中小企業の製造業DX「今野製作所」をビジネスモデルキャンバスで分析

製造業界は、製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ(サプライチェーン)の強靭化、脱炭素への取り組み、IoT・AIなどデジタル技術の活用をする動きがみられます。
コロナによる売上悪化は2020年後半から回復基調でしたが、2021年から続く半導体不足による自動車や家電の減産や、ロシアによるウクライナ侵攻で燃料・金属・木材など材料価格が高騰し、「鉄鋼・鉱業」や「建材・家具」などの製造業では悪化が続くと見られています。
中小企業は、少数精鋭で業務を進めることが多いため、業務プロセスが属人化してしまっている場合が多いですがDX化を進めることによって、人に依存した業務プロセスを改善した企業「今野製作所」を見ていきましょう。

 

 

今野製作所」とは


引用:https://konno-s.co.jp/

東京都足立区に本社を構える今野製作所は、板金加工、機械修理、油圧機器製造などをメインに行っているものづくり企業です。
従業員数は39人(2021年11月時点)という中小企業ですが、2016年には経済産業省主催のITやデジタルの活用に積極的に取り組み成果を上げた中小企業を認定する「攻めのIT経営中小企業百選2016」に選定されています。同省が公開している、製造業におけるDXの事例をまとめた資料「製造業DX取組事例集」にも掲載されており、積極的にDXに取り組んだ企業であると言えます。

 

 

今野製作所のビジネスモデルキャンバス

では、今野製作所のビジネスモデルについて、ビジネスキャンバスを用いて整理してみましょう。
DX前を「Before」、DX後を「After」で示しています。

 

1.顧客セグメント

Before:一般的な工事関連会社が主体
After:特注品ニーズを持つ工事関連会社が主体

一般的な工事関連会社が主でしたが、リーマンショック後の今野製作所の売上が落ち込んでしまいました。主力商品である油圧機器の特注品製作に注力する方針を立て、特注品ニーズを持つ工事関連会社を顧客とすることで、受注数が増加しました。

 

2.提供価値

Before:一般的な油圧機器の製造
After:複雑な工程が求められる精度の高い特注品の製造

顧客セグメントの変化と同様に、売上の低下に伴い主力商品である油圧機器の特注品製作に注力する方針を立てることで、一般的な油圧機器の製造から複雑な工程が求められる制度の高い特注品の製造に提供価値も変化しました。

 

3.チャネル/販路

Before:ホームページ
After:ホームページ
経済産業省主催の「攻めのIT経営中小企業百選2016」や「製造業DX取組事例集」などに掲載。

DX前後で、ホームページであるのには変わりはありませんが、経済産業省主催の「攻めのIT経営中小企業百選2016」や「製造業DX取組事例集」などに掲載されているためそこで今野製作所の名前を目にする方もいるのではないでしょうか。

 

4.顧客との関係

Before(背景):元々は台帳や伝票も手書きの町工場だった。
After(背景):販売管理パッケージや会計システム、本社と工場をつなぐグループウェアの導入など、2000年前後から地道なIT化を進めてきた。
Before:見積もる製品のマスター管理が不十分で、出荷はしているのに伝票が発行されておらず、顧客から「請求書はいつくるの?」と言われる事も度々あった。
After:問い合わせから受注、生産に至るまで一貫してシステムで管理できるようになり、顧客対応も滞ることがなくなった。

今野製作所は、もともとは台帳や伝票も手書きで行っていました。そのため、見積もる製品のマスター管理が不十分で、出荷はしているのに伝票が発行されておらず、顧客から「請求書はいつくるの?」と言われてしまう部分があるなど上手く回っていない部分がありました。
そこで、販売管理パッケージや会計システム、本社と工場をつなぐグループウェアの導入など、2000年前後から地道なIT化を進め、問い合わせから受注、生産に至るまで一貫してシステムで管理できるようになり、顧客対応も滞ることがなくなりました。
手書きでは、正確さが欠けてしまい連携に抜け漏れなども出てしまうことがあります。
そのため、システムを導入しIT化を進めることで今までの穴を改善していったのです。

 

5.収益の流れ

Before:リーマンショック後の今野製作所の売上は、対前年4割以上も落ち込んでしまい、経営の危機に陥っていた。
After:主力商品である油圧機器の特注品製作に注力することで、受注を増やすことができた。

一般的な工事関連会社が主でしたが、リーマンショック後の今野製作所の売上は、対前年4割以上も落ち込んでしまい、経営の危機に陥っていました。
そこで、主力商品である油圧機器の特注品製作に注力する方針を立て、特注品ニーズを持つ工事関連会社を顧客とすることで、受注数を増やすことが出来たのです。

 

6.主要な資源

Before:現場人材
After:自社で試行錯誤できるノーコードツール「Kintone, Contexer」と適性のある現場人材

今野製作所はノーコードでプログラム開発を行うことが出来るKintoneやContexerを利用することで、業務の流れと進捗を可視化して共有できるようになり、業務の手戻りも防げるようになり、受注までのリードタイムが短縮できました。従業員同士でデータがつながることで、チーム力を発揮できるようになったのです。
そのため、自社で試行錯誤できるノーコードツール「Kintone, Contexer」と適性のある現場人材は必要不可欠な存在であると言えます。

