
タイムズカーのビジネスモデルから、その強さの秘密に迫る!
みなさんはタイムズカー(旧:タイムズカーシェア)を使ったことがありますか?タイムズカーとはパーク24グループのタイムズモビリティ株式会社が運営するカーシェアリングサービスです。
ビジネスフレームワークで分析を重ねた結果、タイムズカーの強みは「本業の駐車場事業を通じた車室確保」と「快適なユーザー体験」、そして「緻密に設計されたネットワーク効果」だと考えています、その思考の流れを以下にまとめています。
目次
元々はマツダレンタカーのサービスだった!?
このサービスはいつからはじまったものなのでしょうか?歴史を紐解いていくと、実はタイムズがはじめた事業ではなく、2005年2月に自動車メーカーであるマツダのグループ会社、マツダレンタカーが「カーシェア24」という名称ではじめたサービスでした。
2009年にパーク24がカーシェア事業への参入を目的としてマツダレンタカーを子会社化し、複数回の名称変更や運営会社の移管を重ねながら2021年4月には、タイムズカーシェアから「タイムズカー」と変更されました。
業界では後発スタートだったものの、本業であるタイムズ駐車場内にカーシェアスペースを確保していったことで、現在は圧倒的な地位を築いています。
クルマを所有する場合とシェアする場合、メリット・デメリット
具体的にどっちがお得なのか、ということについては多くの記事がインターネット上に存在していますので、そちらをご覧いただけばよいですが、クルマ所有の場合、買い替え目安は7年~9年だと言われています。車両購入費、各種税金支払い、車検やオイル交換などのメンテナンスコスト、駐車場代・ガソリン代などを考慮した場合、月額5万円が都心でクルマを所有する場合の最低コストではないでしょうか。
言い換えると、月額5万円もクルマに出せないという方はカーシェアを使うべきだと思います。ただしどちらがいい、悪いという話ではなく、どこまで行っても「コストと利便性のバランス」になります。
カーシェア利用のメリットはコストを最小化できること。そしてクルマ所有のメリットは、いつでも乗れること、クルマのなかに荷物を置きっぱなしにできること。などになります。ライフステージによっても、小さい子どもがいる場合にはカーシェアを使う、少し大きくなったらクルマを所有する、中学生になり一緒にお出かけすることが少なくなってきたらまたカーシェア利用に戻る、など有機的に活用するのがこれからのスタイルかもしれません。
タイムズカーのビジネスモデルキャンバス
1. 顧客セグメント
タイムズカーを利用したい層は基本的にはクルマを所有していない層です。都心部では公共交通機関が発達しているためクルマがなくとも生活に困ることはありません、ただし週末だけクルマでドライブに出かけたい、雨の日の子どもの送り迎えに少しだけ利用したい、といったライトなユーザーが挙げられます。また、学生など運転免許を取ったが実際に購入する余裕がない方などもいます。
またSDGsが注目される時代に、環境配慮の意識が高いユーザーからの支持も受けているでしょう。
そのほか、法人利用では必要なときに、必要なだけ乗れることからカーリースから切り替えている企業も多いです。
2. 提供価値
なんといってもその手軽さです、24時間365日、借りたいと思ったときに手軽に利用することができます。操作もスマートフォンアプリで簡単にでき、出張先や旅行先でも利用することができます。
たとえば新幹線で金沢へ旅行に行った際にも、現地でクルマをすぐに借りることができます。
ビジネスの面では、会議室やリモートワークスペースとしてクルマのなかで仕事をするケースもあります。たしかにカフェなどで作業をしているときの電話など人にあまり聞かれたくないケースもありますね。
3. チャネル/販売
広告やティッシュ配り、チラシ配布といったオンライン・オフライン問わず多面的に展開しています。
またタイムズはロゴを変更・統一したことでタイムズ駐車場やクルマに貼ってあるシールそのものにも強い宣伝効果があります。
4. 顧客との関係
利用体験が便利なだけではありません、TCPプログラムという有料会員創出制度があります。たとえば急ブレーキなく安全運転ができたり、終了後のアンケートに回答したりすることでポイントがもらえます。
そのポイントが貯まることで、会員ステージが決まり、優待を受けられる仕組みがあります。
またキャンペーンによるクーポン配布や、SNSでの写真コンテストなど、マナー意識の高いユーザーをどんどん増やしていく仕組みをもっています。
5. 収益の流れ
初期費用と月額基本料金、そして利用時間で決まる利用料金があります。ただし初期費用は新規入会キャンペーンを通年行っており、月額基本料金は毎月利用することで利用料金と相殺されます。
実質利用料金がメインだと見て問題ないでしょう。
6. 主要な資源
本業でもある駐車場の車室、ウェブサイトやスマートフォンアプリが主な資源となります。
そして具体的な記事などは見つけられませんでしたが、細かなユーザーログ(急加速、急減速をするポイント)や、車種別のアンケート情報など、会員データは貴重なデータといえます。
なお、IR資料やメディア記事などを見る限り、取締役クラスや管理職の方はリクルート出身の方が多いようです。ビジネスを推進するにあたり、このリクルートのDNAというものタイムズの強さの厳選として間違いなくあるでしょう。
7. 主要な活動
ここはすべてグループ会社となります。
