
ジョブ理論で紐解くUberとiPodの成功要因。再定義した顧客の課題とは?
クレイトン・クリステンセン氏が提唱するジョブ理論。顧客が抱えている課題を「ジョブ(仕事)」、解決するためにサービスを利用することを「ハイア(雇う)」と置くことで、ニーズに合わせた事業展開を可能にするという理論です。
ジョブ理論についての解説は以下の記事をご覧ください。
自社の経営に取り入れようとしても、具体的に構築するのは難しいでしょう。今回はジョブ理論を経営に取り入れることで成功したUberとiPodについてご紹介します。
目次
「利用時」をイメージすることが大切
「ジョブ理論」では購入時ではなく利用時の顧客の心境をイメージすることが大切だということは、あらかじめ知っておかなくてはいけません。
たとえば誰のスマートフォンにも、インストールした後、長く放置されているアプリがあると思います。導入時は便利そうだと思ったが、いざ使ってみると使い勝手が悪いうえに、起動する場面が少ない。ローンチした会社からすると大きな失敗です。
継続して使ってもらえるようなサービス・プロダクトをつくって、はじめて意義が生まれます。ジョブ理論で重視すべきなのは「購入時」ではなく「利用時」です。このポイントを押さえたうえで具体的な事例を見ていきましょう。
Uberがもたらした顧客への特別な体験
まず紹介したいのが、乗客とドライバーのマッチングサービスを展開するUber。日本でも利用者数が増加しており、今さら概要を説明するまでもないでしょう。自家用車を持っている方は、申し込めば誰でもドライバーとして事業ができます。このサービスは、レンタカーやタクシー業界に革命を起こしました。Uberが成功を収めた要因は「顧客がレンタカーやタクシーを利用する際に感じる課題を解決できた」からです。
たとえばあなたが出張したとしましょう。数時間のフライトを終えて空港に着くと、身体はヘトヘトです。都会だと公共交通機関が整備されていますが、場所によっては電車やバスの本数が少なく、車でしか移動できない。空港に併設されているレンタカーショップに寄って手配します。書類の申請や走行上の注意など、係員の対応に時間を割かれながら出発です。運転によって疲れは増します。目的地で仕事をした後に空港まで戻りますが、返すまでにガソリンを満タンにしなければならず、時間をロスするでしょう。
またタクシーについても同様です。頻繁にタクシーの奪い合いになりますし、車通りが少ない場所だとそもそも走っていません。また乗車した後も、複雑な場所だと常にドライバーとやりとりをしなければいけませんし、支払いに時間をとられます。「お釣りは大丈夫」と駆け出した経験がある方もいらっしゃるでしょう。
Uberはこうした顧客の体験に着目しました。「目的地まで移動したい」ではなく「快適かつスピーディーに移動したい」こそが本当のジョブだと気付いたのです。
Uberには数多くのドライバーが登録しているため、世界各国に豊富な車両があります。また利用者が支払うガソリン代を含めると、比較的、値段が安いのも魅力です。事前にアプリ上で予約でき、支払いまで済ませられるので、待つ時間も降りる際のやりとりもありません。
レンタカーで発生するガソリンを補充する時間もなし。さらに顧客が安全性を実感できるようにレビュー機能があり、評価が低いドライバーは必然的に事業ができなくなるのです。まさに「快適かつスピーディーに移動したい」という顧客のジョブを解決を満たすことで、継続的にハイアされるサービスになりました。
音楽を聴く利便性を高めたiPodの事例
今やなくてはならないプロダクトになったiPod。ローンチ当初のキャッチコピーは”1,000 songs in your pocket(ポケットに1000曲を)”でした。これは実はランニングをする人に向けたメッセージなのです。
当時は、コンパクトCDプレーヤーやMDプレーヤーが主流でした。室内や通勤時間などで使うぶんには不自由ありませんが、ランニング中など運動している場合はポケットに入らず不便だったのです。
Appleは顧客のジョブを「日常的に音楽を聴きたい」ではなく「運動しているときに音楽でモチベーションを高めたい」にシフトしたのです。そのため、従来のプレーヤーをよりコンパクトにしました。またプレイリストを作成できる機能を実装し、ジョブを叶えたのです。
継続的に使われるサービスを構築
これら2つの事例に共通しているのが購入時ではなく利用時のジョブを想像すること。すると顧客の課題や要望がより分かりやすくなります。ぜひ2社の事例を参考にして、自社のビジネスモデルを構築してください。
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