ビジネスモデルキャンバスで分析する現代の農業のビジネスモデルとは

テクノロジーの進化とともに、各業界のビジネスモデルの定石は移り変わっています。なかでも第一次産業のモデルは、特筆すべき変化を見せているでしょう。今回は農業に関するビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスの9つの項目からご紹介します。


 

 

第一次産業だけでは利益が挙がらない農家の現状

これまでの農家のビジネスモデルといえば野菜を作ってJAに卸し、流通・販売を委託するのが定石でした。しかしそんな「第一次産業」としてのビジネスでは収益性が低く、通用しなくなっているのが現状です。

そこで数年前から「6次産業」という言葉が提唱されつづけています。野菜を作り、加工して、自ら流通をかける。一次だけではなく、二次、三次と自ら手掛けることで収益性を高められるのが魅力です。

例えばキャベツ農家の場合、収穫したキャベツを漬物に加工して、地域の道の駅やスーパーマーケットなどで販売する。マージンを極力抑えられることもあり、利益率が高まります。また数年前から「食の安全性」が注目されているうえに「健康志向」がトレンドになっており、生産者の顔が見える食材は、付加価値があることが追い風になっていることも事実です。

しかし6次産業も手間や費用、時間とコストがかかってしまうのは確かでしょう。畑を耕す時間を確保しつつ、小売店に営業をかけたり収益を計算したりするとなると、個人では十分な時間が取れません。

 

 

「フィンテック×農業」でさらなる収益を

無駄を省いて効率的に農家を経営するためには、デジタルの分野を利用するのが必須です。オンライン上に小売店舗を出店することで、利益率はより高まります。

以前であれば、野菜は消費者が良し悪しを選別して、店舗で買うのが当たり前でした。しかし現在は、オンラインで食べ物を注文するのが一般的になっています。農家としては、オンラインショップを開設することで、自ら小売店舗をまわる必要がなくなります。また、売り上げは全て自分の手元に入ってくる。もちろん開店費用も必要ありません。

自らドメインを登録してホームページを開設し、ネットショッピングに対応するのも一つの手ですが、既存のプラットフォームを利用することで、より簡単にオンラインショップを立ち上げられます。開店したてのころは知名度がありません。有名プラットフォームを利用することで、自社の野菜や加工品などを顧客に見てもらえる確率も高まるメリットがあります。

例えばアプリケーションの「BASE」は、多くの農家から支持されているサービスの1つです。誰でもネット上に自分の店舗を持てるという仕組みで、登録料や月額費用などは一切発生しません。もともとは「衣類やアクセサリーをつくるクリエイターが、簡単に店舗を持てるように」と構築されたサービスでした。しかし現在は、農業や漁業などの第一次産業を営む方からも支持されています。

 

 

スマホさえあれば、誰でも簡単に出店できる

BASEの特長はその利便性にあります。開業のために必要なのはスマホだけ。必要事項を記入するだけで手軽にショップを開設できます。またフィンテックを用いており、豊富な決済サービスを選べるのも、農家としては大助かりでしょう。クレジットカードの登録手続きもシンプルです。CEOである鶴岡裕太氏が洋服店を営む母親のネットショップをつくったのがサービスを構築したきっかけとのことで、老若男女問わず、誰でも使いやすいサービスを意識しているのかもしれません。

また「手数料が安い」と好評の声も多く聞かれています。BASEの手数料は「商品の値段×3.6%+40円」です。5000円の商品が売れても、たった180円の手数料しか引かれません。高い利益率を実現できます。

6次産業化に加えてフィンテックを利用すると、より効率的に農業を手掛けられます。第一次産業はまだデジタルが進出しきれていない分野でもあります。旧態依然としたビジネスモデルではなく、イノベーションを図ることで、より効率的で利益率が高いビジネスができることでしょう。

ではBASEとJAでの流通の2本柱を軸にした農業のビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスで表してみましょう。

 

 

ビジネスモデルキャンバスでビジネスモデルを分析

 

1. 顧客セグメント

・オンライン上で野菜やフルーツを買うことに抵抗がない客層

・大手ではなく個人商店などを利用する、健康への意識が高い顧客層

 

2. 提供価値

・わざわざ道の駅やスーパーマーケットに行かなくとも、直接的に農家から安心な野菜を購入できる

・中間マージンがない分、安く農作物を買える

・同じ業者から継続的に野菜を購入できるので、安定して美味しい野菜を得られる

・その業者でしか買えない、加工品が手に入る

 

3. チャネル/販路

・BASE上やSNSでの告知

・SNSをはじめとした口コミ

・店舗でのポップ

 

4. 顧客との関係

・美味しい野菜を継続的に買ってもらう

・送料割引・無料のクーポンの発行

・クレジットカードを用いたスムーズな決済

・スーパーマーケットでは手に入らない加工品の販売

 

5. 収益の流れ

・高い利益率での野菜の購入費

・加工品の収益

・その他のJAを通した農作物の販売

 

6. 主要な資源

・畑の耕作地

・BASE上のオンラインショップ

・決済サービス

 

7. 主要な活動

・農作物の耕作・収穫

・オンライン上での販売

・JAへの卸し

 

8. 主要パートナー

・BASE

・JA

・小売店

・農耕機のリース会社

 

9. コスト構造

・農耕にかかる費用

・土地代

・農耕機のリース費用

・BASEを通じた少額の手数料

・小売店やJAに徴収される手数料

・加工品を作るための費用

・人件費

 

 

ビジネスモデルキャンバスでイノベーティブなモデルを

今回は6次産業とフィンテックを用いた農家のビジネスモデルを解説しました。もちろん、これから技術革新により市場が変化するにつれて、よりイノベーティブなビジネスモデルが現れるでしょう。

現在、アメリカをはじめとしてAIのディープラーニングにより、適切な収穫時期を判定するサービスも現れています。また実際にロボットが収穫をしている農家もある。ゆくゆくは第一次産業で必要な作業をすべてAIに任せて、農家は第二次、第三次の産業だけを手掛けるようになる時代がくるかもしれません。

いずれにせよ、農家は昭和のビジネスモデルを引きずるのではなく、常に時代に合わせて刷新することを求められています。変化のスピードが早い現代だからこそ、柔軟にビジネスモデルを見直しましょう。

今回は農家のビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスで分析しました。9つの項目を埋めるだけで、自社の方向性が明確になるではなく、他社のビジネスも分析できるツールです。BizMakeでは無料で簡単にビジネスモデルキャンバスを作成できます。お気軽にご活用ください。

 

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