
洋服を買うなんてもう古い?airClosetのシェアリングサービスを徹底解読!
サブスクリプションを駆使したサービスをビジネスモデルキャンバスで紹介するシリーズ企画、 第3回は普段着のレンタルサービスとして多くの女性から支持されている「airCloset」です。
今や同じような洋服のレンタルサービスを推進する企業はいくつもありますが、パイオニアであるairClosetは「働く女性が推進する ファッションレンタルサービス」で1位となっています。
なぜairClosetは競合のサービスに勝てるのでしょうか。サブスクリプションモデルにとって何よりも大事な「顧客ニーズ」を意識した戦略がそこにありました。
目次
そもそもなぜ今サブスクリプションが流行っているのか
そもそもサブスクリプションがここ10年ほどで注目されている理由は「モノ」から「コト」に顧客の重視する価値が動いたからです。顧客は所有することに興味を失い、体験することを重視するようになりました。「作れば売れる」というフロービジネスが終わりを迎えるとともに、ストックビジネスが主流になったが大きな要因です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「所有への興味がなくなり、体験を重視する」というニーズがサブスクリプションの原点だとすると、airClosetのサービスはかなりフィットしています。では具体的なサービスの内容をご紹介します。
airClosetのビジネスモデルとは
「ペルソナは20代から40代後半の働く女性や子育てに追われるお母さんだ」とairClosetを立ち上げた天沼聰氏は言います。バリバリのキャリアウーマンはおしゃれを楽しみたい。しかしゆっくりショッピングをする時間がなく、結局は同じようなセンスの洋服ばかりを買ってしまう現状がありました。子育てに追われるお母さんたちも同じです。
airClosetはこうした問題を「レンタル」という形で解消しました。顧客がすべき行動はサービスに登録して好みの雰囲気や色合い、洋服での悩みなどを申告するだけです。その後はプロのスタイリストが、似合う服をコーディネートしてユーザーまで届けてくれます。基本的なプランだと月額6,800円で月に3着まで借りられます。プレミアムだと9,800円で何着でも借りることが可能です。
airClosetは忙しい女性のライフスタイルを崩すことなく、ファッションを楽しめるサブスクリプションサービスになっています。とはいえ、今ではファッションレンタルサービスがいくつもあります。airClosetはどこで差別化を図っているのでしょうか。
顧客のニーズをどこまでも重視したビジネスモデル
airClosetの施工要因の1つがスタイリストの質と量です。
22万人以上の登録ユーザーの要望に応えるために200名以上の社外スタイリストと連携しています。もちろん選定基準を突破した方しか働けません。またOJTでの教育制度も設けることで質も高めているのです。
ここまで多くのスタイリストを集められた背景にあるのが「働きやすさ」の追求でしょう。1日3時間から働けて、在宅でのワークも可能になっています。時間がない方や育休中の方なども働けるうえに一般的なスタイリストと違って膨大な衣装を持ち運ぶ必要もありません。
とはいえ、airClosetには300を超えるブランドがあります。そのなかから洋服を見繕うのですからスタイリスト1人ひとりの負担も大きくなる。
そこで活躍しているのがAIです。ユーザーの情報をもとに数種類の洋服やブランドをレコメンドすることで、スタイリストを補助しています。AIと膨大な数のスタイリストを起用している背景には「顧客ファースト」の考えがあるのは言うまでもないでしょう。
洋服選びはいわば「センス」です。かなり属人的な分野になります。しかしAIが選んだ服では顧客に満足な価値をもたらせません。だからこそAIはあくまで補助であり「スタイリストが選ぶ」という価値を貫いているのです。またユーザーからはスタイリストに向けてフィードバックが返ってきます。注文をするたびに、ユーザーの要望に近づいていくシステムを組んでいるのです。
リアルショップとの連携でさらなる顧客満足を
さらに2016年にはリアルショップである「airCloset × ABLE」を東京都港区の青山にオープンしました。プロのスタイリストが常駐しており、対面しながら洋服をレンタルできます。
オンラインショッピングの障壁の1つが「現物を確認できないこと」です。ファッション通販の「ZOZOTOWN」でもイメージとの齟齬をなくすためにあらゆるシステムを組んでいるのは有名な話でしょう。購入ほどのリスクはないにしろ、レンタルも同じです。しかし実際の店舗であれば、イメージ通りにコーディネートを楽しめます。オフラインでの体験を通してユーザーはより一層の満足を得られるのです。