駐車場・車両管理などをするタイムズサービス、タイムズ駐車場を運営するタイムズ24、コンタクトセンターを運営するタイムズコミュニケーション、レンタカー部門など。ひとつの事業を行うなかでも社内で分業を取っています。
8. 主要パートナー
自治体や鉄道会社、自動車ディーラー、保険会社、駐車場オーナーなどが主要パートナーとなります。
9. コスト構造
車両購入費やガソリン代、メンテンナンス費のほか、ウェブサイトなどシステム運営費、そして人件費が主なコストです。
タイムズカーのペルソナキャンバス
1. 願望・悩み・ゴール
- 人に自慢できる(恥ずかしくない)カーライフを送りたい
- 環境に配慮している気持ちを演出したい
2. 制約・状況
- 週末のお出かけに使うレンタカーは時間の自由度がなく不便。費用を抑えると軽自動車・コンパクトカーになってしまう
- 雨が降ったときの子どもの送り迎えに少しだけカーシェア利用したい
3. 最小化したい・最大化したい成果
- 毎回違うクルマで気持ちをリフレッシュしたい
- クルマにかける費用を最小化したい
4. 感情
- 必要なとき、必要なだけクルマ利用してエコな気持ちに
- レンタカーやマイカーと比較し、お手頃にクルマを利用できている優越感
5. 代替手段
- レンタカー
- バス・電話などの公共交通機関
- 自転車
6. 支払い意思
- 月額1~5万円ほど。週末のお出かけ回数による
7. 好むメディア
- 経済系ではNewsPicksでフォローしている著名人コメントを流し読みする程度
- YouTubeやPodcastは1.5倍速で視聴
- よく読む雑誌はGO OUT(アウトドア)、MONOQLO(家電・雑貨)
- Instagram(お出かけ先の美味しかった料理写真を投稿)
8. 人口動態特性・属性
- 20~30代
- 首都圏の賃貸マンションに居住
- 小さな子どもがいる
- 世帯年収600~1,000万円
タイムズカーのカスタマージャーニー
1. 認知
一番最初に認知するのは、タイムズ駐車場を通りかかったときや、実際にタイムズの黄色いシールが貼られたクルマを見かけるところでしょう。
タイムズではオンライン・オフライン関わらず積極的なプロモーション活動を行っていることに加え、ブランド統一を行っていることで、黄色いロゴが目に入る機会は増えています。
2. リサーチ
ウェブサイトにアクセスをすると、タイムズカーの利用の流れやシミュレーションができるツールがあります。ここで利用するイメージが持てるはずです。ただしここでふとした疑問が湧いてきます。「タイムズ以外にはどんなカーシェアサービスがあるのだろうか?」
3. 比較検討
インターネット検索をすることで比較的すぐに情報が出てきます。都心でしたらカレコやオリックスカーシェア、ほかにも個人間カーシェアのAnycaなど、判断を迷わせる情報が多く目に入ってきます。
ただしアフェリエイト広告を活用したタイムズカー利用を促す記事も多く書かれています。タイムズが圧倒的なシェアを持っていること、全国どこに行っても使えることなど、タイムズならではのメリットがわかり、利用を決意します。
4. 申込・利用開始
なるべく早く利用申込をしてクルマに乗りたい。そう考えた場合、オンラインで申込をすると会員カードが郵送されるまでに時間がかかってしまう。そのようなときに主要駅の駅構内やレンタカー店舗に行くことで、その場で会員カードを発行してくれることを知る。最寄りのレンタカー店舗にて発行してもらい、はじめての利用へ。
タイムズカーの強さの厳選はこれだった
この3つのフレームワーク作成を通じて改めてタイムズカーの強さを検証した結果、以下の3点に集約されるのではないかと考えています。
1. 本業の駐車場事業を通じた車室確保
後発ながら圧倒的ナンバーワンの地位を築き上げるまでにそう時間はかかりませんでした。これは本業で培ってきた駐車場事業の存在はほかなりません。
ここでのポイントは、タイムズ駐車場の車室をタイムズカー専用とするにあたっての意思決定になるのではないでしょうか。純粋にタイムズの駐車場はパーク24グループのコアであり、これをカーシェア利用として使うことで、工事が必要で、クルマの配備から掃除といったメンテナンスまで手数が大きく増えてしまいます。現時点での収益構造を把握することはできませんでしたが、タイムズ駐車場のままにしておく方が収益性などの観点では効果があったのではないでしょうか。
そこを、あえてタイムズカーを強く推進するために大きく舵を切ったところに大きな意思を感じます。
2. 快適なユーザー体験
オンラインでもオフラインでもスムーズに入会ができる。PCやスマートフォンアプリで予約をしたら専用カードをかざすだけでクルマに乗れる。給油や洗車をすることで料金割引が受けられる。返却後のアンケート回答や運転中にエコドライブを心がけることでTCPプログラム(優良会員認定制度)のポイントが貯まり、結果的にお得な料金や仕組みでさらにカーシェア利用ができるように設計されている点。
3. 緻密に設計されたネットワーク効果
タイムズがロゴを統一したことで、駐車場でもカーシェア、レンタカー利用でも同じロゴが目に入るようになりました。タイムズ駐車場は全国に約2万箇所、75,000台あり、カーシェアリング車両数は全国に約46,000台、カーシェアリング会員は約160万名と各分野でトップクラスのシェアを誇っています。
タイムズカーの利用者が利用することで、それを目にする非会員の方が増えていき、自然とユーザーが増えていく仕組みができあがっています。
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