
環境に配慮したサステナブルな野菜を提供する「スプレッド」をビジネスモデルキャンバスで分析
「サステナブル」、「SDGs」、「エシカル消費」など環境問題などの課題を解決していこうとする取り組みに関する言葉を耳にする機会が増えてきたかと思います。
お店に並んでいる商品でも、より環境に良いものを買うようにするだけでも環境問題に貢献することができます。
例えば、スーパーに陳列されている野菜もサステナブル野菜として環境に配慮した栽培方法で作られたものがあるのです。
このような環境に配慮したサステナブルな野菜を提供するサービスを運営している会社の一つが今回ご紹介する「スプレッド」です。
目次
「スプレッド」とは
サステナブル野菜ブランド「ベジタス」や次世代型農業生産システム 「Techno Farm」を運営するスタートアップです。
「ベジタス」は、“サステナブルなベジタブル”というコンセプトのもと、環境にも配慮した栽培方法でつくられています。露地野菜と比べ水使用量を約1/100まで低減すると同時に、食品ロスを削減することができるのが特徴です。
また、「Techno Farm」の技術を導入した世界最大規模の植物工場の運営も行なっており、ロボティクスやIoT、進化した設備技術を駆使して日産レタスを安定的に生産しています。
2021年9月には、世界の優れた植物工場企業を表彰する“Vertical Farming World Awards”を受賞しています。
スプレッドのビジネスモデルキャンバス
では、スプレッドのビジネスモデルについて、ビジネスキャンバスを用いて整理してみましょう。
1.顧客セグメント
・サステナブルな活動を行いたいかつ食品ロスを防ぎたいスーパーや小売店
・自社に青果の生産から販売まで行うノウハウがない小売店
サステナブルな活動を行いたいかつ食品ロスを防ぎたいスーパーや企業、また、自社に青果の生産から販売まで行うノウハウがない企業が顧客セグメントとして考えられます。
2.提供価値
・低価格かつ環境に良い野菜を購入したい消費者購入により売上アップ
・消費期限が通常の2倍で、食品ロスを防ぐことができコストカットに繋がる
・スプレッドが代行するため自社にノウハウがなくてもスプレッドブランドとして販売が出来る
・仕入れる必要がないため、コストカットに繋がる
スプレッドの青果は、環境に優しい方法で安定して生産されているのに加え、低価格な商品を提供することができるため近年増えているより環境に良い商品を購入したいと考えている消費者購入により、売上アップに繋がります。
ほぼ同じ値段であれば、より環境に良い商品を購入したいと考える人が多いため、他の商品との差別化も行いやすいです。
スプレッドが販売するレタスは、消費期限が通常の2倍なので、食品ロスを防ぐことができ野菜販売店はコストカットに繋がり、かつ、消費者も食品を焦って使い切る必要がないのが魅力です。
また、他にもパートナー企業向けに工場建設、生産、運営を代行し、スプレッドが持つ栽培、運営、販売ノウハウに加え、パートナー企業のシナジー効果を生み出すサービスを提供しています。
自社でノウハウを持っていない場合でも、スプレッドが代行して生産から販売まで行いスプレッドが商品を買い取りスプレッドブランドとして販売が出来ます。
小売店は、スプレッドの向上で生産から行うため仕入れる必要がなくなりコストカットに繋がります。
スプレッドでもレタスなどを販売し、自社の製品の良さを知ってもらったうえで他社の生産、運営などを代行するサービスを提供していると言えます。
3.チャネル/販路
・約4,500店舗のスーパー
・「Mizuho Innovation Award」受賞
・営業
スプレッドの青果は、約4,500店舗のスーパーで販売されています。
他にも、パートナー企業向けサービスは、営業や2021年に受賞した「Mizuho Innovation Award」などから認知を広めています。
4.顧客との関係
・生産から販売までワンストップソリューションのため、自社負担がない
・パートナー企業のシナジー効果を実現
パートナー企業は、自社に生産や販売、運営などのノウハウがない場合でもスプレッドで生産から販売までワンストップソリューションで提供しているため、自社負担がありません。
そのことにより、パートナー企業のシナジー効果を実現することに繋がります。
5.収益の流れ
・青果商品の販売
・ソリューション提供
⇒パートナー企業の立ち上げから運営におけるノウハウ提供と商品販売
レタスやいちごなどの青果商品の販売や、パートナー企業の立ち上げから運営におけるノウハウ提供と商品販売を行うソリューション提供による収益が挙げられます。