また「欲しいときに借りられる」という即時性もオフラインならではの価値でしょう。「急に大切な予定が入った」「明日のデートに着ていく服がない」などの悩みをすぐに解決してくれます。
だからairCloset × ABLEのターゲットは働く女性ではなく20代の女性です。キャリアウーマンとして活躍する方は時間が限られていますし、20代のほうが生活リズムが不安定で、急な予定が入りやすいのです。顧客のインサイトを見抜きターゲティングできているからこそ、リアルショップのオープンを決めたのでしょう。
airClosetのビジネスをビジネスモデルキャンバスで解説
ではairClosetのビジネスをビジネスモデルキャンバスの9項目から解説していきましょう。どのような価値をターゲットに与え、いかにして良好な関係を築いているのかなど、ビジネスモデルを俯瞰的に確認できるのがフレームワークの強みです。
1. 顧客セグメント
メインのターゲットは20代後半から40代後半の働く女性や、子育てに追われるお母さんたちです。またクローゼットが同じような服で溢れている方も数に入ります。
またビッグデータを欲しがる企業も入ります。BtoBのビジネスも同時に進められる形態です。
2. 提供価値
自分に似合うおしゃれな服をスタイリストがコーディネートしてくれることでしょう。ショッピングの時間がいらないことも大きな価値になります。またレンタルなのでクローゼットもスッキリします。さらにフィードバック機能でサービスの質を高められるのも魅力です。
3. チャネル/販路
広告や口コミが主なチャネルです。その他リアルショップからの流入も見込まれるでしょう。
4. 顧客との関係
フィードバック機能により、スタイリストとユーザーがコミュニケーションを取れるような環境を整備しています。クオリティが不透明なオンラインサービスでも、回を重ねるうちに質が高まっていくので関係性も向上するのです。
5. 収益の流れ
6,800円か9,800円の月額使用料や、BtoBのビッグデータの販売などが主な収益です。
6. 主要な資源
サービスのWebサイトや、AIのシステムなどが挙がります。200名を超えるスタイリストや22万人を超えるユーザーのデータなどの人的なリソースも重要です。リアルショップ「airCloset × ABLE」もリソースに数えられます。
7. 主要な活動
ユーザーの情報を反映させてスタイリストをアサインし、配送、回収してクリーニングをするコーディネートのフローが主な活動でしょう。新たなブランドを開拓するのも重要な活動です。WebサイトやAIのシステム構築とマーケティングも含まれます。顧客データの整理も日々の活動でしょう。
8. 主要パートナー
200名以上のスタイリストやクリーニング会社である「ホワイト急便」、出品している300以上のアパレルブランド、洋服を補完する「寺田倉庫」などが主なパートナーになります。
9. コスト構造
サイトやアプリの運営費、AIの構築費用、スタイリストに払う人件費や倉庫の保管費用、クリーニング代、服の送料、広告宣伝費など、多方面にコストがかかってしまうのは確かです。
シェアリングサービスとサブスクリプションは相性抜群
顧客のニーズが「所有」から「体験」に移り変わるなかで、サブスクリプションは発達しています。シェアリングはまさにうってつけのビジネスモデルといっていいでしょう。airClosetを利用したユーザーは年間で282万円以上の価値がある洋服を着ていることになるそうです。もちろん年額は12万円。これもシェリングならではの価値になります。
airClosetはオンラインサービスですが、あくまでスタイリストと顧客のコミュニケーションを忘れません。その結果、90%以上の顧客満足度を残していることも注目すべき点です。2018年の第4期決算では約10億円の最終赤字に着地しました。しかしこれはAIシステムの構築費などが含まれた結果です。今後BtoBのビッグデータによる収益を見込んで投資をしているのではないでしょうか。
ローンチから4年目を迎えたairClosetは今後男性向けや子供向けにもビジネスの幅を広げていく予定とのこと。キャッチコピーのように『あたらしい「当たり前」』を作れるのか、注目したいところです。
今回はビジネスモデルキャンバスを使ってairClosetのビジネスモデルを俯瞰的に分析しました。自社のビジネスモデルはもちろん、競合のモデルや気になる会社のビジネスの仕組みなどを分析できる便利なツールです。
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