建設業界DX「KMユナイテッド」をビジネスモデルキャンバスで分析

建設業界においては、官公庁工事や民間工事がコロナの反動で大手建設会社を中心に市場は上昇傾向ですが、人手不足や外注費の増加、ウクライナ情勢も加わって建材費の上昇などが顕著になっており、不安定な状況が続いています。
業界の動向としては、大手ゼネコンを中心としたBIM(3次元の建物のデジタルモデル)によるデータ活用、サプライチェーン改革、施工ロボットの共同開発などが行われています。

 

 

KMユナイテッド」とは

建設業界・塗装業にあって古い慣習に囚われない社内改革を行った株式会社竹延が「業界を変える思い切った改革」を進めるため、古いしがらみにとらわれないよう立ち上げたのがKMユナイテッドです。
建設業界の縦割りの考えに固執した従来型の建設専門工事会社ではなく、他にはなかったような人材育成システムにより、スタート事業の建築塗装業のみだけにとどまらず、左官工事、耐火被覆工事、防水工事などの次々に事業拡大をしている企業です。

 

 

KMユナイテッドのビジネスモデルキャンバス

では、KMナイテッドのビジネスモデルについて、ビジネスキャンバスを用いて整理してみましょう。
DX前を「Before」、DX後を「After」で示しています。

 

1.顧客セグメント

Before:職人を抱える建設会社
After:職人を抱える建設会社、職人の出面(勤怠)管理に悩んでいる建設会社、職人の技術伝承に悩んでいる建設会社、現場監督の過剰業務に悩んでいる建設会社

職人を抱える建設会社に加え、職人の出面(勤怠)管理に悩んでいる建設会社や職人の技術伝承に悩んでいる建設会社、現場監督の過剰業務に悩んでいる建設会社など同じ悩みを抱えていたほかの建設会社にも課題解決のためサービスを提供しています。

 

2.提供価値

Before(親会社):紙の出勤簿の記入など、面倒なアナログ作業のため、どの職人がどの現場に何人居るかという出面(勤怠)情報を親会社がリアルタイムに把握できなかった。
After(業界全体):出面(勤怠)情報を管理するアプリ「コネキャリ」を開発し販売したことで、親会社だけでなく同業他社も出面情報がリアルタイムに把握できるようになった。
Before(業界全体):従来の職人は、個人事業主として、日給・月給制が一般的であり人手が安定しなかった。
After(親会社・自社):職人を社員化し、「週休2日」「社会保険有り」「退職金制度」などの処遇で定着を図った。
Before(業界全体):職人の技術を若手は見て盗んでいた。
After(業界全体):職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ「技ログ」で若手も短期間でベテラン職人の技術を習得できるようになった。
Before(業界全体):現場での工事の進捗管理だけでなく、書類整理などの事務処理で残業も多く、現場監督の人手不足も深刻化していた。
After(業界全体):事務処理をリモートでサポートする「建設アシスト」で現場監督が本来の業務に集中できるようにし、残業を減らした。

紙の出勤簿の記入など、面倒なアナログ作業のため、どの職人がどの現場に何人居るかという出面(勤怠)情報を親会社がリアルタイムに把握できないなどの課題を抱えていました。
そのため、人材を最大限に活用できる配置が出来ていないという事態も起きていました。
出面(勤怠)情報を管理するアプリ「コネキャリ」を開発し販売したことで、親会社だけでなく同業他社も出面情報がリアルタイムに把握できるようになりました。
また、従来の職人は、個人事業主として、日給・月給制が一般的であり人手が安定しませんでしたが、職人を社員化し「週休2日」「社会保険有り」「退職金制度」などの処遇改善することで定着を図りました。
教育面では、「背中を見て学ぶ」という古の考えから、職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ「技ログ」で若手も短期間でベテラン職人の技術を習得できるようになりました。
現場での工事の進捗管理だけでなく、書類整理などの事務処理(全体業務の50%程度)で残業も多く、現場監督の人手不足も深刻化していましたが、事務処理をリモートでサポートする「建設アシスト」で現場監督が本来の業務に集中できるようにし、残業を減らすことにも成功しました。

 

