
tsr-van2(東京商工リサーチ)のビジネスモデル、信用調査会社のオンライン展開
東京商工リサーチ、という企業をご存じでしょうか?近代日本経済の父である、あの渋沢栄一が設立に関わった、という情報を付け加えると、しっかりした背景のある企業だというイメージがもてるかもしれません。
最近ではテレビニュースやメディアでの倒産集計発表で社名を目にする機会の方が多いですが、実は東京商工リサーチは国内最古の信用調査会社で、「倒産」という言葉をはじめて使った企業なのです(諸説あり)。
今回は東京商工リサーチが提供するインターネット企業情報サービス「tsr-van2」についてフォーカスしていきます。
目次
東京商工リサーチとは?tsr-van2とは?
東京商工リサーチは1892(明治25)年8月に創業し、現在は東京都千代田区に本社を構える信用調査会社です。従業員は1,953名、直近の売上高は214億円(2021年3月期)と帝国データバンクに次いで業界第2位に位置しています。
先見の明があり、現在では当たり前のように報道されている倒産集計を最初に発表したり、オンラインサービスの開始、他社プラットフォームへの情報連携、海外信用調査会社との業務提携など、自身でアプローチが難しい分野は他社と協力してきたことがわかります。また近年ではユーザーの要望に答えた新サービスの投入にも意欲的です。
tsr-van2は1999年にはじまった、いつでもどこでも簡単に企業情報を取得できる低コストのオンラインサービスです。母体となるサービスは、ライバルである帝国データバンクより前になる1978年に開始しています。どんな部分がライバルサービスを異なるのか、強みはどこにあるのか見ていきましょう。
tsr-van2(東京商工リサーチ)のビジネスモデルキャンバス
東京商工リサーチのオンライン企業情報提供サービス、tsr-van2について、ビジネスモデルキャンバスで表していきます。
1. 顧客セグメント
商取引を行うほぼすべての法人企業が顧客になり得ます。また東京商工リサーチが提供する信用調査レポートや企業データベースは、取引先がきちんと売掛金を支払ってくれるかを図る与信管理がベースとなっています。したがって、取引先数が多くなればなるほど自社で取引先をすべて管理することは難しくなります。取引先数が多い企業ほど、tsr-van2の潜在的なユーザーになりやすいともいえます。
また低価格でスタートできることから、これまで与信管理や企業データベース利用をしたことがない、中小企業も大きな見込み先でしょう。
2. 提供価値
東京商工リサーチは、その企業情報の多くを直接調査で収集しています。全国に配備されている調査員が現地調査で得た精度と鮮度の高い情報を収集していることが価値の源泉といってよいでしょう。またオンラインサービスとして24時間365日、いつでもアクセスできることが挙げられます。
また、近年ではミドルレポートや与信限度額レポート、と呼ばれる従来の形では価格的に、費用的にユーザーが手を出しづらかったサービスを続々と投入している様子がうかがえます。
3. チャネル/販売
- オンライン
オフラインで収集した企業情報データベースを、すべてオンラインで取得できるように設計しています。
4. 顧客との関係
- セミナー
- メールマガジン
- モニタリングサービス
少額からスタートできるサービスのため、細かなサポートというよりも接点をさまざまな形でもつように設計されている印象です。すべてがコーポレートサイトに公開されているわけではありませんが、セミナーページにて定期的にセミナー開催、他社との共催セミナーを行っていることが見てとれます。
またモニタリングサービスを活用することで、定期的に登録企業の変動情報(代表取締役の変更、最新売上高の更新など)が届くようになっています。これによりtsr-van2にアクセスする導線ができています。
5. 収益の流れ
- 月額最低利用料(3,000円〜)
- 各コンテンツ利用料金(5〜48,000円)
2つの料金体系があり、ひとつは利用料、もうひとつは従量課金の各コンテンツ利用料です。月額最低利用料は3,000円からとなっていますが、実際のデータ閲覧と相殺されるため、毎月3,000円以上の情報を閲覧する場合は、利用料は実質無料となります。
6. 主要な資源
- 企業情報の収集
提供価値でも記載しましたが、130年近く続いてきた信用調査業務で積み上げてきた情報や信用は大きいです。取材される企業側も、信用調査会社に情報提供することが当たり前のこととして根付いているのは凄いことです。
7. 主要な活動
- 従業員の大半を占める調査スタッフ
具体的な人数は公開されていませんが、ライバル会社である帝国データバンクでは全従業員3,300名のうち、約1,700名が調査取材部門の人員だと公式ホームページに記載があり、東京商工リサーチでも従業員の半数程度が、調査に関連する業務を行っていると思われます。
8. 主要パートナー
- D&B
- 矢野経済研究所
- ジー・サーチ
- 日本経済新聞社
tsr-van2上で連携している企業が挙げられます。D&BはDun and Bradstreet という世界最大の信用調査会社で、ダンレポートという海外信用調査レポートを開発提供しています。なおD&Bは現存する世界最古の信用調査会社でもあり、過去には第16代大統領エイブラハム・リンカーンを含めた4名の大統領が働いていたことでも知られています。東京商工リサーチは1994年に同社との業務提携をスタートしており、これが大きな強みだと考えられます。
ほかにも市場調査レポートや新聞記事や役職者情報など自社でのアプローチが難しい分野は提携という形で販売をしています。
9. コスト構造
- 人件費
- システム開発・保守費
- パートナー会社への手数料
信用調査会社の資産は情報、のため一般管理費はシステム費用や人件費が多くを占めています。
tsr-van2の強みは、長年培った信用と海外最大手D&Bとの関係性、安価に利用開始できる利便性
tsr-van2の強みは、創業から130年近くの一貫したビジネスモデルによって、信用情報が集まってくる仕組みができあがっていること、そして世界最大手の信用調査会社D&Bとの業務提携による海外信用調査レポートの品質、ライバル会社と比較してやや安価な主力サービスによりはじめられやすい、という3つの要素が相互に作用しているように感じます。
非上場企業のため、決算書の詳細は公開されていませんが(全国の企業の決算書を保有して販売している企業が詳細財務非公開なのは少しおかしいですが)、決算公告を見る限り業容は堅調に推移しているようです。
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