
VTuber企業として初上場し公開価格の3.1倍の初値を記録!「ANYCOLOR」をビジネスモデルキャンバスで分析
子供から大人まで利用される動画視聴サービスYouTubeで「VTuber」と呼ばれるバーチャルYouTuberが近年人気を集めてきています。
VTuberは2Dや3Dのキャラクターをアバターに用い、ネット上で活動するバーチャルYouTuberのことです。
YouTube上で、ライブ配信を行ったり実際にリアルでのイベントも実施していて、オリジナルグッズを販売するなど活動の幅は広いと言えます。
そのVTuberによるプロジェクト「にじさんじ」を運営し、注目を集めているANYCOLORについて今回は見ていきましょう。
目次
「ANYCOLOR」とは
引用:https://www.anycolor.co.jp/
ANYCOLORは、2017年に当時早稲田大学の学生であった田角陸氏が設立した「いちから株式会社」が前身のエンターテインメント企業です。
多くの人気VTuberを抱えるANYCOLORでは、VTuberのプロジェクト「にじさんじ」を運営しています。「にじさんじオフィシャルストア」などでオリジナルグッズの販売や所属ライバーのコンサートなどリアルイベントをも行っています。2022年6月14日、上場後初となる2022年4月期(2021年5月~2022年4月)の通期決算を発表し、また、16日時点で、ANYCOLORの時価総額は2714億円となり注目を集めている企業です。
ANYCOLORのビジネスモデルキャンバス
(水色=現在の事業について、緑=今後の事業について)
では、ANYCOLORのビジネスモデルについて、ビジネスキャンバスを用いて整理してみましょう。
1.顧客セグメント
・YouTube視聴者
・VTuberに興味があり、実際にイベントなどで楽しみたい人
・メタバース事業で起業を考えている人
YouTube視聴者層の中でも、VTuberに興味があり、実際にイベントなども実施しているためリアルイベントなども楽しみたい人が挙げられます。
今後の顧客としては、メタバース事業で起業を考えている人など視聴者以外へのサービスも提供する可能性も考えられます。
ANYCOLORのバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かした独自のエンターテイメントの提供のスキルやノウハウを活用したソリューションも提供していくと面白いなと思います。
2.提供価値
【現在】
・VTuberを通じて新しいメディア/コンテンツ体験を提供、エンタメ経済圏を加速する
・テクノロジーを使って新体験を提供し、エンタメ経済圏を加速する
【今後】
国内外ともにバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かして独自のエンターテイメントの提供
通常、VTuberなどのバーチャルYouTuberはYouTubeの動画上だけで楽しむことしかできないという印象を持ちますが、動画越しだけでなくリアルイベントでも楽しむことが出来ます。
また、テクノロジーを使って視聴者へ新しい体験を提供し、エンタメ経済圏を加速しています。
今後は、国内外ともにバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かして独自のエンターテイメントの提供をしていくとしています。
3.チャネル/販路
【現在】
・YouTube
・リアルイベント
・ECストア「にじさんじオフィシャルストア」
【今後】
・バーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かして独自のエンターテイメント経済圏を拡大
ライブ配信などを行うYouTubeの他にも、所属ライバーのコンサートなどリアルイベントやオリジナルグッズの販売を行っているECストアECストア「にじさんじオフィシャルストア」があります。
今後は、バーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かして独自のエンターテイメント経済圏を拡大していくことによってチャネル拡大を考えています。
4.顧客との関係
【現在】
・YouTubeで手軽に視聴することが出来る
・所属ライバーのコンサートなどリアルイベント
【今後】
・英語圏でもライブイベントなどの実施
YouTubeで手軽に視聴することが出来るため、すぐに視聴することが出来ます。
