バランススコアカード(BSC)とは?考える方法を流れで紹介(テンプレート付)

経営戦略の評価は、一筋縄ではいかないものです。一般的な手法としては利益率などを見るという企業も多いと思います。もちろん利益は大切ですが、企業の成長を表す指標とは決して利益だけではありません。

バランススコアカード(BSC)は、そんな複雑な経営管理を4つの要素でまとめられるツールになります。今回はバランススコアカード(BSC)について、作成する方法作成すべき理由無料のテンプレートなどをご紹介します。

 

バランススコアカード(BSC)とは

バランススコアカード(BSC)とは

バランススコアカードとは、企業の戦略目標などを評価し、KGIやKPIの策定に結びつけるためのフレームワークです。「財務」「顧客価値」「業務プロセス」「(人材の)学習・育成」の4項目から企業の業績を定義、マネジメントすることで、経営状態を管理し、目標を立てるために使います。1992年にハーバード・ビジネススクールで教鞭をとっていたロバート・S・カプラン教授らによって開発されました。それから25年以上にわたって使用され続けているフレームワークです。

企業業績は従来、財務指標である売り上げや利益などをもとに評価されてきました。しかしお金だけが、プロジェクトや企業の業績を表すわけではありません。

「どれほどの顧客をファンにできたか」「人材はどのくらい成長したのか」「業務の無駄は省けたか」など、見えにくい部分にも経営品質の変化はあります。例えば、多くの顧客をファンにすると、当期では売り上げに反映されなくても、次期以降の収益につながる可能性が考えられます。また人材が成長するほど、稼働率が高まり、その分の業績が伸びるのも確かです。

バランススコアカードは、財務的な業績評価指標である「財務」のほか、非財務的な業績評価指標である「顧客価値」「業務プロセス」「(人材の)学習・育成」の項目があります。バランススコアカードを用いることで、きちんとした戦略目標ができ、経営をバランスよく進めることができます。

 

 

バランススコアカードができた背景

では、どうしてバランススコアカードを作成する必要性が生まれたのでしょうか。

その背景には「ビジネスの複雑化」という問題があります。ITが生まれ、テクノロジーが進化し、どの市場にも新興勢力や競合が増えた1990年代前半、ビジネスの不確実性は高まりました。安定しているように見えた業界にも、次々にイノベーティブな企業が進出し、漫然と経営を進めるだけでは淘汰されるようになったのです。

そのため、企業は会社全体に注力するのではなく、プロジェクト単体にリソースを分散させてリスクヘッジをすることが求められました。これまで財務だけを見て計画を立てていた経営者たちは、細分化することが大切だということに気づいたのです。多角的かつ具体的に事業計画を練るようになり、バランススコアカードがうまれました。バランススコアカードを用いることで、会社全体の財務状況という大枠だけでなく、プロジェクトごとの要素を軸に考えることができます。

 

 

バランススコアカードの4つの要素について

バランススコアカードの4つの要素

1. 財務

財務的目標の達成のためにどのように行動すべきかの指標を設定する項目です。経営戦略の最終的なゴールに当たる会社の「純利益」をはじめとした財務指標を考えていきます。「営業利益」や「純資産額」、「投資収益率」など、キャッシュフローを細分化して算出しましょう。利益は「売り上げ-コスト」で算出されますので、売上高を高めるだけではなく、いかにコストをミニマムにするかも重要です。

 

2. 顧客価値

ビジネスで成果を出すために顧客に対してどのように行動すべきかの指標を設定する項目です。ビジネスは利益を追求することも大切です。しかし、根本としては顧客にどれだけの価値を提供できるかという面に着目しなくてはいけません。顧客価値も経営の質に大きく寄与する要素になります。

顧客視点と自社視点の両方から、項目を設定していきましょう。顧客視点の際には「どのようなコストか」「UI・UXはどうするべきか」などの顧客満足度を客観的に作成します。自社目線の場合は「収益性につながる価格設定」を重要視しましょう。

この際に「4P分析」と「4C分析」の2つのフレームワークは大いに役立ちます。後述しますが、4P分析は自社目線での商材の価値を、4C分析は顧客目線での価値を策定するためのツールですので、ぜひ利用しましょう。

 

3. 業務プロセス

財務的目標の達成、顧客満足度向上のための業務プロセスを構築するための指標を設定する項目です。効率性や生産性の向上につながってくるのが業務プロセスです。普段の業務の無駄を省いて、いかにコストを削減できたか、を基準に考えましょう。業務プロセスが改善することで、財務にも好影響が生まれます。

業務は大きく分けて「開発」「オペレーション」「アフターサービス」の3つのフェーズに分かれます。それぞれの業務について、かけるべき時間や費用などのコスト、割いたリソース、導入したツールなどを書き出していきましょう。

 

