内閣府リリースの「経営デザインシート」の補完に役立つ3種のフレームワークとは

2018年5月、内閣府の知的財産戦略推進事務局が発表した「経営デザインシート」をご存知でしょうか。旧来型の「モノを作るだけで売り上げを出せていた時代」から、現代型の「顧客ニーズに見合った商材だけが売れる時代」に合わせてビジネスモデルを転換するために、国が作成したフレームワークです。

市場の需要が供給量を上回ったころから、ビジネスモデルの転換はマストといわれてきました。IT企業をはじめ、ビジネスへの感度が高い方にとっては常識的な流れのように感じられるかもしれません。

「国」がフレームワークをリリースしたということは、政府が日本のビジネスに危機感を抱いている証拠でしょう。企業の多くが「事業モデルのトレンド」についていけない現状を打破したいと考えているのだと思います。内閣府主導でビジネスモデルの転換を啓発したことで、これまで旧来型のビジネスを続けてきた”レガシー”の意識が変わる可能性もあります。

BizMakeでは全3回に分けて「経営デザインシート」について連載してきました。第1回の記事ではシートが生まれた背景や概要を紹介し、第2回ではシートの使い方を流れに沿ってご説明しました。

経営デザインシートは「これまで」「これから」のビジネスモデルを俯瞰的に見比べられる優れたフレームワークです。しかし抽象的な分析しかできないことも確かでしょう。ビジネスモデルは会社の根幹として設定するべきものなので、できるだけ具体的に決めなければいけません。

そこで第3回目の今回は、より具体的かつ俯瞰的に「これから」のビジネスモデルを策定したい方に向けて3種類のフレームワークをご紹介します。

 

 

経営デザインシートはもっとブラッシュアップできる

第1回でもご紹介しましたが、経営デザインシートの目的は大量生産型のビジネスモデルを顧客ニーズ優先型に変換することです。そのために「外部環境」「顧客のニーズ」を把握して「新しいビジネスモデル」を定めることを目標にしています。

フレームワーク内には外部環境や顧客のニーズ、自社の強みと弱み、提供価値などを書けますが、その詳細までは具体化できません。「外部環境」と「顧客のインサイト」「新しいビジネスモデル」の3要素に関しては表層だけでなく、より深掘りできます。経営デザインシートに別のフレームワークをプラスすることで、もっとブラッシュアップすることもできます。

 

 

論理的かつ具体的に経営を進める3つのフレームワーク

外部環境の変化や顧客のニーズ、新しいビジネスモデルなどは経営に大きく関わる重大な要素です。しかし経営デザインシートでは、ビジネスモデルを転換するまでの工程を1枚のシート内に収めなくてはいけない。「これまで」と「これから」のビジネスモデルの変化を1シート上で確認できる代わりに、各要素について論理的かつ具体的には記述できません。

そこで、手段の1つとして経営デザインシートを補完するために、3つのフレームワークをご紹介します。プラスアルファの価値を加えることで、より信憑性がある戦略を練ることができるようになるでしょう。

 

1. あらゆる要因の変化に対応する「事業環境マップ」

経営デザインシートには「現在とこれからの外部環境」という枠があり、大まかな環境の把握に役立ちます。より深掘りして外部環境の変化に備えるために「事業環境マップ」の併用がおすすめです。「事業環境マップ」では「市場」「産業」「トレンド」「マクロ経済」の4つを軸に外部環境の変化を記していきます。多方向な視点から今後の変化を予測することで、より顧客ニーズに対応したビジネスモデルができるのです。

闇雲に外部環境の変化を考えてもアイディアは出てきません。条件を絞って論理的に考察することで今後の環境変化についていけるようになるのです。

 

 

2. 顧客インサイトをより詳細に把握するための「ジョブマップ」

経営デザインシートは自社が提供する価値を記載することで、顧客のニーズを満たせているかを判別する仕組みになっています。しかし顧客データだけでは表層的な需要しか導けません。「なぜ必要とされているのか」を掴まないと、ニーズやウォンツは理解できないのです。本質的なニーズを掴むために顧客のインサイトに注目すべきでしょう。

そこで「ジョブマップ」を併用することをオススメします。顧客の要望や困っていることを「ジョブ」、解決するために商材を使うことを「ハイア」として顧客の本質的な欲求を探る「ジョブ理論」をもとに作られたフレームワークです。

ジョブ理論ではまずターゲットを設定し「感情的」「社会的」「関連する」「台頭する」の4つの側面から顧客のインサイトを導き出していきます。その後「計画」「収集」「準備」「確認」「開始」「監視」「修正」「終了」と8つのフェーズに分けて顧客の行動を分析可能です。感情と行動の両面から自社の商材を利用する流れを流れを把握できます。

 

 

3. 「ビジネスモデルキャンバス」で経営を取り巻く9項目を俯瞰的に分析

経営デザインシートのゴールはビジネスモデルをまったく新しく作り直すことです。しかしフレームワーク内にはポートフォリオ提供価値、強み、弱みほどしか要素がありません。コストや収益関係、パートナー関係などの要素を踏まえることで、ビジネスモデルを深掘りできます。

より総合的なビジネスモデルを分析するために「ビジネスモデルキャンバス」を使用しましょう。「顧客セグメント」「提供価値」「チャネル」「顧客との関係」「収益の流れ」「主要な資源」「主要な活動」「主要パートナー」「コスト構造」の9項目から俯瞰的に自社の経営を分析できるのがメリットです。

「これまで」と「これから」の2種類を作成することで、自社の変化にも気付きやすくなるでしょう。ビジネスモデルは会社にとっての舵となる部分ですので、できるだけ具体的に設定しなければいけません。その後、経営デザインシートに追記することをおすすめします。

 

 

老舗企業でもビジネスモデルの転換を迫られている時代

内閣府が「経営デザインシート」をリリースしたことからも分かるように、長年順調にビジネスを進めてきた企業も自社のモデルを見直さなければいけない時代が来ています。「作れば売れる」はもう終わりました。「いかに顧客に愛される商材を作るか」を考えなくては、サービスやプロダクトはすぐに廃れてしまいます。

経営デザインシートは企業のビジネスモデルを見つめ直すうえで役立つでしょう。本格的に新事業に踏み出すために「事業環境マップ」「ジョブマップ」「ビジネスモデルキャンバス」などで補完することで、より詳細なビジョンを構築できます。

BizMakeではこの他にも、事業の方向性を決めるのに適したさまざまなフレームワークがあります。Webから無料でどなたでも利用できますので、ぜひご活用ください。

 

 

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