
カスタマージャーニーとは?5つの事例と11の行動モデルで完全解説(テンプレート付)
カスタマージャーニーを考えることは、今やすべてのマーケターにとって欠かせません。施策を打つうえで、顧客の行動について仮説を立ててアウトプットしたうえで、自社のマーケティング活動を定める必要があります。
ただし想像だけでやみくもに描いたところで、現実味のない計画になってしまいます。今回はカスタマージャーニーの考え方や顧客の購買行動モデルの考え方、また実際の企業事例、BtoCとBtoBの違い、カスタマージャーニーマップの作り方などを完全読解します。
これからカスタマージャーニーを作る方はもちろん、現状のカスタマージャーニーを見直したい方などもぜひ参考にしてみてください。
目次
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーは直訳すると「顧客の旅」となります。顧客が商材の存在を知って興味を抱き、競合の存在も知って、比較したうえで購買し、使い続けるという流れを記します。この購買に至るまでの行動を「購買行動モデル」といいます。購買行動モデルについては後述しましょう。
なぜカスタマージャーニーが使われるようになったのか
カスタマージャーニーは近年になってかなり広く使われるようになった考え方です。人気が高まった背景には、さまざまな要因があります。1つずつ、順にご紹介しましょう。
顧客の選択肢の幅が広がった
以前であれば市場は大手の企業によって画一化されていたといえます。テクノロジーや生産技術などを大手が独占し、新しい商材や画期的な商材は一部の企業だけが独占していました。よって顧客も大手のプロダクトやサービスばかりを利用していたのです。今のように購買前に慎重に比較検討をするという文化はありませんでした。
しかしそれからテクノロジーが進化し、誰でもデータを駆使してマーケティングができるようになり、市場は民主化されました。新しい企業が次々に生まれ、VUCAといわれるほど複雑になったのです。いまやスタートアップ企業が画期的な商材を武器に大手を脅かすことも珍しくありません。こうした流れのなか、顧客は自分の求めていることを前提としたうえで比較・検討をするようになりました。以前よりも顧客の行動を重視しなくてはいけません。
顧客行動の多様化
合わせてオンラインでのサービスが普及した結果、顧客の行動が多様化しているのもカスタマージャーニーが広まった要因になります。今や1つの商材を買ううえで、顧客の行動はさまざまです。例えば新しい電気ケトルを買うとしましょう。実際に家電量販店にいって選ぶ方もいると思います。ECサイトで買う人もいるでしょう。即座に購買を決める場合もありますし、買う前に評判を検索する方やSNSで情報収集をする方などもいると思います。
顧客の行動が多様化した現在、まさにカスタマージャーニーを考えて、それぞれにアプローチしなければ顧客とのコミュニケーションも取れなくなってしまったのです。
企業側が幅広くマーケティング活動できるようになった
企業側のマーケティング戦略も自由度が高まりました。以前はテレビやラジオ、新聞などのマス向けのメディアが広告を打つ主な場所でしたが、今やインターネット広告が上回っています。インターネットやSNSでの広告によってターゲットを細分化したうえで顧客にアプローチできることで、カスタマージャーニーに忠実にアプローチができるようになったのです。よりマーケティングが重要になっています。
カスタマージャーニーを考える前に「顧客」を考える
カスタマージャーニーを考えるうえで犯してしまいがちなミスに「顧客像を考えていなかった」という問題があります。「顧客」のことを知らなければ「顧客の旅」も分かりません。結果的に独りよがりのマーケティング計画になってしまい、思ったように購買まで結び付けられなかった、という可能性もあります。
自社のプロダクトやサービスを誰に届けているのか、どんな方が使って、どのような行動をするのかをきちんと定義しましょう。そのうえで以下の2つのフレームワークを使うことをおすすめします。
「ジョブ理論」で顧客が求めていることを知る
ジョブ理論とは顧客が求めている願望、不足していること、済まさなければいけない用事などを「ジョブ(仕事)」として、顧客の本質的なニーズを探るためのフレームワークです。ジョブ理論によって、まずは「顧客が求めていること」を知ることから始めましょう。以下の記事ではジョブ理論について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
既存顧客や見込み顧客にインタビューをする
ジョブ理論を組み立てるうえでも想像で考えてはいけません。新事業の場合は見込みの顧客、また既存事業の場合は顧客にインタビューをしましょう。「ジョブ」について正確に捉えたうえで、フレームワークを組み立てる必要があります。ゆえに客観的な情報を得ることが重要になります。質問事項に関しては以下の記事で解説しています。
ペルソナを定義する
ジョブ理論によって「顧客が求めていること」を把握した後は「ペルソナ」の構築に移ります。ペルソナとは商材を届けるべき顧客像のことであり、ターゲットをより深くしたものだとお考えください。
マーケィングをするうえでペルソナを定義することは必要不可欠です。ただしよくあるミスは「年齢」や「職業」「休日の過ごし方」などの動態にしぼって考えてしまうことになります。
大事なのはこうした表面的な顧客像ではありません。ペルソナが何を求めているかが重要です。ここではジョブ理論で定義したニーズの輪郭をより濃くするためにペルソナを構築するとお考えください。