そのため、視聴者は身近な感覚を持ち興味を持つ機会にも繋がるでしょう。
他にも、所属ライバーのコンサートなどを開催しているため動画上だけでなくリアルイベントでも楽しむことが出来る点が大きいです。
今後は、英語圏でもライブイベントなどの実施を行っていき海外でもYouTubeでのライブストリーミング以外の顧客接点を作っていくよう考えています。
5.収益の流れ
【現在】
・投げ銭「スーパーチャット」や月額コミュニティ(YouTubeメンバーシップなど)をはじめとする「ライブストリーミング」の売上
・コマース事業でのコンテンツの売上(「にじさんじオフィシャルストア」などで販売されるオリジナルグッズ等)
・所属ライバーのコンサートなどリアルイベントによる収益
・企業とのPRやタイアップ、コラボなどで得られる収益
【今後】
・国内外ともにバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かした活動による収益
ANYCOLORの収益の柱は4つあります。
まずは、ホームグラウンドであるYouTubeでそれぞれのVTuberが配信した際に視聴者から投げられる投げ銭(スーパーチャット)や月額コミュニティ(YouTubeメンバーシップなど)をはじめとする「ライブストリーミング」の売上があります。
2つ目に、公式のECサイト「にじさんじオフィシャルストア」などで販売されるオリジナルグッズなどコマース事業でのコンテンツの売上です。
VTuberがデザインしたTシャツやマグカップなどのグッズや、「ボイス」と呼ばれる音声コンテンツも人気があります。12月で言うとクリスマス、2月であればバレンタインなど季節に応じたドラマCDのようなボイスコンテンツは根強い人気を誇っています。
各VTuberの誕生日の前後には記念グッズも企画されるなどファンが楽しめるような“推し活”が良く考えらえていると感じます。
3つ目は所属ライバーのコンサートなどのリアルの場でのイベント収益です。
近年ではアーティストとして、メジャーデビューを果たすライバーも増えてきているとのことで、今年の10月には創業以来最大規模のイベント「にじさんじフェス2022」を幕張メッセで開催することを予定しています。
4つ目が「案件」とも呼ばれるプロモーションで、企業の新商品やゲーム、サービスなどのPRやタイアップ、コラボなどで得られる収益のことを指します。
VTuberの活動領域の拡大とともにマネタイズの幅も広がっていると言えます。
ANYCOLORでは、この4つの収益源を英語圏をはじめとする海外でも展開していき、より多くの方への展開を考えています。
国内外ともにバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かした活動による収益を増やしていくでしょう。
6.主要な資源
【現在】
・所属ライバー
・動画やコンテンツ
・自社のVTuberのIP
所属ライバー(VTuber)や、YouTubeにアップされている動画など今後も残るコンテンツが挙げられます。
ANYCOLORは、VTuber市場の黎明期よりいち早く事業を拡大させることでパイオニアとしての地位を確立しており、他の企業と比較してもVTuberチャンネル数及びYouTube総再生回数が突き抜けて1位です。
そのため、他社の参入障壁も高いと言えます。
他にも、自社のVTuberのIPを保有しているため VTuberの高いリテンション率を図ることができ、多様な収益源の確保ができています。
7.主要な活動
【現在】
・VTuberプロジェクト「にじさんじ」の運営
・オリジナルグッズなどの販売によるコマース事業
・所属ライバーのコンサートなどのリアルイベントの開催
【今後】
・VTuberの活動の拡がりに伴うTAMの拡大(国内アニメ市場、動画広告市場、国内音楽市場、海外アニメ市場への展開)
・国内外ともにバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かして独自のエンターテイメント経済圏を拡大
・VTuber企業と言えば「ANYCOLOR」で、企業案件、タイアップ、コラボなど案件を増やす
ANYCOLORは、VTuberの音声を録音したドラマCDなどの「デジタル商品」と 雑貨・小物アパレルなどオリジナルのグッズ販売のコマース事業、所属ライバーのコンサートなどのリアルイベントの開催を含めたVTuberプロジェクト「にじさんじ」の運営を行っています。
