レガシーな業界を変えた2つのビジネスをビジネスモデルキャンバスで解説

ここ4、5年のテクノロジーの進化には目を見張るものがあります。デジタルデバイスが次々にリリースされ、IoT機器も増え、AIが発達しました。クラウドやアプリを利用したSaaS型のビジネスが流行し、BToB・BtoC問わず、より顧客のニーズにヒットする商品を作れるようになっています。

そんななか、各企業がツールによって業務の効率化を目指していますが、なかにはまだデジタル化を生かせていない業界があるのも確かです。今回は、そんな未開拓な分野をツールでアップデートしている2つの企業をビジネスモデルキャンバスで解説します。


 

 

BtoCの申込書を電子化する「クラウドサインNOW」

日本最大級の法律系ポータルサイトを運営する「弁護士ドットコム」が開発・提供しているサービスが「クラウドサインNOW」です。

顧客と対面して記述してもらう申込書は、これまで紙に記載してもらうのが通常のフローでした。しかしPCに転載したり、原本を郵送したりと業務上の手間がかかっていたのが実状です。

「クラウドサインNOW」は対面型の申し込みをタブレットでできます。ツール自体に筆記した文字の認識機能があるので、顧客がタブレット上に手書きした文字を転載する必要はありません。また本人確認証などのカード類も撮影するだけでいいので、作業時間を大幅に短縮できます。もちろんその後のファイリングをする必要もなく、クラウド上でデータを集められるのも魅力です。データ活用が分からない場合は、弁護士ドットコムがビジネスを代行してくれるサービスもあります。

利便性やアフターフォローが受け入れられた結果、電子契約市場ではシェアNo.1となっています。また結婚式場やスポーツジム、塾などターゲットが広いのもビジネスとしての魅力です。

 

「クラウドサインNOW」のビジネスモデルキャンバス

ではツールの特徴が分かったところで、ビジネスモデルキャンバスにまとめてみます。9つの特徴をあらためて可視化することで「クラウドサインNOW」の特徴がよくわかります。

 

1. 顧客セグメント

・対面での申し込み業務がある店舗
・紙からPCへのデータ移行などを面倒に思っている店舗
・顧客情報の管理に時間がかかっており、マーケティングに生かせていない企業

2. 提供価値

・紙面からPCにデータを移す必要がない
・申し込み作業の無駄を省ける
・顧客がペンで記載する面倒をカットできる
・顧客の来店回数などを計測し、マーケティングに生かせる
・原本の郵送など、業務の無駄をカットできる

3. チャネル/販路

・ソフトバンクなどの協力企業による販売
・営業部隊によるオフラインでの導入支援

4. 顧客との関係

・弁護士ドットコムというブランドによる安心感
・オプションプランなどのサポートが充実
・導入支援など、導入時の不安を解消

5. 収益の流れ

・月額5万円の固定料金
・1ID(端末)ごとに8000円の利用料

6. 主要な資源

・自社開発のシステム
・ソフトバンク株式会社や株式会社トレタなどの協力会社

7. 主要な活動

・顧客データの収集・管理
・機能のブラッシュアップ
・営業活動

8. 主要パートナー

・販売に協力するソフトバンク株式会社
・飲食店の予約サービスを進める株式会社トレタ

9. コスト構造

・システムの開発・保守費用
・協力会社への手数料
・広告費や営業費など

 

 

工事現場の問題をアップデートする施工管理ツール

続いて紹介するのは、建設業の業務効率化ツールの「ANDPAD」です。開発・提供するのは株式会社オクト。建設業はここ数年のテクノロジーの進化についていけていない業界といっていいでしょう。しかし市場規模は50兆円以上にのぼります。巨大なマーケットを業界外のIT企業が開拓をしている流れがあるのは事実です。ANDPADはなかでも広いシェアを持っています

具体的なANDPADの機能としては、建設業で欠かせない「施工管理」という業務を補助するツールです。これまで現場で働く職人と事務作業をする現場監督の間にはデジタルツールでのやり取りはなく、アナログな方法で品質やスケジュールの確認をしていました。それが業務の負担になっており「きつい」というイメージが定着していたのです。

ANDPADはアプリをでそんな課題を解決しています。図面のチェックやスケジュールの確認、報告書の確認などをスマホやPC、タブレットで完結できます。移動中などに気軽に業務ができるのが魅力です。またそのほかにもCRMなども搭載しています。

 

 

ANDPADのビジネスモデルキャンバス

では建設業界をデジタルツールで支援しているANDPADのビジネスモデルキャンバスを作ってみましょう。

 

1. 顧客セグメント

・現場管理業務に困っている建設会社や工務店
・デジタルツール導入に柔軟な意識の高い建設会社

2. 提供価値

・これまでの業務の時間と手間を大幅にカットできる
・働きやすさがアップし、離職率を下げられる

3. チャネル/販路

・アプリケーション
・テレビCMなどオフラインに力を注いだ広告

4. 顧客との関係

・アプリ導入のための社内説明会の開催
・カスタマーサポートの充実
・初期導入を円滑にするサポート体制

5. 収益の流れ

・月額3.6万円~12万円までの利用料
・導入サポート研修料
・初期費用

6. 主要な資源

・アプリケーション
・システム開発のエンジニア人材
・リコージャパンなどの販売委託会社

7. 主要な活動

・建設業界への啓発によるデジタル化促進
・ハードルを引き下げるための導入支援
・アプリ機能のブラッシュアップ
・テレビCMや展示会など、オフライン中心のPR

8. 主要パートナー

・販売で提携するリコージャパン
・展示会などの主催者
・外注のエンジニア

9. コスト構造

・システム開発・維持費
・展示会などへの出展費
・営業・広告費

 

 

未開拓の分野をどう変えるか

この2社は未開拓の分野に着手して成功しています。テクノロジーの進化はそれまでの常識を変える力を持っています。しかし業界は簡単には変わりはせず、むしろ変化を拒む傾向があります。未消費の分野にイノベーションを起こす方法については、クリステンセン教授著「繁栄のパラドクス」の記事をご覧ください。

2社のように業界への啓発や他社とのアライアンスなどを通して、空いたシェアを獲得しましょう。

今回はビジネスモデルキャンバスを用いて、2社のビジネスモデルをご紹介しました。フレームワークは無料で使えますので、ぜひお気軽にご利用ください。

 

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