
リスクモンスター(e-与信ナビ)のビジネスモデル、その強みとは?
与信管理の分野で唯一上場しているリスクモンスター。
この記事ではコーポレートサイトはもちろん、決算説明資料や有価証券報告書などから読み解ける情報を駆使して、リスクモンスターの主力サービスであるe-与信ナビについて掘り下げていきます。
目次
リスクモンスターとは?
リスクモンスターは2000年に旧日商岩井株式会社(現・双日株式会社)の審査部出身の3名により設立されました。
企業の与信管理実務をアウトソースすることを目的にスタートしていますが、現在ではビジネスポータルサイトや BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)、社員教育(e-ラーニング)なども手掛けています。
経営陣は商社出身の方々で、商社が多角的に事業推進するなかで培った与信管理ノウハウを活用しています。
なおリスクモンスター自体は信用調査業務は行っておらず、主なデータは大手信用調査会社の株式会社東京商工リサーチの企業データベースを活用しています(直近の有価証券報告書ではデータ購入費における同社へ依存度は73.7%)。
e-与信ナビのビジネスモデルキャンバス
主力サービスであるe-与信ナビについて、ビジネスモデルキャンバスで表していきます。
1. 顧客セグメント
リスクモンスターは上場企業や大手企業を中心にターゲットを絞って営業活動をしていることが伺えます。
なぜかというと、ライバル企業と比較すると従業員数の少ない少数精鋭チームで事業展開しており、与信にコストをかける(取引先数が比較的多い)大手企業との相性がよいためです。
コーポレートサイトには与信管理サービスで上場企業700社導入と記載があり、上場企業の約5社に1社が導入していることになります。
また、与信管理にかけるプロセスを省略可させる指標作りに注力していることを背景に、与信にかける手間を省きたいと考えている企業も多いはずです。
2. 提供価値
従来の信用調査会社にはない直感的な指標がポイントです。たとえば帝国データバンクや東京商工リサーチが提供する「評点」は100点満点で企業評価をする形をとっており、点数だけでは判断できない場合、信用調査レポートに書かれている細かな項目もチェックする必要があります。
リスクモンスターのe-与信ナビでは企業をA、B、C、D、E、Fの6段階で格付しており、当該企業が今後1年間に倒産する確率も記載されており、直感的に取引判断ができることがポイントです。
また、いくらまで与信可能か示す「RM与信限度額」という指標についてもリスクモンスター独自の手法が取り入れられており、シンプルに表現すると会員企業専用にセミオーダーで指標を提供する形を取っているのが特徴です。
3. チャネル/販売
リスクモンスターは大手信用調査会社と比較し少数精鋭でビジネス展開しているため、オンラインを活用したプロモーション、広告に注力しています。
また与信管理用語集、与信管理コラム、マンガで学ぶ与信管理、など同じ情報を複数のカットで表現することで、より多くの潜在顧客にリーチできるよう工夫されています。
コンテンツマーケティングに注力していることもポイントです。
4. 顧客との関係
短いスパンで与信管理に関するオンラインセミナーを開催しており、会員企業はもちろん、これから新しく知識をつけたい見込み先企業の参加も見込んでいます。
ほかにもYouTubeチャンネルを開設・運営しています、提供コンテンツは主に2つで、株主や顧客に向けた与信管理サービス紹介と、一般視聴者に向けた独自の調査レポート紹介、民放テレビコンテンツのようなものも用意しており、後者の方はCRMとしての意味合いも強い印象です。
また会員基盤を活用したアンケート集計を定期的に発表しており、ビジネス媒体や専門メディアにて多く取り上げられています。
5. 収益の流れ
コーポレートサイトを見る限り、「入会金3万円」「システム利用料金2万円」「利用料金(従量課金)」、この3点が主な収益となっています。
最新の2021年3月期の決算説明資料から読み解くと、与信管理サービスのなかでもASP・クラウドサービスの収益は16億87百万円(前年同月比6%増収)となっおり、与信管理サービスカテゴリでの契約ID数は6,798IDとなっています。
すべてe-与信ナビのユーザーというわけではないですが、大まかに考えると1IDあたりの単価は約25万円となっています。会員数推移、という説明資料でIDという表現を使っているため、ここではID=社数と考えると1社あたりの毎月の利用単価は2万円ということになります。
6. 主要な主要な資源
競合他社比較で見た場合に、少数精鋭チームであること、数万・数十万社もの取引先を持つ総合商社で培った審査ノウハウが挙げられます。
7. 主要な活動
直近の決算説明資料での中期経営計画の与信管理カテゴリでは以下の活動を推進しています。
・独自DBの強化
・独自DBを活用したDX化支援
・サブスクリプションなど積極的な価格戦略
・スマホアプリ強化
8. 主要パートナー
冒頭に記載した通り、リスクモンスターが利用する企業情報は、東京商工リサーチから仕入れているものです。すべての情報使用料全体に占める割合は73.7%で、同社はリスクモンスターの筆頭株主(8.73%保有)でもあります。
また別事業(BPOサービス、ビジネスポータル事業、教育関連事業など)は与信管理サービスの提供から派生したもので、企業のバックオフィス業務を円滑にするサービスでありながら、e-与信ナビを中心とした包括的なサービス提供に貢献しています。
9. コスト構造
以下の3点が挙げられます。やはり企業倒産に関わるセンシティブな情報を扱っている関係でデータの保守に係るコストは大きいものと推察されます。
・データパートナーからの仕入コスト
・人件費
・サーバーなど保守メンテナンス
リスクモンスターの強みは、入手したデータを多角的に分析し、ユーザーが本当に必要としている情報を提供する点
ビジネスモデルキャンバスでリスクモンスターのe-与信ナビを俯瞰してみましたが、やはり大手信用調査会社と比較して圧倒的に従業員数が少ないにも関わらず、6,800社もの数の法人会員がいるのは、広告やメディア露出などオンラインをフルに活用して営業展開している点が挙げられます。
さらには、独自の分析ノウハウを活用し、仕入れた情報を多面的に分析し、企業の倒産リスクをできるだけシンプルに、直感的に落とし込んでいるのはリスクモンスター以外にはないはずです。ここがリスクモンスターの強みではないかと考えました。
また上述しましたが、すべての法人がターゲットとなっているその領域の広さから、与信管理以外のサービス拡充にもチカラを入れています。現在では大きく4つの事業を行っています。
❶ 与信管理サービス:e与信ナビに代表されるクラウド型リスク管理サービスのほか、マーケティングデータの販売も行う
❷ ビジネスポータルサイト:J-MOTTO(ジェイモット)というグループウェア(社内の情報共有や業務効率化を推進)を展開
❸ BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービス:中国の自社入力センターでデータ入力支援や書類電子化、発送物のワンストップサービスなどを行う
❹ その他サービス:定額制の社員教育サービス「サイバックスUniv.」などの運営
❷~❹の事業は既に数億の売上規模に成長しており、今後は与信管理サービスにも匹敵するような事業の新たな柱が生まれてくるかもしれません。
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