【10分でわかる】デザイン思考とは?概要や欠点、役立つフレームワークをご紹介

サービスやプロダクトが世の中に溢れ、他社との差別化が図りにくくなっている現代「デザイン」という言葉が求められるようになっています。なかでも「デザイン思考(デザインシンキング)」というワードはさまざまなメディアで取りざたされ、ユーザーのニーズを満たしながらも、差別化を図るうえで欠かせない思考法として、注目を浴びています。

今回はデザイン思考の概要重視されるようになった背景欠点役立つフレームワークなどを簡単にご紹介します。

 

 

デザインとは?

まずはデザイン思考というマインドセットを説明するために「デザイン」の定義を紹介します。デザイン(design)の語源はラテン語の「designare」です。designareの意味は「計画をカタチにする」ということになります。この言葉から派生して工業デザイナーのチャールズ&レイ・イームズはデザインについて「ある目的を達成するために、必要な要素を組み立てること」といいました。

まずはどんな目的を設定するのか、その目的を解決するためにどんな手段やプロセスを使うのかという一連の流れを「デザイン」といいます。デザインについての詳しい記事は以下を参考にしてみてください。

ビジネスにおけるデザインとは?意味や定義、重要性をご紹介

 

ではデザインを目指すマインドセットである「デザイン思考」とはいったいどのような考えを指すのでしょうか。

 

 

デザイン思考とは?

デザイン思考を分かりやすく一言で言い表すなら「ユーザーの感情を設計するためのクリエイティブな思考」です。

おそらく多くの方が「デザイン」という言葉が含まれていることに疑問を感じるでしょう。デザインは一般的に表面のカラーリングや装飾をつくるものだと思われているからです。しかし「デザイン」は本来、表面的なものを表す言葉ではありません。むしろ裏方の「設計」という意味合いが強い裏方的な言葉になります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

ではどうして現在、デザイン思考が求められているのでしょうか。その理由を解説するために、ビジネストレンドの変化の流れをご紹介しましょう。

 

「ロジカル思考」と「アート思考」との違い

デザイン思考の対義語としては「ロジカル思考」や「アート思考」があります。

デザイン思考が「クリエイティブな思考」で考えるものである反面、ロジカル思考は論理性を大事にするマインドセットです。ただしロジカルシンキングもデザインシンキングもユーザーの体験を主として戦略や4Pを考えるものです。しかしロジカルシンキングはユーザーニーズが多様化し、同じ市場にさまざまな商材が並ぶようになった現代において限界があります。論理を追求すると、どの企業の商材も同じになってしまうのです。すると最終的には「価格」で勝負するしかなくなり、コモディティ化に巻き込まれてしまいます。

「アート思考」とはデザイン思考やロジカル思考とは違って、事業担当者や企業側のマインドを主として考えるマインドセットです。ビジネスをするうえでは不向きな思考法ともいえますが、新規事業を考えるうえで思考の限界を突破する発想をしたいときなどには役立ちます。

 

 

デザイン思考が求められるようになった背景

現在、私たちの周りにはサービス・プロダクト問わず、モノが溢れかえっていますよね。例えば洗濯機はドラム式や節水、省スペース、洗濯槽の防汚性など、豊富なメーカーやタイプから自分のニーズにフィットするひと品を選べます。

しかし1950年代に登場した当時は「三種の神器」といわれ、開発されただけでも鮮烈で感動的でした。洗濯板を使わなくても洗濯ができるようになり、ユーザーは興奮して飛びついていたのです。それから約50年間は同じような状況が続きます。新しいプロダクトがリリースされるだけでユーザーはすぐに購入し、ヒットしました。

しかしテクノロジーの進化によって、こうした常識は崩れていきました。メーカーが目新しい商材を開発してリリースしたとしても、競合がすぐに似た商品をリリースするようになります。サービスも同じです。またiPhoneやPC、タブレットなどができるとともに、ユーザーは即時的に市場の状況を把握できるようになりました。これまでは、テレビCMやチラシなどのオフライン上でしか、見つけられなかった情報をオンラインで自ら探し出せるようになったのです。

ではプロダクトで勝負していた企業はどうなったのか。「価格」で戦うしかなくなったのです。機能を増やして価格を維持するか、現状のまま価格を下げるか、どちらかの選択を迫られ、企業はだんだんとジリ貧になっていきました。またSNSの発達により、ユーザーの願望にそぐわない製品を市場に出してしまうとすぐに酷評を浴びてしまうようになりました。「作れば売れる」時代の終わりです。

歴史をもとに、現代の企業が最も重視しているのがユーザーのニーズです。またターゲットをしっかりと定めることも重要になっています。「つくれば売れる」という時代であれば幅広い顧客層が買ってくれました。しかし現代では膨大な種類の洗濯機がありますので、ユーザーは選び放題です。「20代の一人暮らしの男性」が買う洗濯機と「50代の主婦が買う洗濯機」は違います。設定したユーザーのニーズを満たせるように“設計”する必要が生まれたのです。

つまり「誰のニーズに当てはまる商材をつくるのか」「どのような価値を商材に持たせるのか」を考える必要があります。だからこそ顧客の心理を設計し、実現するプロセスを表す言葉である「デザイン思考」が重要なのです。では具体的にどのようなプロセスを組み立てるべきなのでしょうか。

 

 

デザイン思考を実現させるためのプロセス

デザイン思考で事業を進めるためのプロセスには、大きく分けて5段階あります。では順番にご紹介しましょう。

 