今後は、VTuberの活動の拡がりに伴うTAM※の拡大(国内アニメ市場、動画広告市場、国内音楽市場、海外アニメ市場への展開)を考えています。
決算資料には、複数のVTuberでユニットを組成し、ユニット活動を通じてVTuberあたりの魅力の向上し、新規ファンの獲得及び既存ファンのエンゲージメント向上を図るとしています。
また、新人・既存VTuberともに積極的にユニット展開を実施していきます。歌唱、演技、ダンス、企画力などの配信技術や、配信者マインドの育成を通じて中長期で活躍できるVTuberをプロデュースし、英語圏をはじめとした海外展開の更なる深化を目指していきます。
海外展開「NIJISANJI EN」に英語圏におけるVTuberの積極デビューを通じて、国内と同様の立ち上がり時のモメンタムを確認していて高い成長性が見込まれており、国内ビジネスと比較してライブストリーミング領域の比率が高い状況であり、今後更なるエコシステムの拡大余地があると考えられています。
(現在の内訳:ライブストリーミング:51.8%、プロモーション:3%、コマース:45.1%、ライブイベント:0%)
国内外ともにバーチャル世界/メタバースにおける有名人としてのVTuberの知名度・ブランド力を活かして独自のエンターテイメント経済圏を拡大していき、同時にVTuber企業と言えば「ANYCOLOR」となることによって、企業案件、タイアップ、コラボなど案件を増やしていくことで今後もより一層成長していくことが出来るでしょう。
※TAM=Total Addressable Market。実現可能な最大の市場規模のこと。企業側が新規に立ち上げたサービスや商品などを使ってリーチできるターゲット層の最大の大きさ、サービスの需要の大きさを表す。
8.主要パートナー
【現在】
・所属ライバー
・企業案件の顧客企業
・イベント制作企業/コンテンツ制作企業
【今後】
・国内、海外のVTuberファン
所属ライバーはもちろんのこと、タイアップやPRを行う企業案件の顧客企業やリアルイベント、オリジナルグッズ販売ではイベント制作企業・コンテンツ制作企業に協力してもらい、顧客へサービスを提供することを実現しています。
国内だけでなく、英語圏をはじめとした海外のVTuberのファンも獲得することでより売上を向上させることが出来るでしょう。
9.コスト構造
・デザイナー、エンジニア、映像制作等従業員や所属ライバーの人件費
・オリジナルグッズ販売を行うECサイトの運営費
デザイナー、エンジニア、映像制作等従業員や所属ライバーの人件費やオリジナルグッズ販売を行うECサイトの運営費などが挙げられます。
VTuberを本業とする企業として初めて上場。
公開価格の3.1倍の初値が付いた理由とは?
ANYCOLORのVTuberは現在では英語圏にも進出し、韓国語、中国語で配信するライバーも活躍しています。
この活躍に比例し、2022年6月8日、東証グロース市場にVTuberを本業とする企業として初めて上場し、SNSでも注目を集めました。
ANYCOLORでは、YouTubeでのライブ配信の他にも、ライバーによるコンサートなどのリアルイベント、ECストア「にじさんじオフィシャルストア」でのグッズ販売など幅広い収益源があります。
これは、VTuberに特化したサービス提供によるエンタメ経済圏の拡大を実現していると言えるでしょう。
6月8日、東証グロース市場にVTuberを本業とする企業として初めて上場を果たしました。
初値は、公開価格1530円の3.1倍である4810円を付けました。
「いちから」として2017年に創業してから6年目での上場となり、2022年4月期の業績予想は、売上高が132億5900万円(前期比73.6%増)、営業利益が37億8500万円(同160.7%増)、純利益が24億9700万円(同166.4%)となっています。
これほどの初値を付けた理由としては、やはり現在の他社に参入を許さないパイオニアとしての業績やYouTubeの再生回数などの成績や今後の英語圏をはじめとした海外へのビジネス強化などの成長性を掛け合わせた結果であると言えます。
また、ANYCOLORでは自社でVTuberのIPを保有しているのも大きな強みだと言えます。
現在の業績で十分に結果があるだけでなく、今後の成長性も見込める点が今回大きく注目されるほどの初値を付けた理由であると言えます。
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