4. 学習・育成

ビジョンを達成するために組織や個人としてどのような育成を行い、スキル向上を図るかの指標を設定する項目です。自社の人材の成長度を基準にします。「各々のスキルをどのくらい成長させるのか」「目標にたどり着くためにはどのような育成方法を選択するのか」などを決めて、目指すべき理想的な人材像を設定しましょう。具体的に設定するために、自社で従業員それぞれの「リーダーシップ指標」や「資格の取得数」「稼働時間」「量の成果」「質の成果」を把握しておく必要があります。

 

 

バランススコアカードを設定する流れについて

バランススコアカードを設定する流れ

この4つの要因から経営目標を設定し、管理することで目指すべき目標が決まります。しかしどのようにして方向性を考えるべきか、また具体化した目標を決めるべきか、分からない方もいらっしゃるでしょう。バランススコアカードを策定する前後の流れをご紹介します。

 

1. ミッション・ビジョン・バリューを設定する

まずは会社の理念や行動指針、価値を表すミッションとビジョン、バリューを設定しましょう。起業時やプロジェクト立ち上げ時の想いを中心にして考えなくてはなりません。「会社として、何を最も重要視するのか」「ミッションを叶えるために、どう行動するのか」「世の中にどんな価値をもたらすのか」が目標を定めるための起点になり、バランススコアカードの評価基準にもなります。

 

2. BSCを設定し、4要素からKGIを設定する

ミッションやビジョンなどを踏まえたうえで、「財務」「顧客価値」「業務プロセス」「学習・育成」の4つの要素を決定しましょう。4つの項目はいわば、会社のミッションやビジョンをより具体的に表す要素です。また、バランススコアカードから、最終目標を定めておくことが求められます。この目標を「重要目標達成指標(KGI)」といいます、ビジネスのゴールをあらわす言葉です。

 

3. 重要成功要因(KSF)を探る

KGIを設定する際に、重要になるのが重要成功要因(KSF)です。重要成功要因とは事業を成功させるために最も重要になる要因を指します。内外の環境を分析したうえで、商材やコスト管理、チャネルなどさまざまな要因から、KSFを決定しましょう。詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

4. KPIの設定

ここまでができたら重要業績評価指標(KPI)を設定しましょう。KPIとはKGIを達成するための中間目標を指す言葉です。例えばラーメン店のKGIが売上高だったら、KPIは客数や回転率などになります。

4つの要素それぞれに複数のKPIを設定しましょう。「財務を達成するためには、どうやってコストを削減すべきなのか」、どのようにして顧客に届けるべきなのかなど、4つの要素にとって重要な指標を記していきます。

 

5. 具体的なアクションプランを決める

KPIを達成するために、どのようなアクションを取るのか、具体的に計画を立てていきます。ロードマップにしたがって、いつまでにどのような行動を続け、KPIを達成するのかを論理的に考えていきましょう。目標を設定するだけで満足せず、必ず行動につなげることが成功の絶対的な条件です。

 

 

バランススコアカードの作成に役立つフレームワーク

バランススコアカードを作成するフローにしたがって、併用すべきフレームワークがあります。複数のツールを組み合わせることで、より詳細かつ具体的なプランが決まるので、おすすめです。

 

1. SWOT分析

SWOT分析のテンプレート

「Strengths(強み)」、「Weaknesses(弱み)」、「Opportunity(機会)」、「Thread(脅威)」の4要素で自社の内外環境を並列化して考えることができます。重要成功要因(KSF)を定めるために役立つツールです。

 

2. ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション・ビジョン・バリューのテンプレート

ミッション・ビジョン・バリューの3要素も、アウトプットして可視化することで、チーム全体に共有できますし、起点が明確になるのが魅力です。

 

3. 事業環境マップ

事業環境マップの例

事業環境マップはマクロとミクロの外部環境を分析できるフレームワークです。KSFを探るために使えます。また市場やトレンドなどのも分析できますので、時代に即したビジネス計画を練るためにも使うことができます。

 

4. 4P分析と4C分析

4P分析のテンプレート

4C分析のテンプレート

商材の価値を定める際に使うフレームワークです。4P分析は「商品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販売促進(Promotion)」を指し、4C分析は4Pを顧客目線に言い換えた「顧客価値(Customer Value)」、「顧客コスト(Cost)」、「利便性(Convenience)」、「コミュニケーション(Communication)」を指します。

バランススコアカードの「顧客価値」を定める際、自社の目線と顧客の目線の両方をバランスよく調整するために役立ちます。ぜひ併用してみてください。


 

 

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バランススコアカードは事業の目標を定め、経営を管理するために使えるツールです。財務だけを追っていると、顧客価値や人材のフォローなどをおろそかにしてしまいます。すると、細かい計画を練られなくなり、自ずと業務プロセスも悪くなり、組織全体が衰退する原因にもなるのです。

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