
事業環境マップとは? 時代・環境の変化に対応したビジネスモデル創造に
昨今、イノベーションのスピードが加速し、以前では考えられなかったモデルが出現しています。ビジネスの環境は日々めまぐるしく変動し、複雑化しているのが現状です。
たとえ、確固としたビジネスモデルを構築し、事業がうまく進んでいるからといって、安心はできません。流動的に動く外部の環境に適応しながら、ビジネスモデルを再構築しなければ、いつの間にか自社のサービスやプロダクトがニーズから離れてしまうこともあります。
外部の環境を把握して対策を打つために有効なフレームワークが「事業環境マップ」です。自社に影響を及ぼす可能性がある外部環境を分析して、ビジネスモデルを構築し直すために有効ですので、ぜひお気軽にご利用ください。
目次
4つの外部環境に柔軟に対応することが大切
「事業環境マップ」では頻繁に変動する「市場」と「産業」「トレンド」「マクロ経済」の4種類を主な外部環境とします。すべてがビジネスにとって大切な要因です。この4要素に変動が起きる、つまり、より優れたサービスを他社が開発したり、顧客のニーズが変わったりするのに合わせて、当初のビジネスモデルは古くなってしまいます。順調だった事業に暗雲が立ち込めるでしょう。
外部環境を「デザイン空間」と捉えると、環境の変化に適応しやすくなります。
「ニーズの変化」や「技術革新による新たなプロダクトの出現」などは、デザインの要因です。「市場の流行」や「市場を支配している競合他社」などはデザインの制約になります。1つのデザインだと考えることで、自社のモデルを文脈に合わせて構築しやすくなるでしょう。制約を守りつつ、適した要因を配置すればいいのです。
外部環境に合わせてビジネスモデルを変化させるうえで「事業環境マップ」は効果を発揮します。現在、発生している環境の変化に対応できますし、今後起こるであろう環境の変化を予測して仮説を立てられるのです。既存のビジネスモデルキャンバスを組み合わせることで、自社事業の変え方が鮮明になります。
1. 市場からの視点(市場の圧力)
1. 市場の変化のポイント
自社の顧客セグメントや提供価値を見直し、現在市場を動かしている重要な論点を分析する。
ex:「顧客はどのようなポイントによって環境を変えるだろうか」「市場はどこに向かっているか」「どのような変化が水面下で起こっているか」
2. 市場においてのターゲット
主要なターゲットを見つけ、魅力を分析し、今後移り変わる新しいターゲットを探す。
ex:「現在最も重要な顧客セグメントは?」「どのセグメントが減少しているか」「現在のセグメント周辺で今後注目すべき顧客は?」
3. 需要と供給の関係
マーケット内の需要を把握し供給によってどれほど満たされているかを把握する。
ex:「どのニーズが満たされていないのか」「顧客が本当に理想としているウォンツは?」「供給の増減は?」
4. スイッチングコスト
顧客が競合他社に乗り換える時に関連する要素を把握する。
ex:「競合のどの部分に顧客は魅力を感じるか」「顧客のスイッチングコストは?」
5. 収益の魅力
収益に関連する要素を分析する。
ex:「顧客がお金を払いたいものは?」「最も利益率が高いのはどの部分か」
2. 産業からの視点(業界の圧力)
1. 競合
競合を把握し、自社に強みを明確にする。
ex:「現時点の産業で誰が支配している?」「競合に比べて有利・不利な点は?」
2. 新規参入
新しく参入する他社を予想、把握しビジネスモデルを見極める。
ex:「誰が参入し、ビジネスモデルにはどんな特色があるのか」「彼らはどの顧客セグメントに注力しているのか」「彼らのビジネスモデルは?」
3. 代替サービス
他の市場も含めて、自社サービスが代替になりうるものを探す。
ex:「どのような代替品が可能か」「その際のコストは?」「顧客はどの程度簡単に乗り換えられるか」
4. ステークホルダー
どのステークホルダーが自社のビジネスモデルにとって影響力があるかを把握する。
ex:「ステークホルダーで最もビジネスモデルを変えられる存在は誰なのか」
3. トレンドからの視点(重要なトレンド)
1. テクノロジー
今後ビジネスモデルを変える力を持つほどのテクノロジーを把握する。
ex:「マーケットの内外でどのような技術革新があっているか」「どの技術が脅威となり、味方になりうるか」
2. 規制
ビジネスモデルに影響する規制を書き出す。
ex:「規制や税金の変化などで、自社のビジネスモデルを動かす変化は?」
3. 社会的・文化的
社会的なトレンドの変化によって自社のビジネスは揺り動かされるか。
ex:「社会的・文化的なトレンドは今後どのように変遷するか」「それによって消費者の動向はどう変わるか」
4. 社会経済
社会経済のトレンドの変化によって自社のビジネスは揺り動かされるか。
ex:「人口はどのように推移しているか」「年収は?」「景気はどのようにうつろうか」「都市部と農村部の人口配分は」
4. マクロ経済からの視点
1. 市場全体
市場の変遷をチェックする。
ex:「失業率は?」「経済は上昇しているか、下降しているか」
2. 資本市場
資本市場の状況を把握する。ただし、現在の自社の資本状況と照合する。
ex:「資金を得られるか」「ベンチャーキャピタルの動きは?」
3. 原料やリソース
リソースの現在価格と今後のトレンドを把握する。
ex:「人件費などのリソースはこれからどう遷移するか」「リソースを得ることは簡単か」
4. 経済インフラ
ビジネス市場での経済インフラの状況を記す。
ex:「インフラはどれほど整備されているか」「個人や法人税はこれからどう遷移するか」「輸送や貿易はどれほどやりやすいか」
トレンドとマクロ経済は「マクロ外部要因」、市場と業界の視点は「ミクロ外部要因」として捉えることができ、前者を「PESTEL(政治、経済、社会、技術、環境、法律)」、後者を「6フォース 」(競合、買い手、売り手、新規参入者、代替プロダクトとサービス、補完事業者)として整理することもできます。
事業環境マップで移り変わるビジネスモデルに対応
「昨日までの常識が今日は崩れる」。それが現在のビジネスです。
「市場」「産業」「トレンド」「マクロ経済」の4要素は特に大きな力を持っており、少しの変動で会社の利益は大きく変わります。好転するのならラッキーですが、外部環境の変化で大きなダメージを受けてしまい、立ち直れなくなる会社はたくさんあるのです。
また現在のビジネスの常識として「顧客のニーズに応え続けること」が挙げられます。技術革新によって使いやすいサービスが生まれたら、そちらを利用するでしょう。トレンドが移り変われば、消費者の視点は一気に動きます。
4つの視点から環境を把握し、既存のビジネスモデルを変化させることで、現事業はさらに強固になります。自社が置かれている市場において環境の変化に気づいている方は、すぐに「事業環境マップ」をご利用ください。また今後の変化に対応できるように、策を練っておくこともビジネスを安定して進めるうえで大切なことです。
BizMakeでは無料で「事業環境マップ」をご利用できます。またビジネスモデルキャンバスも使えますので、組み合わせて、強固なビジネスモデルをデザインしましょう。