まず、パートナー企業が『Techno Farm』の建設、栽培、運営をし、生産された商品の販売を通して収入を得るモデルであるフランチャイズモデルのソリューションがあります。
商品をスプレッドが買い取り、『ベジタス』ブランドとして販売することも可能で、設計・栽培のノウハウ提供により、スプレッドが工場建設から生産運営までをサポートします。
他にも、パートナー企業様とスプレッドが共同で出資する会社が、用地手配から『Techno Farm』の工場建設、生産、運営を行うソリューションモデルがあります。スプレッドの栽培、運営、販売ノウハウに加え、パートナー企業様のシナジー効果が期待できるジョイントベンチャーモデルとなっています。
自社にノウハウがない場合でも、スプレッドにお任せすることで代行して進めてくれるため安心です。
6.主要な資源
・人工光型植物工場、独自IoTによる栽培管理システム「テクノファームクラウド」
・研究開発から、技術開発、商品開発、生産、流通、販売までをワンストップで行うことが出来る設備、体制
・独自開発のカット野菜加工技術⇒サステナブル
2018年11月から京都府木津川市で運営を開始している「テクノファームけいはんな」と呼ばれる人工光型植物工場には、自動化栽培・高度な環境制御技術・独自IoTによる栽培管理システム「テクノファームクラウド」を導入しており、2020年9月に稼働率※が99%に到達しています。※稼働率:最大生産株数に対する生産実績株数の割合
また、スプレッド内だけで研究開発から、技術開発、商品開発、生産、流通、販売までをワンストップで行うことが出来る設備、体制を持っているのも強みです。
昨今、簡便性ニーズが増えてきている中、カット野菜や惣菜サラダの需要が急拡大しています。そこでスプレッドは、植物工場産レタスを活用したカット野菜の加工技術を独自で開発し、ロングライフ化や、自動化技術の導入による省人化、水資源の削減を実現しました。
結果的に、サステナブルに繋がっています。
7.主要な活動
・パートナー企業の立ち上げから運営におけるノウハウ提供と商品販売
・研究開発、技術開発、商品開発
パートナー企業の立ち上げから運営におけるノウハウ提供と商品販売などのソリューション提供や、研究開発、技術開発、商品開発などのあらゆる開発を主に行っています。
他にも、パートナー企業開拓のための営業も行っています。
8.主要パートナー
・イオングループ、イトーヨーカドーをはじめとする約4,500店舗のスーパー
・共同開発パートナー
・事業会社およびエンジェル投資家など
スプレッドで生産した青果は、イオングループ、イトーヨーカドー、まいばすけっと、ライフ、その他小売・食品加工会社の約100社の約4,500店舗のスーパーと取引を行っています。
そして、『Techno Farm』におけるビジネスパートナーや自動化技術、IoT/AI、植物工場専用種子、生分解性資材などのさまざまな領域での共同開発パートナーがいます。
環境に良いことを行っている企業に積極的に投資を行うESG投資家も中には重要なパートナーとして考えられます。
スプレッドは2022年8月には、事業会社およびエンジェル投資家からの第三者割当増資により、総額40億円の資金調達を実施していて、新技術の開発投資、商品の販路拡大、新規事業の研究開発、海外事業開発への投資を行っていく方針を発表しています。
9.コスト構造
・工場の運営、管理費
・開発費(研究開発、技術開発、商品開発など)
天候などの外的環境に影響されない生産システムで、高品質な野菜を安定供給、さらに自動化技術によって、生産性の向上と作業の標準化を両立した『Techno Farm』という自社工場、パートナー工場などの運営、管理費や研究開発、技術開発、商品開発などの開発費が主要なコストとして挙げられます。
人工光源植物工場での栽培本格化で作物種類増加の実現
スプレッドでは現在、レタスなどのあまり背が高くならない作物がメインで栽培されています。理由としては、葉が重なるような作物は、現在の人工光源の植物工場では十分な光をあてることが技術的・コスト的に難しいことあるためです。
このような側面がある一方で、ロシアのリアット社などでは、完全人工光型植物工場でのトマトやキュウリなどの果菜類の栽培を本格化させている例もあります。LED技術などの発展に伴い植物工場においても栽培できる作物の種類が増えていくことが予測されているため、今後はスプレッドで栽培する作物の種類も増加していくのではないでしょうか。
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