 

7.主要な活動

Before:業務プロセスが不明瞭であり、業務自体が属人化していたため、トラブルが起きたときは担当者の責任になっていた。
After:業務改善プラットフォーム「Kintone(キントーン)」を導入し、問い合わせから受注までの情報共有と技術提案仕様書の作成における業務を管理。
Before:製造工程の異なる事業を複数行っているため、見込生産(MTS)、受注組立生産(BTO)、繰返受注生産(MTO)、受注設計生産(ETO)など複数の生産方式が存在しており、生産管理システムの構築が困難であった。
After:ノンコーディング開発ができる『Contexer』というツールを導入し、トライ&エラーを繰り返しながら自社開発で生産管理システムを構築。

DX前までは、業務プロセスが不明瞭であり、業務自体が属人化していたため、トラブルが起きたときは担当者の責任になっていました。
そして、製造工程の異なる事業を複数行っているため、見込生産(MTS)、受注組立生産(BTO)、繰返受注生産(MTO)、受注設計生産(ETO)など複数の生産方式が存在しており、生産管理システムの構築が困難でした。
そこで、業務改善プラットフォーム「Kintone(キントーン)」を導入し、問い合わせから受注までの情報共有と技術提案仕様書の作成における業務を管理するようにしました。また、ノンコーディング開発ができる『Contexer』というツールを導入し、トライ&エラーを繰り返しながら自社開発で生産管理システムを構築することで属人化していた業務プロセスをシステムで管理できるようになり、顧客対応も滞ることがなくなりました。
また、今野製作所では現在も従業員自身によるノーコードでアプリケーション開発を行っており、2020年からは工場のライブ配信によるコロナ禍ならではの営業活動やIoTでのデータ収集による溶接技能の伝承など、デジタルを活用した新たな取り組みを進めています。

 

8.主要パートナー

Before:外注先、部品仕入先
After:外注先、部品仕入先
コンサルタント(業務可視化)、IT技術者(DB設計)

今野製作所は2010年に、業務の流れを1つずつ検証し、改善していくプロジェクト「業務見える化プロジェクト」を開始しました。業務可視化のコンサルタントの指導を受けながら、丸1年かけて取り組みました。
また、今野製作所がContexerを利用するうえでデータベースの設計については有償でIT技術者に作成を依頼し、それ以外は自社で構築しました。

 

9.コスト構造

Before:設計担当者や営業担当が購買についても対応するなど、特注品製作への移行と合わさって複雑な業務プロセスになっていたことで残業代など人件費が嵩んでいた。
After:受注・出荷、調達、生産などの一連の業務をシステム化に成功したことで、複雑な業務プロセスの対応に費やしていた人件費の削減に成功。

DX前までは、設計担当者や営業担当が購買についても対応するなど、特注品製作への移行と合わさって複雑な業務プロセスになっていたことで残業代など人件費が嵩んでいました。
DX化によって、受注・出荷、調達、生産などの一連の業務をシステム化に成功したことで、複雑な業務プロセスの対応に費やしていた人件費の削減に成功しました。

 

 

ビジネスモデルキャンバスにおけるDX領域

DXをビジネスモデルキャンバスで示すと、どこに特徴があるか、重視したかによって上のような領域に分けることが出来ます。
今野製作所では、業務改善プラットフォーム「Kintone(キントーン)」を導入し、問い合わせから受注までの情報共有と技術提案仕様書の作成における業務を管理するようにしました。また、ノンコーディング開発ができる『Contexer』というツールを導入し、トライ&エラーを繰り返しながら自社開発で生産管理システムを構築することで属人化していた業務プロセスをシステムで管理できるようになり、顧客対応も滞ることがなくなりました。そして、従来はなかった自社で試行錯誤できるノーコードツール「Kintone, Contexer」と適性のある現場人材が重要な資源として加わりました。
そのため、上の図において、今回の「今野製作所」は”オペレーションのDX”であると言えます。

 

 

従業員全体のITスキル底上げで高スキル人材採用せずDX化が可能に

中小企業などはDX化を行う上で高スキル人材を新しく採用する必要があると考えている企業もあり、壁になっているかと思います。しかし、従業員全体のITスキルを底上げすることで、出来る範囲が徐々に広がり新しい人材を採用せずに今いる人材の中でDX化を行うことが可能です。今野製作所もITに詳しい人材を新しく採用することなく、従業員全体のITスキルを底上げすることでDX化を成功させました。
また、今野製作所の今野社長は新たなITシステムを作る際には、他社に依頼するのではなく自社で作り上げた方がメリットは大きいとも話しています。
DX化を進めるためのスキルを持っている人がいないと悩む前に、まずトップ層、経営者層が知識をつけ、従業員全体のスキルを伸ばしていくことがDX化への一歩のなるのではないでしょうか。

 

 

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