マンガ「キングダム」から学ぶ、ビジネスでの“戦略”の本当の意味

集英社の週刊ヤングジャンプで連載中のマンガ「キングダム」。2019年5月現在、54巻まで発売されており、累計3,600万部以上の大ヒットを記録しています。4月19日には実写映画も公開され、3日で7億円以上の興行収入を記録しました。主人公を演じた山崎賢人さんも「代表作になった」と、成功が難しいとされているマンガの実写化において十分な成功を収めています。

春秋戦国時代の古代中国を舞台に、大将軍を目指す主人公・信と、のちの始皇帝となる政の躍進を描いた作品ですが、実はいまビジネスマンからも注目を集めています。というのも52巻が発売された際のキャッチフレーズは「#キングダム経営論」。一見、何の共通点もなさそうなキングダムですが、実は経営に近しい要素も多々あり“ビジネス書”としても人気を博しているのです。

今回は「キングダムから学ぶ“戦略”の本当の意味」と題して「#キングダム経営論」を解説します。

 

 

「本当に中華統一できるのか…?」

キングダム読者が共通して口にする言葉。
キングダムは秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の戦国七雄からなる春秋三国時代から中華統一、そして秦の始皇帝の誕生を物語にしており、(ある程度は)史実に基づいてストーリーが展開されます。つまり裏を返せば、世界中の人間がオチを把握しており、少しネットで調べれば結末や過程が分かるのです。マンガとしては、不利な舞台設定といっていいでしょう。

そんな読者たちが声をそろえて言う言葉があります。
それが「本当に中華統一できるのか…?」

不安になるのも分かります。連載13年目、54巻にものぼる現在、のちに中華統一を成し遂げるはずの秦国は、いまだ斉しか手中に収めていないのです。残すは5カ国。このペースでいくと単純計算して5倍の68年、270巻が必要であり、作者の原泰久先生は111歳になってしまいます。

もちろん、そんなに続くはずがありません。では今後、どのようにして楚・燕・趙・魏・韓を傘下に収め和平を築いていくのでしょうか。斉を平定したシーンを振り帰りながら、ビジネス視点で秦の“戦略”を探っていきましょう。

 

 

戦を略すと書いて「戦略」と読む

キングダムは春秋戦国時代を描いた作品ですので、基本的に7国で戦争をするシーンが多く何千何万という人が命を落とします。戦いのなかで国盗り争いをしていくのです。しかし秦が斉を取り込んだシーンでは戦争は起こりません。力ではなく、話し合いで決着がついたのです。

具体的にいうと秦国の王・政(のちの始皇帝)が自身の目指す中華統一後の世界を斉の王に説きます。そのビジョンに共感した斉王は政と争うという選択肢を取らずに事実上の降伏宣言をするのです。

ここで「戦略」という言葉の本来の意味を考えてみましょう。戦略という言葉を世界で最初に用いたのは兵法の学術書も執筆している孫子だといわれています。

彼の言葉として有名なのが「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」「100回戦って100回勝つよりも、戦うことなく勝つほうが優れている」ということを意味します。

テクノロジーが進化し、複雑性を増した現代のビジネスにおいて、この孫子の言葉は重要性を増しているといっていいでしょう。製品主導だった以前のビジネスシーンならば、競合と争いながら成長ができました。しかし大企業独特の独占的な価値がコモディティ化してしまった現在、製品で勝負する企業はいずれ無理な価格競争を強いられ、共倒れするのが関の山です。

「戦わない」が現代のビジネスにおいて重要なキーワードであり、戦うことを略すために戦略があるのです。リソースをフルに使って、競合を潰そうとしてはいけません。結果的に自社のパイが増えるかもしれませんが、多くのお金と人を失ってしまうことになります。戦うことを前提とするのではなく、戦わないために戦略を練りましょう。

 

 

戦略を練るために有効な「ジョブマップ」

政が斉王を説き伏せることができた理由は2つあります。1つは「ビジョンが明確だったこと」です。政は中華統一後の世界を平和に保つため、「法」とうキーワードを用いて論理的なプレゼンをしました。これはビジネスにも共通するでしょう。商材のビジョンやストーリーを構築したうえでステークホルダーや顧客に訴求することは重要です。

また「ポジショニングがしっかりとできていたこと」も成功要因の1つです。政は、まだ誰も成し遂げたことのない「中華統一」「争いのない世の中を創る」というビジョンを掲げ、統一後に法治国家という手段を提示しました。これは他の国の頭にはなかったビジョンです。レッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンの領域に向かったことも斉王には魅力的に映ったことでしょう。

戦略において大切なのはサービスやプロダクトの持つビジョンやストーリーを明確にしたうえで、ポジショニングによって他社が気づいていない領域に進出することでなされます。

しかし他社が進出していない領域といっても、何の考えもなしに奇をてらってはいけません。必ず顧客のニーズに寄り添う必要があります。そこで最後にフレームワークを1つご紹介しましょう。

それが顧客の悩みや願望を「ジョブ」、解決するために他社の商材を使うことを「ハイア」として顧客のニーズを見つける「ジョブ理論」をもとにしたツールである「ジョブマップ」です。顧客のジョブを分解することで、どのジョブが満たされていないかどのジョブが過剰に供給されているかを把握できます。市場において見落とされている顧客のニーズを発見できるのが長所です。

BizMakeではどなたでも無料でジョブマップを使えます。これから新規事業を手掛けようとしている方、または現在、他社と争ってしまっている企業さまはぜひ一度ご利用ください。

 

 

アライアンスで無駄なリソースやコストを削減した政に学ぶ

顧客のニーズを踏まえたうえでビジョンを明確に定めて、ブルーオーシャンに進出したとしても、もちろん安心はできません。ビジネスの理想としてはプラットフォーム型のサービスですが、自社単体で実現することが困難な場合もあるでしょう。

その場合はアライアンスを結ぶことも手段の1つです。政は斉と同盟を結んだことで、戦争による傷を最小限にとどめることに成功しました。ビジネスでも、必要なサービスやプロダクトをすでに保有している企業がある場合は、無理して自前でつくらずにアライアンスを組むことで賢く事業を展開できます。できるだけコストやリソースをかけることなくビジョンを成し遂げましょう

今回はビジネスにおける戦略を説明するために、マンガ・キングダムのワンシーンをご紹介しました。キングダムにはこのほかにもビジネスシーンに通ずる場面が登場します。一度、ビジネスの視点で読んでみるのもおもしろいと思いますよ。

 

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