1. 共感Empathize

まずはチームを立ち上げて、ユーザーのニーズを観察します。自身やチームの希望を重視するのではなく、必ず“ユーザー視点”で悩みや願望に共感するところから始めましょう。頭では分かっていても論理的に行動に移せないという方は「ジョブ理論」を参考にすることをおすすめします。

顧客の願望や悩みの解決を「ジョブ」、それを解決するために企業のサービスやプロダクトを用いることを「ハイア」としてニーズやインサイトをつかむための理論です。またジョブ理論をもとに行動に着目したフレームワークが「ジョブマップ」になります。

 

2. 定義Define

共感のフェーズで集めた情報をもとにユーザーのニーズを定義付けます。視点を常に顧客に置いて、ニーズからかけ離れないように気を付けましょう。先述したジョブマップでは最終的にニーズを再定義する部分までを補完しておりますので「定義」の段階でも用いることができます。共感と定義の段階で仮説のレベルを高めておくことで、検証の際のアウトプットのレベルも高まります。

 

3. 創造Ideate

ユーザーのニーズに視点を置いたうえで、チームでアイディアを出し合ってイノベーティブなビジネスモデルを生み出していきます。ここではブレインストーミングなどの手法を用いてアイディアを量産することが重要です。実現可能性などを意識してしまうと、いつの間にかありきたりなビジネスモデルになってしまう可能性もあります。ブレインストーミングの趣旨でもありますが、基本的にはすべてのアイディアについて肯定的な姿勢で臨みましょう。

 

4. 仮説Prototype

低コストで効率よく仮説と検証をするために、ビジネスモデルを軸にMVPをつくりましょう。MVPによって、どのようなリアクションを得るのか、そのためにはどのような機能を搭載すべきなのか、を精査しなければいけません。

 

5. 検証Test

プロトタイプをユーザーに提供して検証を進めていきます。顧客の属性でセグメント化をしてデータを取得し、商材の本リリースに向けてブラッシュアップをしていきましょう。さまざまなデータが入ってきますが、優先度を順位付けすることが大切です。

ここで重要なのが最初のフェーズです。常に顧客目線でサービスやプロダクトをつくらないといけないので、スタート地点はもちろん顧客ベースで進めなければいけません。

また最後の「仮説と検証を続けること」も重要です。顧客のニーズは常に移り変わるものであり、最新の情報を取り入れ続け、その都度ブラッシュアップすることで、長く顧客から使ってもらえるようなサービス、プロダクトの構築に近づきます。

 

 

デザイン思考の欠点とは

このプロセスを進めるうえで、デザイン思考にはいくつかの欠点(間違ってしまいがちなこと)があります

事業担当者のバイアスがかかってしまう

例えば「バイアスがかかってしまうこと」です。顧客のニーズを最優先しなくてはいけないのに、事業担当者が「こっちのほうが売れるだろう」と決めつけてしまうことがあります。フラットな状態で情報を収集しなければいけません。

リリースした瞬間にブラッシュアップをやめてしまう

また「一度リリースしたあと。安心してしまう」ことも間違ってしまうポイントです。顧客から使ってもらえる商材をつくったあとも、ブラッシュアップし続けましょう。変化するニーズを見落としてはいけません。

顧客のニーズを無視してしまう可能性がある

さらに「共感→定義のフェーズで顧客のニーズをキャッチできていないこと」も、失敗につながる危険なポイントでしょう「Empathize(共感)」の段階において個人の想像(チームの主観)でユーザーニーズを導き出してサイクルを回してしまわないように気を付けるべきです。顧客が抱えるジョブやインサイトを探るためにも、先述した「ジョブ理論」を活用しながら進めることがおすすめです。実際にインタビューなどで市場調査をしてニーズを把握したうえで仮説を構築することで、検証フェーズでのアウトプットのレベルが高まります。

 

 

デザイン思考で事業を進める際に役立つフレームワーク

では最後に、デザイン思考を用いて事業を構築するうえで役立つフレームワークをご紹介します。フレームワークを用いて可視化することでチーム内に共有しやすくなるのがメリットです。またアウトプットして可視化することでプロジェクトの方向性を把握しやすくなります。

 

1. ジョブマップ

ジョブ理論を用いて、顧客の願望や困っていることを導き出し、顧客が満足してまた使ってくれるためのプロセスを可視化してくれるツールです。インサイトやニーズを可視化するのに役立ちます。

 

2. 共感マップ(エンパシーマップ)

顧客が何を聞いて、何を見て、どのようなことを考え、どんな行動に移すのかを可視化してくれるフレームワークです。

 

3. ビジネスモデルキャンバス

顧客のセグメントや提供する価値などを9つの項目で可視化できるフレームワークです。チャネルやコスト、リソースなど、ビジネスや商材全体の方向性を簡潔にまとめられます。

 

4. MVPキャンバス

MVPとは必要最小限の価値だけを搭載した商材です。最初から本格的な機能を搭載したサービスやプロダクトをつくってしまうのはリスキーです。無駄なコストをカットするためにも、最初はMVPキャンバスを用いて必要最小限の機能だけを搭載して商材をつくりましょう。

 

5. 事業環境マップ

自身の商材を取り巻く外部環境を具体的にまとめられます。市場と産業、トレンド、マクロ経済の4つの状況の変化をフレームワーク上でまとめられますので、リリースしたあとの環境の変化も分析できます。

作れば売れるという時代が終わり、つくって終わりではいずれ苦境に立たされるからこそ、デザイン思考を取り入れながら、常に顧客ファーストでビジネスを展開していきましょう。役立つフレームワークに関しては、BizMakeのサイトからWeb上で簡単に作成できますので、お気軽にご利用ください。

 

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