
4P分析と5forces(ファイブフォース)で考えるニトリのマーケティング戦略
4P分析とは自社商材の特徴や売り方4つの要素から考察するフレームワークです。また5forcesとは自社を取り巻く5つのミクロ環境を分析するためのツールになります。
ビジネスを成功させるうえで、内外要因は非常に重要です。事業をスタートする際はもちろん、事業途中でも分析をしながら商材を改善する必要があります。
今回は家具のデザインから販売までを手掛けるニトリを例にして、2つのフレームワークの作り方を解説します。なぜ、ニトリは国内の家具小売店トップを走りつづけることができるのか。その理由を探ります。
目次
4P分析とは
4P分析とは商材を売るために重要な「商品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販売促進(Promotion)」の4つの要素を分析するためのフレームワークです。これらの要素はマーケティングの要になる部分。あらかじめターゲットを定めたうえで、論理的に設定をする必要があります。
ちなみに4Pを顧客目線で設定するツールに4C分析があり、一緒に利用すると多角的な視点から商材の個性を作り出すことができるので、おすすめです。
5forces(ファイブフォース)とは
5forcesとは、ミクロの外部環境を分析するためのフレームワークです。「売り手」「買い手」「競合」「代替品」「新規参入者」の5つの存在は商材の売り上げや価格設定に大きく関わります。売り手と買い手、同じパイを奪い合う業界内の他社製品を分析することで、利益の最大化を図るための戦略を練られるのです。
ちなみにマクロの外部環境を分析するツールにPEST分析があります。こちらも併せて使うことで、より詳細に外部環境を分析でき、変化の激しい令和のビジネスに対応できます。
業界でも特徴的なニトリのマーケティング
さて、2つのフレームワークの効果をご紹介したところで、ニトリのマーケティング戦略を解説していきましょう。「お、ねだん以上。」のキャッチコピーで広く顧客に愛されているニトリ。2021年2月期の決算ではなんと34期連続の増収増益を達成しました。競合にはない生産、販売方式が功を奏した結果といえるでしょう。
はじめにニトリの経営の特徴について順番に見ていきましょう。
1. ノックダウン生産による低コスト化
海外で生産される原材料を輸入し、自社で組み立て・デザインをしてから販売する「ノックダウン生産」を採用しています。これにより顧客に低価格帯でインテリアや家具を提供できているのが特徴的です。
2. SPAの導入
生産から流通、小売りとすべて自社で対応する「SPA(製造小売)」のスタイルで経営を進めています。中間コストをカットできるのはもちろん、市場のトレンドに合わせて素早く商品を改善できるのも魅力です。
3. POSデータの活用により無駄な在庫をカット
POSデータを取得することにより、無駄な在庫を抱えない仕組みを構築しているのも特徴です。競合のナフコや島忠、大塚家具などと比べても、在庫回転率は高速化しています。
以前の常識では、家具は高額でありなかなか買い替えないものでした。しかし時代とともに、低コストでの生産が可能になり、小売業者が増加し、消費者は使い古した家具をシェアリングサービスなどで手軽に売ることが可能になりました。家具は洋服に近くなっています。
ニトリは複数の戦略を組み合わせて「低価格でおしゃれな家具を買える」という価値を顧客に提供しています。まさに時代に即した、経営を進めているのです。
ニトリの4P分析
では、はじめに4P分析を通してニトリの戦略を分析します。商材の特徴と売り方について探ってみましょう。
1. 商品Product
ニトリの商品はノックダウン生産によって作られています。生産のコストが少ないのが特徴的です。しかし組み立てとデザインはニトリの社内でなされますので、おしゃれな製品を作れます。
2. 価格Price
ノックダウンとSPAによって生産や流通のコストが下がっており、消費者に提供する際の価格を下げることが可能です。そのうえでデザイン性が高い家具を制作でき、質の高さは担保しています。
3. 流通Place
SPAによって、他社の手を借りずに物流ができます。無駄な中間マージンをカットできるのが魅力です。
4. 販売促進Promotion
「お、ねだん以上。」というキャッチコピーをファミリー層に向けてテレビCMで流しています。家具の買い替えは一般的に普及しましたが、それでもやはり従来の「一生もの」というイメージは消費者にあります。低価格帯の家具を購入することに引け目を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかしニトリは材料の質を下げることなく、安い家具を提供しています。「お、ねだん以上。」というキャッチコピーは高品質な家具を低価格帯で提供しているニトリの強みを端的に言い表した言葉です。
ニトリの5forces(ファイブフォース)分析
では続いてニトリの5forcesを分析します。どのようなミクロの外部環境のなかでニトリは戦っているのか、そしてどのようにして勝利を収めているのでしょうか。
1. 売り手の交渉力
売り手は材木などの原材料の生産をする、海外の業者です。木材が確保できなかったり、関税が変わったりすると、商品の価格に影響する可能性があります。ニトリは大きな顧客ですので、売り手としての交渉力は低いといえます。
2. 買い手の交渉力
買い手は消費者がメインです。消費者にとって家具は「低価格であり、買い替えをするもの」という常識が浸透し始めています。ニトリは価格を下げることで業界優位に立ちました。他社はまだ、ニトリほどの低価格帯、おしゃれなデザインを実現できているわけではありません。しかし現在ではAmazonをはじめとするネット通販が隆盛しており、買い手としての交渉力は高まりつつあります。
3. 競合との関係
競合は良品計画やナフコ、島忠、大塚家具などです。それぞれの企業がポジショニングできており、特徴があります。例えば大塚家具は高価格帯の家具を販売し続け、結果業績を落としてしまいました。ニトリは常に顧客のニーズに当てはめた戦略が成功しています。
4. 新規参入者の登場
ニトリと全く同じビジネスモデルの企業が後発で登場することは考えにくいでしょう。イチからSPAやノックダウン生産のスタイルを築くのは大きなコストがかかるからです。
5. 代替品の存在
代替品としてはCLASなど、家具のシェアリングエコノミーを展開している企業です。「モノを持たない時代」において、家具すら買わなくなる可能性があります。ニトリが次の10年を生き延びるためには、次世代のニーズにも対応する可能性があるのです。
コストカットと品質の担保、おしゃれなデザインの実現
今回はニトリの4P分析と5forcesについてご紹介しました。「高価であり、ほとんど買い替えない」という従来の家具像をノックダウン生産とSPAで覆したからこその33期連続の増収増益だといえます。今後は「モノを買わない若い世代」をどうやって巻き込んでいくか、が課題になりそうです。
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