3.チャネル/販路

Before:対面
After:オンライン(建設アシスタント)、職人の出勤簿などの入力・管理の問題を解決するアプリ、職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ

対面から建設アシスタントがオンラインで作業するなどに加え、職人の出勤簿などの入力・管理の問題を解決するアプリや職人の技術を若手に伝承するための動画アプリなどを活用するよう変化しました。

 

4.顧客との関係

Before:職人の派遣
After:職人の派遣、出面(勤怠)管理アプリ・技術伝承アプリを通じたライセンス販売のための交渉、現場監督の管理業務を代行する建設アシスタントのリモート派遣

職人の派遣に加え、出面(勤怠)管理アプリ、技術伝承アプリを通じたライセンス販売のための交渉、現場監督の管理業務を代行する建設アシスタントのリモート派遣などより幅広いサービスを提供するようになりました。

 

5.収益の流れ

Before:職人の派遣・作業料
After:職人の派遣・作業料、アプリのライセンス料、建設アシスタントの派遣料

従来の収益としてあった職人の派遣・作業量の他に、出面(勤怠)管理アプリ「コネキャリ」や職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ「技ログ」のライセンス料や、建設アシスタントの派遣によって収益を出しています。

 

6.主要な資源

Before:日給・月給制度で働く個人事業主としての職人層、若手が見て盗むための技術力
After:社員としての、女性や外国人、中高年など多様な職人層、現場監督の事務作業をリモートで支える建設アシスタント

DX後には、個人事業主としての職人層だけでなく、社員として女性や外国人、中高年など多様な職人層や現場監督の事務作業をリモートで支える建設アシスタントも重要な人材として挙げられます。

 

7.主要な活動

Before:高待遇をウリにした人材の確保
After:若手に限らず、女性、外国人、中高年など多様な人材確保に向けたハローワーク、学校への呼びかけと、働きやすい環境・文化の醸成。
出面(勤怠)管理アプリ「コネキャリ」、職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ「技ログ」の開発と販売。
建設アシスタント派遣サービス「建設アシスト」の開発と提供。

週休二日制すら定着していない建設業界に「全員社員化、完全週休二日制、有給休暇取得の奨励、介護等による時短勤務OK」など 、高待遇をウリにした人材の確保を行いました。
しかし、採用の応募は増えず・・・。若手に限らず、女性、外国人、中高年など多様な人材確保に向けたハローワーク、学校への呼びかけと、働きやすい環境・文化の醸成を行いました。すると、応募してもらえる人材が増えたのです。
業務面では、出面(勤怠)管理アプリ「コネキャリ」、職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ「技ログ」の開発と販売や建設アシスタント派遣サービス「建設アシスト」の開発と提供を行いました。

 

8.主要パートナー

Before:親会社「竹延」
After:親会社「竹延」、ハローワーク(多様性人材の確保)、学校(若手人材の確保)

親会社「竹延」の他に、多様性人材の確保においてハローワークや若手人材の確保として学校が主要パートナーして挙げられます。

 

 

9.コスト構造

Before:職人の日給・月給
After:職人・建設アシスタントの給与・手当、アプリの開発・運用費

DX後のコストとしては、職人・建設アシスタントの給与・手当やアプリの開発・運用費が挙げられますが、これらによって施工管理者や事務部門の時間や人件費のコストは削減することに成功しました。
出面(勤怠)管理アプリ「コネキャリ」導入後には、事務部門の月間作業時間は37時間20分から24時間40分へと34%削減されたそうです。また、建設業退職金共済証紙申請手続きの作業の時間は34時間から18時間へと47%も削減され、人件費も年間約100万円の削減効果が得られたました。

 

 

ビジネスモデルキャンバスにおけるDX領域

 

DXをビジネスモデルキャンバスで示すと、どこに特徴があるか、重視したかによって上のような領域に分けることが出来ます。
KMユナイテッドは、出面(勤怠)管理アプリ「コネキャリ」で人件費や事務処理などにかかる時間のコストを削減したうえで、職人の技術を若手に伝承するための動画アプリ「技ログ」の開発と販売などによって収益を出したと言えます。
そのため上の図において、今回の「KMユナイテッド」は”収益のDX”であると言えます。

 

 

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