
家具も「体験」の時代へ。CLASのサブスクモデルがミレニアル世代にフィットする理由とは?
数年前から「ミニマリスト」という言葉をよく聞くようになりました。
書籍やDVDなどはすべてスマートフォンに格納し、洋服も数着だけを着回す。部屋にはMacBookとテーブルにイス、間接照明、少しの観葉植物だけ。「断捨離ブーム」やジェニファー・L. スコット著「フランス人は10着しか服を持たない」のベストセラーなどでも分かるように、ミレニアル世代以降のキーワードの1つには「所有しないこと」があります。
「所有」から「体験」に時代が移ろうにしたがって、各企業のビジネスモデルも変化の時期を迎えています。特に今アツいビジネスモデルといえば「サブスクリプション」でしょう。
今回は2018年8月にローンチされた、家具のシェアリング、サブスクリプションビジネス・CLASのビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスを用いて分析します。
代表はAmazonプライム・ビデオの恋愛リアリティー番組「バチェラー・ジャパン」で初代バチェラーを務めたことでも知られる久保裕丈氏です。所有するのが当たり前だった耐久消費材を、彼はどのようにして「体験」に置き換えたのでしょうか。
目次
CLASのサービス内容をご紹介
まずはサービスの内容についてご紹介しましょう。
CLASには膨大な数の家具・家電があります。ユーザーは会員登録をしたのち、1人10品までレンタルが可能です。イスなら約500円~、ダイニングテーブルなら約2,000円と、インテリアの種類によって月額料金が変わります。この金額内には配送料や組み立て、設置費用、保険料も含まれます。
ちなみにCLASの社内には、家具の修理やメンテナンスを担当するスタッフがおり、通常使用での汚れや破損ではユーザーに追加料金がかかりません。また同等の品であれば、設置の際に既存の家具を引き取ってくれるサービスもあります。家具の処分に料金がかからないのも魅力の1つでしょう。
ライフスタイルにフィットするビジネスモデル
家具や家電などの耐久消費剤を所有することは、ある程度のリスクが伴います。
特に引っ越しの際に負担が発生するのは間違いありません。間取りによっては、元の家具がフィットしない場合もあります。処分かリセールを選ぶ必要がありますが、大型の家具になるとリサイクルショップに持っていくまでが面倒です。オークションサイトやフリマアプリも同様に、発送手続きをするまでにコストがかかります。
すると、やはり処分して新品を購入することになるでしょう。
その点、サブスクリプションのシェアリングだと買い換えのイニシャルコストを抑えられますのでユーザーペインが少なくなります。
CLASのバリュープロポジションは、ライフスタイルの変化が速まっている現代だからこそフィットするのではないでしょうか。現代の婚姻率や出産率が低下し、フリーランスという働き方を選ぶ方が増えています。また大手企業で安定して長く働き続けることではなく、転職をしながら自身のキャリアを磨くことに重きが置かれるようになりました。
10年、20年前に比べて、人の生活はフットワークが軽くなるにつれて「家を買う」という行為自体に価値が置かれなくなっているのは確かです。CLASは「所有せず、身軽でありたい方たち」に対して、大きなバリューを発揮しています。
デザインシンキングを重視して「区別化」を図る
とはいえ、家具のシェアリングサービス自体は決してイノベーティブなビジネスモデルではありません。久保氏はインタビューにて「意識しているのは差別化ではなく区別化」と発言しています。
区別化とはつまり「顧客の感性に訴えた結果、気に入ってもらいファンになること」です。量や価格などのロジカルな数字ではなくデザインシンキングでユーザーの心を打つことに重きを置いています。デザインシンキングについては、以下の記事をご覧になってください。
PRアクティビティやオフラインイベントはもちろん、サイト内の会社概要ページでは理念やバリューなどを手軽に確認できるうえ、採用情報ページからはビジョンやスタッフの写真などを確認できます。
コーポレートサイトにジャンプさせることなく、サービスサイト内で会社の全容をPRしているのもファンを増やすためのマーケティングの一環でしょう。CLASとユーザーとの距離感をグッと縮める効果を果たしています。
サブスクリプションをビジネスモデルキャンバスで解説
