ネットすら無縁だった企業の店舗DX「グッデイ」をビジネスモデルキャンバスで分析

テレワークなどが増え、家の中を充実させたい、日常に必要なものを買いそろえたいといった際にDIYからプロ向けの工具・資材、ペットフード、雑貨、小物、生活日用品なども数多く取り揃えているホームセンターはとても便利ですよね。
「コーナンPRO」など、建築資材・工具・金物を扱う職人向けプロショップ専門店が好調で、今後もプロショップ専門店への置き換わりが進むと見られています。
コロナ以前は売上が横ばいの傾向がありましたが、コロナにより衛生用品やテレワークによる商品需要が高まりました。しかし、コロナ特需もピークを過ぎており、中長期的にみると厳しい市場環境であるといえます。
そんな中、どのように戦っていくのか考えていくことが重要です。
DXによって大きな変化を得た企業「グッデイ」について見ていきましょう。

 

 

グッデイ」とは

株式会社グッデイは、ホームセンター事業であるグッデイ、ELEKITというブランドで電子工作キットを販売している会社、それから2017年からデータ分析事業をやっているカホエンタープライズという会社の3つの持株会社で運営をしています。
「グッデイ」は、北部九州を中心に展開するホームセンターです。
一般的な商品から専門的な商品まで幅広く取り扱っており、オレンジ色一面の大胆な建物と開放的な店内環境が特徴です。

 

 

グッデイのビジネスモデルキャンバス

では、グッデイのビジネスモデルについて、ビジネスキャンバスを用いて整理してみましょう。
DX前を「Before」、DX後を「After」で示しています。

 

1.顧客セグメント

Before:工具や木材、金物などを求める職人層
After:グッデイの「家族でつくるいい一日」というコンセプトに当てはまる家族層

工具や木材、金物などを買い求めに来る職人層だけでなく、グッデイの「家族でつくるいい一日」というコンセプトに当てはまる家族層も顧客セグメントとして挙げられるようになりました。

 

2.提供価値

Before(顧客):他のホームセンターにはない工具や木材、金物など職人向け商材の提供
After(顧客):データ分析から見えた顧客ニーズに応える商品の提供と自前の物流センターとの組み合わせによる適正在庫の確保
Before(従業員):店舗スタッフの多くが「仕事=作業」と捉え、ミス無くルーチンワークをこなすことが大事だと考えていた。また、失敗を恐れて新しい取り組みができていなかった。
After(従業員):Tableau という誰でも簡単にデータ分析ができるツールを導入したことで、店舗スタッフに楽しい感情が芽生え、新しい取り組みを自発的に行うようになった(パート社員からも提案が出るようになった)

DX前は、蓄積されていた毎日の売上データが日別、商品別、店別のデータを、分析Excelで分析するしかなくデータ加工などに手間や時間を要するためせっかくのデータを上手く活用できていない状況でした。
そこで、グッデイはBIツールのTableauを導入しました。Tableauの導入によって、それまで商品別の売上は紙の帳票を確認していたものやExcelで見ていたものが数字を更新するだけで簡単にレポートが作成できるようになり、データ分析から見えた顧客ニーズに応える商品の提供と自前の物流センターとの組み合わせによる適正在庫の確保が可能になりました。
また、Tableauを導入し、誰でも簡単にデータを実際に分析する機会ができることで店舗スタッフに楽しいという感情が芽生え、パート社員からも提案が出て、新しい取り組みを自発的に行うようになり、スタッフの行動にまで変化が現れました。

 

3.チャネル/販路

Before:【広告】折込チラシのみ
After:【広告】テレビCM
【顧客向け】ホームページ、LINE公式アカウント

グッデイは折り込みチラシのみの広告を行っていましたが、テレビCMや、顧客向けとしてホームページ、LINE公式アカウントを活用することでお客様の来店に繋げています。

 

4.顧客との関係

Before:店舗での顧客からの問い合わせに対し、自前の在庫管理システムは各店舗にある1台のパソコンからしかアクセスできず、商品在庫の確認に行列ができていた(遅い対応)
After:店舗での顧客からの問い合わせに対し、クラウドのPOSシステムにより、手持ちのスマホやタブレットからその場で商品在庫を確認(早い対応)

DX前は、店舗での顧客からの問い合わせに対し、自前の在庫管理システムは各店舗にある1台のパソコンからしかアクセスできないため、商品在庫の確認に時間がかかっていました。
DXを行い、クラウドのPOSシステムを利用することで、手持ちのスマホやタブレットからその場で商品在庫を確認できるようになり、素早い対応が可能となりました。
DX化をすることによって結果的にスタッフの負担も減らし、顧客満足度の向上にもつながっています。

 

5.収益の流れ

Before:商品の売上高(2000年から下降気味)324億円(2016年3月)※2016年柳瀬社長就任
After:商品の売上高390億円(2022年3月)※2016年比 1.2倍

商品の売上高は、業界全体的にも言えますが2000年から下降気味で、324億円(2016年3月)でした。
その後、2016年に柳瀬社長が就任し、DXの推進を始めました。
BIツールTableau導入によって、データ分析を行い店舗づくりに活用、また、商品の売上や在庫情報のデータを有償で取引先に提供するなどの取り組みができるようになり、商品の売上高が2016年比 1.2倍の390億円(2022年3月)となりました。

 

