ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスで紐解く、コンビニ各社のATM事業

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「お金をおろしたいから、ちょっとコンビニに」。

そんなセリフは今や常識になっています。セブンイレブンやローソンが銀行を立ち上げ、それぞれのビジネスモデルで展開しており「銀行、冬の時代」といわれるなか好調をキープしているのは注目すべき現状でしょう。

そこで今回は業界大手2社のセブンイレブンとローソン、そしてコンビニにも進出しているイオン銀行についてのATM事業をビジネスモデルキャンバスで解説します。3社はどのようにしてATM事業を成長に導いているのでしょうか。

 

 

銀行業界に革命を起こしたセブン銀行

まずは業界の雄・セブンイレブンです。同社は2001年、小売店として初めての銀行「セブン銀行」を立ち上げ、店内にATMを設けました。市場の動向に合わせてビジネスモデルを変えながら、現在ではセブン&アイ ホールディングスのなかでも最高の営業利益率を残しています。

そもそも銀行は預金者から得たお金を企業や個人に貸し出し、その利子を得ることで利益を得ていますので、顧客セグメントは「融資先」です。貸したお金が返ってこないと100%赤字になるので、銀行が最も恐れているのは「焦げつき」になります。

しかしセブン銀行はそもそも「融資」をしません。ではどのようにして利益を出しているのでしょうか。その答えは「銀行ATMの利用手数料」です。ATMを利用すると、105円か210円の手数料がかかります。その金額を600以上の提携銀行各社に負担してもらうことで売り上げを生んでいるのです。つまり顧客は「銀行」となります。当然、焦げ付きのリスクはありません。

銀行各社にとっても自社ATMを製造、設置、保守する費用に比べれば手数料は安いものなので、積極的に提携します。セブン銀行はそれまでの銀行のモデルを破壊したビジネスモデルを打ち出し、リリース後およそ2年半で黒字転換しました。

 

 

小売店の強みを生かしたイオン銀行

ミニストップを始め、一部のコンビニに設置されているのがイオン銀行です。2007年に出発した、小売店としては第2号の銀行ですが、セブン銀行のビジネスモデルは全く踏襲していません。むしろ預金者のキャッシュをもとに貸し出し金利の利ざやを得る、従来型のビジネスモデルを展開しています。

特筆するならば「第13回日経金融機関ランキング」で「お客さま満足度1位」に輝いたことからも分かる通り「顧客ファースト精神」が根付いているということです。

リリース前の市場調査で、イオン銀行は「土日も空いているATMが欲しい」という顧客の強烈なニーズをキャッチしました。そこでイオン銀行ATMは年中無休で21時まで利用できる仕組みを構築、また時間帯問わず手数料無料という預金客に魅力的なサービスを打ち出しました。

さらに小売店としての強みを生かした戦略も独自の価値でしょう。住宅ローンを契約すると「イオンセレクトクラブ」という店舗内での買い物の割引サービスを受けられます。まさに「小売りと金融の融合」。メガバンクを始め、他の銀行では実現しにくいメリットです。

 

 

キャッシュレス化に勝機を見出すローソン銀行

ローソン銀行はセブン銀行から遅れること17年、2018年にスタートしました。コンビニ業界では2社目の取り組みです。基本的なビジネスモデルはセブン銀行と同じであり、利ざやで利益を生むものではありません。マイナス金利による「銀行、冬の時代」において、賢い選択でしょう。しかし出遅れているのも確かです。提携銀行数や設置ATM台数などは、セブン銀行に遠く及ばず”いまさら感”は否めません。

ローソン銀行は勝機をATMではなく「キャッシュレス化」に見出しています。キャッシュレスの決済による割引システムやお釣りを自動で預金できるサービスなどを軸に、ゆくゆくはATM事業ではなく決済サービス全体で利益を挙げる目標だそうです。

キャッシュレス化によってATM台数自体が減少する予想も立てており、将来的には他の銀行(セブン銀行を含め)とも提携しながらキャッシュレス決済のサービスを前面に押し出そうとしています。

とはいえ当面はATM事業で基盤を固めていくスタンスです。果たしてどこまで利益を埋めるのか。セブン銀行との差は埋まるのか。コンビニ業界からも銀行業界からも注目が集まっています。

 

 

