうとする私たち人間の本質的な欲求だ」と説いています。
では早速、プロセスを8つの項目に分けてご紹介していきましょう。
引き続き音楽業界になぞらえてご説明します。顧客のジョブを「ライブを楽しむ」。企業側のジョブを「顧客を獲得する」と設定した場合、果たしてプロセスはどのようになるのでしょうか。
1. 計画するDefine
ジョブ全体を上手く成し遂げるために、事前に計画、定義、選択、決定しなければならないことを定めます。
ライブで楽しみたい音楽ファンは「どのアーティストのライブに行くか」を決めるでしょう。企業はそのニーズに対して「市場機会を特定」する必要があります。
2. 収集するLocate
ジョブ全体を上手く成し遂げるために、事前に収集すべき情報を定めます。調査するためにアクセスしなければならない事象や場所を記載しましょう。
音楽ファンはライブスケジュールを確認します。企業側はライブに訪れる可能性がある見込み顧客の情報を収集するでしょう。
3. 準備するPrepare
ジョブ全体をスムーズに成し遂げるために、事前に準備しセットアップ、検査、体系付けるべき要素です。
音楽ファンは「ライブ前にチケットを購入」をするでしょう。企業側はチケットを流通させるため、また広告を打つためのチャネルを準備します。
4. 確認するConfirm
ジョブを実行するタイミングで起きうるトラブルに備えて、事前に確認・検証したり、優先付けしなければならないことは何かを考えます。
ライブチケットを買ったファンは、当日のライブスケジュールを確認して移動手段や集合時間を決めるでしょう。一方、企業側は実行までの計画の最終確認に入ります。
5. 開始するExecute
ジョブの実行フェーズにおいて、トラブルなく目的を開始できるように履行や運営、取引しなければならないことについて考えましょう。
顧客は不便なくライブ会場に到着することを目指しますし、企業側は実行段階に向けて精査してきた計画を実行することがミッションとなります。
6. 監視するMonitor
そのジョブを上手く成し遂げるためにはスタートした後も監視し、改善点があったらチェックして自己評価をしながら動向を追跡する必要があります。
ファンはライブに一度参加したからといって「ライブを楽しむ」というミッションが終わったわけではありません。さらなる楽しみを得るためにアーティストや他のファンを観察します。企業はそんな顧客の動向を監視する必要があるのです。
7. 修正するModify
そのジョブに向かってスムーズに進んでいくための修正点や変更点を記載します。ゴールに向かって調整、更新、維持しなければいけないならないことを定めましょう。
音楽ファンであれば、もっとライブを楽しむために、他の観客の盛り上がり方を真似るでしょうし、企業は顧客のニーズや動きの変化に応じて、逐一計画を修正しなければいけません。
8. 終了するConclude
いよいよ仕上げです。そのジョブを上手くクローズするため、また蓄積・保存するためにするべきことを記載しましょう。ジョブには明確な完了フェーズがない場合もあります。プロダクトやサービスのアップデート次第では長く利用してもらえるのです。
音楽ファンはライブに継続的にいき、その都度ライブの評価をするでしょう。企業側も毎回のライブ状況を分析して、アーティストのクオリティを保護します。また今後の動向や仕掛けについて新たな計画を練らなくてはいけません。
ジョブマップを使うことで
このようにジョブマップは顧客と企業のジョブをプロセスを用いて分析して、ニーズを探ります。表面的ではなく「背後に隠れた顧客ニーズ」を明らかにすることで、既存サービスのままでは満たされない要素がわかるでしょう。また過剰に満たされているジョブも把握できるので、サービスやプロダクトをブラッシュアップできます。すると当然、顧客にも継続して使われるようになるのです。
