
ワークマンのビジネスモデル、その強さの源泉は?
コロナ禍により家にいる時間が増えるなか、人が集まる密な場所を避けるために自然環境の多い場所へ進んでお出かけしている方は多いのではないでしょうか?
ワークマンと言えば、工事現場で働く職人のワークウェアのイメージが従来は強かったのですが、ここ数年で「カッコよくて機能性が高いのに、ものすごく安いアウトドアアパレル」として認知されています。
この記事では、ワークマンのビジネスモデルについて、ビジネスモデルキャンバスを通じてクローズアップしていきます。
目次
ワークマンとは?
群馬県前橋市のスーパーマーケット「いせや」(現・べイシア)の一部門がスピンアウトし、1982 年に「職人の店ワークマン」としてワークウェアに特化した店舗をFCとしてスタート、1982 年に「株式会社ワークマン」を設立しました。企業理念として「For the Customers」を掲げ、職人や工場勤務者に、高機能・高品質でありながら低価格な商品を販売しています。
設立以来成長を続けており、現在はこれまで進出できていなかった宮崎県にも店舗展開し、47 都道府県に 906 店舗(2021年3月末時点)を出店しています。職人向けのワークウェア・グッズを提供する専門店としての評価は高かったのですが、近年のアウトドアブーム,ランニングブームが追い風になり、高機能の衣料品を安価に購入できる店として、これまではターゲットとしていなかった一般消費者からも人気を集めるようになりました。
2018 年には高品質・高価格が当たり前のアウトドアブランドに参入。スポーツ専門店の新業態「WORKMAN Plus」を発表し、それまでは積極的に行ってこなかったSNSを活用したインフルエンサーマーケティングを強化しています。
ワークマンの作業服は原価率 65%もかけた素材の良さや縫製が丈夫であることから数年使ってもクタクタにならないと人気を博しています。
ワークマンのビジネスモデルキャンバス
ワークマン全体について、ビジネスモデルキャンバスで表していきます。
1. 顧客セグメント
冒頭に記載した通り、ワークウェアを中心に展開してきたため第一には工事現場や製品工場で働く方が挙げられます。
ただしここ数年は健康志向の高まりやコロナ禍によるアウトドア・スポーツウェアとしてのニーズが高まり、若年層から高齢者まで顧客セグメントが広がっています。
2. 提供価値
高機能・低価格、ライバルを作らないブルーオーシャン戦略が有名です。65%とされる原価率はアパレル業界では非常識で、他者からすると同じ品質のウェアを作ろうとした場合には販売価格はどうしても高くなってしまいます、そのためライバル企業は出て来ず、結果として非常にユニークなポジショニングを取っています。
また商品投入を判断する際に最初に販売価格を設定すること。市場ニーズに真正面から向き合うこのやり方も異端と言えます。
3. チャネル/販売
2021年には悲願となる宮崎県へ進出、全国47都道府県900店超の店舗展開を達成しています。また、FCによる地域密着経営が特徴です。店長は10~20年地元で暮らす夫婦を抜擢するため、短期間で辞めてしまう可能性は低く、本部以上に地域事情に精通していることから季節感や在庫の感覚も高いでしょう。
また特徴的なのはSNS戦略(インフルエンサーマーケティング)です。高機能低価格、さらにデザインもよいため、自社メディア(Instagramなど)でのマーケティングは大手メディアやアウトドア雑誌などにも数多く取り上げられており、レバレッジの効いたプロモーションを展開しています。さらには自社ECサイトの来訪強化のために最近では楽天市場からの撤退を敢行しました。
4. 顧客との関係
上述した流れで、店舗への来訪を促す取り組みがユニークです。大手アパレルECサイトと同じようにECサイトでは1万円を超える場合は送料無料、ただし店舗受け取りの場合は送料無料をうたっており、店舗への来店を促す流れができています。
店舗に来ることで、ほかの商品の手触りも試すことができ、品質への信頼感からついで買いをしたり、次にほしいアイテムを見つけることもあるのではないでしょうか。
なお値下げをしないポリシーなども相まって、メールマガジンは配信しておらず、その面ではユーザーとの接点は必要最低限に押さえられています。
5. 収益の流れ
ワークマンはFC展開をメインにしていることから、ワークマン自体は従業員数はそれほど多くありません。収益は主に2つで、ひとつがFC加盟店からのロイヤリティで、もうひとつが直営店の売上です。
6. 主要な資源
- FC加盟店運営ノウハウ
- 模倣が難しいユニークな経営手法(値下げをしない、仕入れコストを徹底的に抑える、原価を高く・価格を安く…etc)
7. 主要な活動
- FC加盟店への商品供給
8. 主要パートナー
FC加盟店と海外の生産工場です。
海外の生産工場は主に中国(多くの地域に協力工場がある)に任せていますが、メインとなるワークウェアはトレンドの変化が少ない商品のため、協力工場の閑散期に大量注文をかけることで大幅なコスト圧縮に努めています。
9. コスト構造
一般的にアパレルウェアの原価率は30%とされるなか、ワークマンは原価率65%というある意味狂気を感じるほどの原価率をキープしています。
これには上述のような圧倒的なコスト圧縮はもちろん、販売価格を決めてから商品開発を行う徹底的なお客様目線に起因しています。
ワークマンの強みは、圧倒的なお客様目線、徹底的なコスト圧縮、自社ノウハウの横展開
ワークマンで買い物をしたことがある方であればご存知かもしれませんが、ワークマンの店舗は必要最低限の装飾で、とてもさっぱりしています。また店員さんに声をかけられる、ということもありません。
ワークマンプラスとワークマンは別業態ですが、ワークマンの店舗のなかにも一部、ワークマンプラスの商品は置かれており、オンラインでは売り切れだった商品が店舗に行くと在庫がある、といった店舗ファーストな体験も長期的に考えるとワークマンのブランディングとして機能していると感じます。
売価から逆算する圧倒的なお客様目線、徹底的なコスト管理、そして高機能ワークウェアを販売してきたノウハウを使った横展開(ワークマンプラス、ワークマン女子)による新たな顧客開拓が、ワークマンの強さの秘訣ではないでしょうか。
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