ATM事業をビジネスモデルキャンバスで解説

ではセブン銀行やローソン銀行のビジネスモデルは従来型とどこが違うのでしょうか。ビジネスモデルキャンバスの9項目で俯瞰的に解説しましょう。

 

 

従来型

 

1.顧客セグメント

顧客は融資先の個人や企業になります。預金をする客層とは違うことがミソです。

 

2.提供価値

お金が足りない際に少額から借りられること。また住宅ローンなどの多額の支払いの際に利用できることが挙がります。

 

3.チャネル/販路

もちろん預貯金で利用している方がそのまま顧客になってくれることがよくあります。その入り口を作るためにオフライン、オンラインでの広告や口コミがあります。

 

4.顧客との関係

メガバンクの場合はその知名度による安心感を顧客に与えてくれるでしょう。地銀の場合は地域密着による利便性が関係性を高めます。何かあったときに信頼できるパートナーとして頼りにされているのも間違いはありません。

 

5.収益の流れ

貸し出した際の利子がメインの収益です。なお保険のサービスなどのストック収益もあります。

 

6.主要な資源

銀行の設備や顧客のデータなどが主なリソースになります。

 

7.主要な活動

預貯金をする見込み客や、保険やローンなどの付加商品を欲する顧客への営業や顧客の管理、ローンや融資の審査などがあります。

 

8.主要パートナー

主なパートナーは不動産や車両など、ローンを使用する商材のメーカー、小売店などです

 

9.コスト構造

融資をする際の費用や、人材費、顧客データの管理費、保険に関する費用などがあります。特に貸した金額が戻ってこない「焦げつき」は大きな損害になります。

 

 

コンビニ銀行

 

1.顧客セグメント

顧客は手数料を支払う、提携している銀行になります。

 

2.提供価値

ATM機器の製造、設置、保守費用を代わりに担うことです。また設置台数が多く、消費者の利便性の向上にも役立ちます。

 

3.チャネル/販路

コンビニを訪れた方が見つける場合がありますし、そのほかのATMでも認知してくれます。

 

4.顧客との関係

月に数十万円ともいわれるATMに関する費用をまかなえるので銀行にとってはコストダウンにつながります。また全国各地にあるコンビニチェーンでキャッシュカードを使えるので、地方銀行にとってはコストをかけずに利便性を大きく向上できます。

 

5.収益の流れ

消費者の手数料を提携銀行がコンビニ銀行に支払うことで収益が生まれます。

 

6.主要な資源

全国各地にあるATMです。また消費者のデータも含まれます。

 

7.主要な活動

ATMの製造、設置、保守は毎日の活動でしょう。また提携銀行先への営業活動や、消費者のデータの管理も入ります。

 

8.主要パートナー

主なパートナーは提携している銀行と口座を持つ顧客になります。決して競合ではありません。またATMの機器を製造する工場など、ハード面でもパートナーがいるでしょう。

 

9.コスト構造

製造から保守まで、ATMに関する費用が含まれます。

 

 

”コンビニ銀行”の欠点とは

一見誤解されがちですが、他の銀行は決して競合ではなく顧客になります。そのほかにネット銀行やローソンセブンのお互いが競合になり得ます。なかでも特に大きな競合であり障壁は、皮肉なことに「フランチャイズの各店舗」です。それがコンビニ型ATM事業のビジネスモデルの欠点となります。

各店舗のオーナーからすると、店内の一画をATMに支配されてしまいます。リソースがなくなるのは痛手でしょう。ATMを設置することによって流入する客単価と、その一画に置かれる販売スペースのどちらが有益なのかを判断した場合、時にATMは無駄だという結論に至る可能性もあります。事実、セブン銀行がATMを設置し始めた際は数店舗からATMの撤去の申し出があったそうです。

またマイナス金利が進む「銀行、冬の時代」において、コンビニのATMサービスは結局、運命共同体だといわざるを得ません。ローソン銀行にようにキャッシュレスシステムに移行して新たな価値を創造するのか、それとも別にコンビニ銀行のATMならではのバリューが生まれるのか、今後の動向にも注目したいところです。

今回はビジネスモデルキャンバスを用いて、”コンビニ銀行”のビジネスモデルを解説しました。BizMakeではビジネスモデルキャンバスの他にも「リーンキャンバス」や「MVPキャンバス」などのビジネスフレームワークを無料で使えますので、気になる会社のビジネスモデルモデルを解読した方は、お気軽にご利用ください。

 


 

 

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