では、CLASが進めるインテリアのシェアリングサービスを、ビジネスモデルキャンバスの9項目から解説しましょう。サービスのターゲット像や、提供価値、チャネル、コストと収益の関係などを俯瞰的に分析できるのが、このフレームワークのメリットです。
1.顧客セグメント
頻繁に引っ越しをしている方がメインの顧客層でしょう。また持ち家があるとしても季節ごとに模様替えをする方や、インテリアや家電を数年おきに買い換えている方も入ります。
またCLASの家具は全て自然由来の無垢材でつくられています。「シックハウス症候群」など、お子さんの健康への害が心配なお母さんも顧客に入るでしょう。またどの部屋にも合うようなシンプルなデザインを意識していますので、顧客に対して間口を広く開けているのも特徴です。
サイト上で理念やビジョンを確認して利用するファンもいるでしょう。さらにシェアリングなのでエコに関心が深い方も顧客層に含まれますし、特殊ですが「バチェラー・ジャパン」を観ていた久保代表のファンも数えられます。
2.提供価値
処分、買い換え、設置と、家具にまつわる費用や手間をカットできることがバリューに含まれます。また普段通りに使っても追加料金がかからないので、ストレスなく使えるのも提供価値の1つでしょう。さらに自社で職人を抱え、家具をリペア・製作しているのも価値の1つです。無垢材を材料として、どの部屋にもフィットするシンプルなデザインを意識しています。自然由来の素材なので、小さなお子さんがいるご家庭で利用しやすいのも魅力です。
3.チャネル/販路
広告はもちろん「ファンを増やす」という方針で動いていることもあり、ユーザーの口コミでの広がりも期待できます。またチャネルに関しても「バチェラー・ジャパン」の視聴者が流入する可能性もあるでしょう。
4.顧客との関係
サブスクリプションなので、初期投資が少なく済みいつでも辞められるのは良好な関係が保たれます。独自のサービスとして、家具の買い替え費用や手間を省ける価値を提供し続けているのはもちろん、地球環境に優しいシェアリングサービスに共感する方からも信頼されます。またサイト上で理念やビジョンを確認し、共感する方は競合のサービスよりも優先的に利用するはずです。
さらに登録後にも顧客を離さない仕組みがあります。家具をレンタルする期間が長いほど、月額料金が安くなるのです。最大で75%も安くなります。また普段づかいでの汚れや傷には追加料金がかからないことで、家具を通して顧客とフランクに接しています。さらにスマホ1台あれば、注文から設置、交換と直感的に操作できるのも魅力的でしょう。
家具自体がシンプルなデザインであり、無垢材を使っていることで、どのご家庭でも導入しやすいことも顧客との関係を築くのに大きな役割を果たしています。
5.収益の流れ
継続的な月額利用料が大きな収益です。
6.主要な資源
サービスサイトや職人を含む人材、ユーザーの情報、倉庫や流通のルートがリソースに含まれます。
7.主要な活動
サイトの運営・アップデートや倉庫の管理、家具の製作から写真撮影、見積もり、アップロード、また顧客の管理や商品の発送と設置、回収などは毎日のアクティビティです。
8.主要パートナー
連携している倉庫や中国の工場が主要なパートナーです。
9.コスト構造
サイトの運営費やデザイン、ユーザーの管理、人件費、倉庫の保守、資材の仕入れ、発送・設置の費用など、コストポイントが比較的多く存在するビジネスモデルでしょう。
他社との連携にもマネタイズの可能性あり
CLASは2019年3月6日に3DインテリアコーディネーターのKARENと連携することを発表しました。これからはKARENで受けたインテリアコーディネートの提案に沿って、CLASで家具をレンタルすることも可能になります。
CLASは他社との連携にも、成長の可能性を秘めているビジネスモデルです。自社で製造からレンタルまでを手掛けておりますので、インテリアそのものの品質にも価値が置かれる可能性もあります。小売店や他のメーカーとの連携ができるかもしれません。airClosetのインテリア版のような動き方ができる可能性も秘めています。
カーシェアをはじめ、各種メーカーもどんどんサブスクリプション型に移行しています。インテリア業界にも「買うなんて古くさい」という時代が来るかもしれません。
今回はCLASのサブスクリプションモデルをビジネスモデルキャンバスを用いて解説しました。BizMakeではこのほかにもスタートアップ企業に役立つ「リーンキャンバス」や、ジョブ理論をもとに組まれた「ジョブマップ」などのフレームワークを無料で利用できます。自他問わず、ビジネスモデルを分析してみたい方は、お気軽にご利用ください。
