
ビジネスモデルキャンバスで紐解く、Amazonのビジネスモデルとは?
1995 年にサービスを開始した世界最大のオンラインマーケットであるAmazon。各国の顧客から強烈に支持される電子商取引の大型プラットフォームですが、そのビジネスモデルはどのようなものなのでしょうか。顧客に愛された理由や、収益を出せる仕組みを構築した流れについて解説します。
ビジネスモデルキャンバスについては下記の記事をご覧ください!
目次
Amazonの概要
Amazonはオンライン書店から事業をスタートさせました。今日では、eコマースの大型ハブとして、さまざまな企業の商品を出品しています。衣類、食糧、グルメ、ペット用品、化粧品、本、コンピューター、電子ガジェット、園芸用品、家庭用品、寝具など幅広いジャンルをそろえており、顧客が購入しやすいサービスを構築しているのが躍進した理由の1つです。
現在ではECだけではなく実店舗、また動画コンテンツや音楽といったサブスクリプション型のサービス、さらにデバイス関連の販売など、その収益源は多種多様になっています。
顧客にとっての最適化
Amazonには顧客の追跡システムがあります。例えば「イノベーションビジネスに関する書籍」を買うと、その後アクセスする度に「イノベーションビジネス関連の商品」をレコメンドしてくれるのです。このシステムにより、毎回の購買フェーズで顧客の意欲が高まります。使えば使うほど利用環境が改善されるのは、出品している企業にとってもメリットでしょう。ユーザーの利便性を最大限まで高めたサービスがAmazonの価値を高めているのです。
Amazonの価値を高めた5つのシステム・
Amazonはメイン事業としてのオンラインショッピングの価値を高めるために、あらゆるシステムを構築することで利用価値を高めています。
1. Amazon Web Service
Amazonがローンチしたクラウドコンピューティングである Amazon Web Serviceは世界190カ国で数百万人以上の人が利用しています。Amazonは膨大な注文を処理するためのデータベースを世界中に30カ所以上も整備し、ストレスなくアプリケーション開発やゲームの開発、データ処理、ストレージなどを利用できるようなシステムを組みました。
2. 大型の自社倉庫と実店舗
Amazonの強みはチャネルにあります。エンドユーザーからの注文を受けた商品は、各企業の倉庫からではなく、Amazonが保有する倉庫から配送されるのです。卸販売の業者としては自社の倉庫にストックせずに済みますし、エンドユーザーは短時間で品物を受け取れます。
またAmazonは近年、力を入れているのが実店舗です。レジのない「Amazon Go」は大きな話題を呼びました。Amazon Goのビジネスモデルについては以下の記事で詳しく解説しています。
3. Kindle・Audible
電子書籍を読むためのデバイスであるKindleは、出版業界の常識を大幅に変えました。1つのタブレットさえあれば、数千冊という書籍を読めるようなサービスを構築したのです。またバージョンアップするにつれてタブレットは徐々に薄くなり、より使いやすくなっています。また音声で書籍を読んでくれる「Audible」というサービスも提供し、もはや読まずして内容を理解できるような工夫をしています。
4. アレクサ
アレクサはAIスピーカーです。値段が安く手に入りやすいことから多くの方に利用されています。話しかけるだけでAmazonの注文はもちろん、Kindle内の書籍を朗読してくれますし、Uberだってすぐに呼べるのが魅力です。
5. Amazon prime
Amazonプライムは、ワンランク上の価値を顧客に提案するAmazonの有料サービスです。入会すると無料 Kindle のライブラリへのアクセスや、オンデマンドビデオのストリーミングサービス、即日配達サービス、送料無料サービスなどを利用できます。
6.その他、いくつかのサブスクリプションサービスなど
Amazon primeに紐づけて進めているいくつかのサブスクリプション型サービスは、アマゾンの重要な収益源になっています。特にAmazon Prime Videoは、あらゆる映画の版権や固有の番組を設けることでユニークな提供価値をもたらし、Netflixを凌駕する登録者数を実現しました。またAmazon Prime Musicも大事なサービスの1つです。
ビジネスモデルキャンバスで紐解くビジネスモデル
では、最後にビジネスモデルキャンバスの9つの項目から、Amazonのビジネスモデルを紐解いていきましょう。