そこで利用できるのがペルソナキャンバスです。ペルソナキャンバスには「ジョブ」や「ジョブそのものが生まれた理由」などを記載する欄がいくつかあります。そのうえで先ほどの年齢や職業といったプロフィール情報を書き記すのです。詳しいペルソナの作ち方は以下の記事をご覧ください。
カスタマージャーニーについて考える際にはカスタマージャーニーマップを
カスタマージャーニーについて計画を立てる際には「カスタマージャーニーマップ」というフレームワークを使います。カスタマージャーニーマップには「顧客の行動フェーズ」「タッチポイント」「打ち手」などを書いていきます。
カスタマージャーニーマップを作る際に最も重要なのは顧客の行動を可視化することです。想像だけでつくってしまってはいけません。想像と違った動きだった場合に、自社の施策が見当違いなものになってしまいます。だからこそ、あらかじめ構築したジョブやペルソナを意識しましょう。
この顧客の行動については「購買行動モデル」という言葉でも表されます。有名なのはAIDAやAIDMA、AISASなどでしょう。しかしそれらのフレームワークが作られたのは数十年前のことです。顧客の行動は多様化しています。SNSと組み合わせて使うSIPSや、コンテンツと組み合わせて使うDECAXなどの、新しいモデルも生まれており、必ず自社のマーケティング施策を踏まえたうえで当てはまるものを使いましょう。
主な購買行動モデル
マス向けのメディアが主流だったころの購買行動モデル
・AIDA(アイダ)
・AIDMA(アイドマ)
・AIDCA(アイドカ・アイダカ)
・AIDCAS(アイドカス)
インターネット時代の購買行動モデル
・AISAS(アイサス)
・AISCEAS(アイシーズ)
SNS時代の購買行動モデル
・VISAS(ヴィサス)
・SIPS(シップス)
コンテンツ発見型の購買行動モデル
・DECAX(デキャックス)
・Dual AISAS(デュアル・アイサス)
接続性の時代における購買行動モデル
・5A理論(ファイブエー)
購買行動モデルは以下の記事で11種類にわたって紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
カスタマージャーニーの事例
では実際にカスタマージャーニーマップを作成するにあたって、事例をご紹介しましょう。ここではBtoBで人事・労務のサポートツールを提供しているSmart HRについてご紹介します。給与計算・振込、年末調整の手続きなど、社内用ツールは導入までのハードルが高いものです。
そのハードルをどのように解消し、どのように顧客を集め、興味関心に応えているのでしょうか。
認知
Smart HRは社員数が多い企業ほど響きます。なかでも人事。労務部や、経営企画部などがメインターゲットです。Smart HRの特徴的な集客戦略はたくさんの企業とのアライアンスです。間口を広くとっており、他社の商材とのバンドル化などで認知を広げています。また展示会などにも積極的に参加しており、認知活動に力を注いでいます。
リサーチ
気になることがあれば、顧客はリサーチに移ります。Smart HRはそんな顧客の興味関心に応えるべく、膨大な量のホワイトペーパーを用意。気になる情報を自由に収集できる環境を整えています。
比較検討
BtoB商材の場合は窓口担当者や決裁者などは「自分だけの責任ではない」というバイアスが生じます。対面でのセールスなどを通して決裁者にまでコストパフォーマンスを説明することで、まずは社内のハードルを下げています。ここでの特徴は「月ごと」や「年ごと」など、あらゆる決済手段を選べることです。
購入
いざ購入フェーズに移った際にはキャッシュフローに関する問題なども出ます。他部署に説明する必要もあるでしょう。お試しでの導入もしやすいのが特徴であり、年末調整などの人事・労務が忙しい時期だけお試しで1カ月導入する企業もあるでしょう。
購入後
購入後はカスタマーサクセスに全力を注ぎます。Smart HRは、導入すると月々の給料振り込みや振り込み用紙のPDF送付、入社時のオリエンに関してもすべてツールで簡単にできますので、利便性による価値を感じられるでしょう。
このように、カスタマージャーニーマップにアウトプットすることで、非常にやるべきことが明確になります。先述した通り、現在はデータから顧客の動きを分析してからマーケティング施策をスピーディーに打つことが成功のカギです。
事例について詳しく知りたい方は以下の記事もぜひご覧ください。
BtoBのカスタマージャーニーはより細かい分析が必要になる
BtoBの場合、BtoCよりも複雑なカスタマージャーニーが必要になります。先ほどのSmart HRの例を見ていただくと分かり通り、会社単位ではなく、窓口担当者や決済担当者などの個人単位での視点も必要になるのが特徴です。
例えば「認知した営業担当者が決済担当者に話を持ち出す際のストレスを緩和するためには?」「社長の承認が下りるためには?」会社全体として長期的な視野で利益が出ることを分かってもらうためには?」といったミクロの視点も考えましょう。
BtoBのカスタマージャーニーの作り方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
カスタマージャーニーは現在のマーケターに必要不可欠な視点
今回はカスタマージャーニーの作り方についてご紹介しました。顧客の行動が多様化するとともに、企業がより角度の高い広告を打てるようになり、またデータの収集も容易になっています。現在、カスタマージャーニーはマーケティング施策をする前に必ずといっていいほど考えるべきものです。
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