6.主要な資源

Before:
【在庫管理】自前の在庫管理システム
【データ分析】Excel
【連絡手段】紙と固定電話、FAXに限定
After:
【在庫管理】クラウドPOSシステム
【データ分析】BigQuery + Tableau
【連絡手段】Google Workspace でのメール、チャット、ビデオ通話
Before:3人のエンジニア
After:カホエンタープライズも含め30人のエンジニア

グッデイは、DX前には各店舗にある1台のパソコンからしかアクセスできない自前の在庫管理システムを利用していたため、商品在庫の確認に時間がかかっていました。
データ分析ではExcelで毎回データをダウンロードし、ピボットテーブルで加工…など手作業で行うため、大変時間がかかっていてこの手作業によって残業をしてしまうという悪循環も発生していました。また、メールも利用していなく連絡手段は紙と固定電話、FAXに限定されている状態でした。会議室の予約も会議室前のホワイトボードを利用していたのです。
DX後には、クラウドPOSシステムによって手持ちのスマホやタブレットからその場で商品在庫を確認できるようになり、BigQuery + Tableauでデータ分析を行うことができExcelでデータ分析を行う時間や手間も最小限に抑えることが出来ました。
また、Google Workspace でのメール、チャット、ビデオ通話を利用することでスムーズに連絡を取ることが出来るようになり、情報共有や詳細を手軽に聞くことができるようになり、簡単に情報連携ができるようになっています。

 

7.主要な活動

Before:【店舗運営】各店舗による、感覚や経験に頼る属人的な店舗運営で賄っていた
After:【店舗運営】顧客の購買記録等、データを活用して事実に基づいた商品のトレンド予測や無駄のない仕入れを実現
Before:【データ活用】Excelで処理できるデータ量での限定的な分析、各担当者がよくわからない中で属人的な分析を実施
After:クラウドの BigQuery + Tableau で全データを多角的に分析
「グッデイデータアカデミー」という勉強会や、「グッデイX」というデータ活用検討会議を行い、各部署に1人以上のスペシャリストを育成

DX前は、各店舗による、感覚や経験に頼る属人的な店舗運営で賄っていました。
また、Excelで処理できるデータ量での限定的な分析、各担当者がよくわからない中で属人的な分析しか行うことが出来ていませんでした。
DX後は、顧客の購買記録等、データを活用することによって、事実に基づいた商品のトレンド予測や無駄のない仕入れを実現し、全データを多角的に分析するため、データベースと分析ツール BigQuery + Tableau を利用することで全データを多角的に分析することが出来ています。さらに、「グッデイデータアカデミー」という勉強会や、「グッデイX」というデータ活用検討会議を行い、各部署に1人以上のスペシャリストを育成しています

 

8.主要パートナー

After:カホエンタープライズ

2017年からデータ分析事業を行っているカホエンタープライズが主要パートナーとして挙げられます。
データをしっかりと分析し活用することによって、店舗づくりに役立て売上アップにつなげています。

 

9.コスト構造

Before:店舗スタッフの人件費、エンジニアの人件費、在庫管理システムの維持費
After:店舗スタッフの人件費(変わらず)、エンジニアの人件費(増)、クラウドシステム利用料

グッデイでは毎週勉強会を開催し、Tableauの使い方やプログラムや統計の勉強を部門横断で行いました。Tableauの初心者向けの資格試験についても、会社がお金を出し取得推奨もしていく中で、行っていきたいITプロジェクトが出てきたため中途でエンジニアを増やしました。
また、手軽に在庫を管理できるように自前の在庫管理システムを利用していましたが、クラウドシステムへと移行し、利用料としてコストがかかっています。

 

 

ビジネスモデルキャンバスにおけるDX領域

DXをビジネスモデルキャンバスで示すと、どこに特徴があるかによって上のような領域に分けることが出来ます。
グッデイは、誰でも簡単にデータ分析ができるツールを導入し顧客の購買記録等、データを活用して事実に基づいた商品のトレンド予測や無駄のない仕入れを実現することで顧客への新しい価値提供を達成しました。
そのため、上の図において、今回の「グッデイ」は”価値のDX”であると言えます。

 

 

変革するために1歩を踏み出す重要性

グッデイは、会社のネットワークがインターネットにつながっていなくネットにつなぐことが出来ない、メールアドレスを社員のだれも持っておらず、メールもできない状況だったという驚きの状態だったそうです。そのため、DXを行っている中でも社員はネットリテラシーがなくツールなども使い方の勉強から必要となりました。
そこで勉強会やツールの使い方のレクチャーを行うことで、社員自身もデータ分析に楽しさを感じたり、今まで時間を要する作業についても簡単に短時間で行うことが出来るなどそれが結果、顧客への対応にもつながり、良い方向へ向かっていきました。
DXを行う前には、大変で時間や費用を要するものに感じるかと思いますがDX後には更なる時間や費用の削減につながることも多いためまず変革に向かう1歩を踏み出すことの重要性を感じました。

 

 

BizMakeならビジネスフレームワークのテンプレートが無料で使える

BizMakeではご紹介したビジネスモデルキャンバスなど、厳選されたフレームワークがどなたでも無料で作れます。

スプレッドシートを使うよりもシームレスかつ見やすくシートを作成できますので、ぜひお気軽に下記バナーをクリックして登録してください。

SNSでフォローする