1. 顧客セグメント(CS)
・Amazonのサービスを利用する多くのエンドユーザー
・自社の製品を販売したい事業者
またAmazon Web Service(AWS)を利用する顧客の場合は開発者も顧客セグメントに入ります。
2. 提供価値(VP)
・クリック履歴や購入履歴によるページのパーソナライズによる購入の利便性
・企業が消費者に商材を販売するプラットフォーム
・Kindle の電子書籍リーダーやAIスピーカーなどの電子機器の生産、販売
・USB ケーブルをはじめとしたローエンド製品の販売
・企業ブランド(顧客中心、革新的など)
・大型倉庫を使った物流の高速化
・企業と顧客との仲介サービス
・スケールアップしたグローバルビジネス
・Amazonプライムを使った映像のサービス
・プライムMusicを経由した音楽のサービス
・低価格
3. チャネル/販路(CH)
・Amazon.comなどのドメイン
・アプリを経由したチャネル
・関連会社を通したチャネル
・企業から商材を受け取り、顧客に届けるまでの小売のチャネル
・物流ネットワーク
・Amazon Web Serviceのプラットフォーム
・ソーシャルメディアからのチャネル
・広報
・イベントでの流入チャネル
4. 顧客との関係(CR)
・Amazon プライムの送料無料サービス
・オンラインでの購入サービス
・全行程のデジタル化
・注文に関してはセルフサービス
・自動化されたサービス
・顧客との共創で作っていく機能
・商品のレコメンドサービス
・1 から 5 つ星までの製品のページに対するスコアリングのサービス
・各企業とのパートナーシップ、同盟、利便性
・幅広い選択肢を提示
・顧客の購買経験
・SNSのアカウントをリンクし、ショッピング カートにアイテムを追加可能
5. 収益の流れ(RS)
・amazon.comによる小売の売り上げ
・仲介手数料
・Amazon プライムの月額のサブスクリプション
・商品価格の6~45%に及ぶアマゾンの出品料
・「おすすめ商品」として表示されるための広告料
・「アマゾンアフィリエイトプログラム」の収益
・Amazon Web Serviceの収益
・Amazon プライムビデオの購入額
・アマゾン販売するKindle、エコー、および FireTVなどのハードウェア
・アマゾンアレクサに関する売り上げ
・フィンテックと支払い手数料など、その他の収入
6. 主要な資源(KR)
・ブランド
・プラットフォーム
・スタッフ
・全自動のシステム。
・マルチレベルの e-コマース戦略
・アマゾン アフィリ エイト プログラムに所属する90万のメンバー
・グローバル調達のインフラストラクチャ
・大型の自社倉庫
・Kindle のプラットフォーム
・顧客や企業のビッグデータ
・知的財産権
・特許
・ジャストインタイムでの生産システム
・物流の資産
・人工知能の資産
・トラック運送や航空貨物物流のリソース
7. 主要な活動(KA)
・プラットフォームやソフトウェアの開発・保守
・新製品開発や配信の方法などのイノベーション
・物流・流通
・カスタマーサービス
・オートメーションシステムの管理
・R&D
・コンプライアンス関連
・人材採用、教育
8. 主要パートナー(KP)
・関連会社
・出品する企業とのネットワーク
・サプライヤーとメーカー
・物流担当のプロバイダー
・Kindleに関する出版社
・Amazon Web Serviceパートナー ネットワーク (APN)
・アマゾン支払いのグローバル パートナー プログラム
・関連するジョイントベンチャー
・M&Aによる子会社
9. コスト構造(CS)
・インドを拠点にした投資活動
・革新的なプロジェクト・コンテンツ生成への投資
・大型倉庫、事務所の維持費・管理費
・人件費
・R & D
・IT メンテナンス費用
・ソフトウェアの開発費用
・各輸送費
・マーケティング費用
・M&A
・コンプライアンス的な費用
・税金
・広報活動
Amazonのビジネスモデルキャンバスとは
Amazonは購買客と出品企業の両方をターゲットにビジネスを展開しています。そのビジネスモデルは常にイノベーティブ。次々に新たなサービスやプロダクトをローンチし、マネタイズポイントを増やしているのです。
そのぶん、ビジネスモデルキャンバスに書くべき内容も多くなっています。しかし全てのプロジェクトが決してひとりよがりではなく、常に顧客のニーズに合致している。顧客が使いやすいような機能に注目しながら、ビジネスを進めているのです。
