TESLA(テスラ)のビジネスモデルを、ビジネスモデルキャンバスで解説

自動車産業にとって現在のトレンドキーワードは「電気自動車」でしょう。時代とともに環境への配慮が求められ、日本でも「EV」の生産が進んでいます。

電気自動車の製造に取り組んでいる企業といえばシリコンバレーのベンチャー企業であるTESLA。もともとPayPalを創業し、Marvelの大ヒット映画「アイアンマン」の主人公のモデルにもなったイーロン・マスク氏が創業した自動車メーカーです。

その時価総額はみるみる上昇し、現在ではゼネラル・モーターズを超えています。これはEVがさらなる注目を集めることが市場でも期待されていることを物語っています。今回はそんなTESLAのビジネスモデルを、ビジネスモデルキャンバスを使って分析します。ぜひご覧ください。


 

 

TESLAはどうやって成功を収めたのか

TESLAの道のりは順風満帆ではありませんでした。創業から4年の間はイメージ通りの収益化ができずに失敗と失望の連続だったのです。そんな状況を救ったのが2008年にリリースした「Roadster」というモデル。2500台しか生産していませんが、人気の車種となりました。

ここで頭に入れておきたいのは、そもそものTESLAのビジネスモデルの根幹は「富裕層に向けた質の高いハイエンド車の提供」だということ。卓越したデザインと性能の「Roadster」は電気自動車ではありません。しかしいくつかの人気タレントがオーナーになったこともあって、知名度が高まりました。

注目されているなかで次に発売されたのが「Model S」です。ファミリー向けのセダンとして打ち出された「Model S」も「Roadster」と同様に、TESLAにとって大きな成果を挙げました。「Model S」以降、TESLAは本格的にEVの製造に乗り出します。「Model X」や「Model 3」などをリリース。特に「Model 3」は発売前に32万5000車の予約を受けるほど愛されました。これらの洗練されたデザインを残したEVによってTESLAは飛躍を遂げ、世界第2位のプラグイン電気自動車メーカーにまで成長したのです。

この成長を支えた取り組みを大きく分けて3つご紹介しましょう。

 

1. ダイレクトセールスという手法

多くの自動車メーカーは自社で店舗を持たずにフランチャイズのディーラーに販売を任せています。しかしTESLAはすべての店舗を自社で持つことによってコントロールしやすい環境を構築しているのです。一般的にこうしたビジネスモデルは、リソースやコストが無駄に増えてしまうので危険です。しかしTESLAは、このモデルで成功を収めました。

 

2. サービスセンターを販売店舗と一体化

TESLAは店舗内にサービスセンターを配備しました。サービスセンターにはテスラ・レンジャーズと呼ばれる修理部隊やEVの充電スポットがあります。顧客の利便性向上に寄与しました。

 

3. 充電器のネットワーク構築やバッテリーのライセンス供与による市場の拡大

2010年代初頭、EVにとって問題だったのが充電器の不足。そこでTESLAはスーパーマーケットや駅などに充電器を配置し、ネットワークを拡大したのです。また他社の自動車メーカーにライセンス化したバッテリーを売りました。これによりEVのマーケットは拡大し、市民権を得ました。

 

 

自動車メーカー以外のTESLAの収益

イーロン・マスクが「TESLAはエネルギー企業である」と言っているように、EVだけがTESLAの経営を支えているワケではありません。TESLAが提供する価値は「持続可能なエネルギーを使った輸送手段の提供」「従来のエネルギーインフラに革命を起こす」ということ。TESLAは蓄電池事業にも取り組んでいます。

太陽光発電の蓄電池や、法人向けの大容量の蓄電池の提供。また年間50万台の生産をまかなうリチウムイオン電池の工場である「ギガファクトリー」は2020年から生産を開始する予定です。

TESLAを自動車メーカーのくくりで収めてはいけません。持続可能なエネルギーにまつわる事業のすべてを手掛けることによって、顧客にクリーンなイメージを抱かせることにも成功しています。

 

 

TESLAのビジネスモデルキャンバスとは

ビジネスモデルキャンバスの9つの項目からビジネスモデルを分析していきましょう。ターゲットは誰なのか、提供する価値はどういったモノなのかなどを、細かく見ていきましょう。

 

1. 顧客セグメント(CS)

・裕福な起業家(TESLAはイーロン・マスク創業)

・環境汚染の防止への意識が高い顧客

・テクノロジーに精通した人

 

2. 提供価値(VP)

・従来の自動車を乗り越えられる、エネルギー効率がいい電気自動車の提供

・環境にやさしく進める輸送ができる機器の提供

・自社が所有する小売店での満足度の高い顧客サービス

・顧客が利用できる、簡単かつ支援的な購入オプションの提供

・充電器のネットワークの構築により、遠距離の連続的な移動が可能に

 

3. チャネル/販路(CH)

・自己所有の小売店に在籍するプロフェッショナルなスタッフから

・イーロン・マスクの個人的なツイートからの流入

・ユーザーフォーラムとユーザーコミュニティを通したチャネル

・顧客との深い関わりにより口頭で作成されたマーケティングWeb

 

4. 顧客との関係(CR)

・ブログや店頭を通じて顧客と関わりを深める

・迅速かつ効率的なアフターサービス

 

5. 収益の流れ(RS)

・自動車の小売り売上高

・蓄電池の売上高

 

6. 主要な資源(KR)

・高度に訓練された従業員

・世界中の200を超える小売店

・創業者とCEOのブランド

・心理的な戦術

・顧客に強く広く支持されている持続可能なエネルギーを普及させる企業としての使命

・顧客の満足度

 

7. 主要な活動(KA)

・製造

・セールス

・アフターサービス

・ブログの更新やマーケティング

 

8. 主要パートナー(KP)

・ソーラーパネルを販売するうえで大切なパートナー企業であるSolarCity社

 

9. コスト構造(CS)

・R&Dへの多額の支出

・人件費

・自営小売店のホスティング費用

・販売費およびアフターサービス費

 

 

TESLAの未来とは

今後、環境に優しい電気自動車はさらに普及するでしょう。当初、課題だった充電器の少なさも克服され、長距離の運転も可能になりました。TESLAは長く赤字が続いていますが「Model 3」は自社の売り上げ目標に達し、ようやく黒字化も見えてきたようです。TESLAが推進する「持続可能なエネルギー」の需要はこれから一層高まっていきます。そういった意味でTESLAの未来は明るいといえるでしょう。

当初、富裕層向けに販売を展開していたTESLAですが「Model 3」はあえてターゲットを変更し、価格を下げましたニーズに合わせたモデルの転換はビジネスを進めるうえで日常茶飯事。新たにビジネスモデルを組み直す必要があります。その際は、ぜひビジネスモデルキャンバスをご利用ください。

BizMakeでは以下のURLから簡単にビジネスモデルキャンバスを作成できますので、お気軽にどうぞ。

 

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