
ジョブ理論で分析する「アフターコロナに意識すべきビジネスモデルデザイン」
新型コロナウイルスによって、ビジネスのあり方は大きく変貌を遂げています。新型コロナウイルスにまつわるビジネスの変化が日々取り上げられてなか「結局、どんなビジネスを展開している会社が得をしているのだろう」と疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
働き方が変わり、消費者の行動が変化している現在、どのような商材を作れば、顧客のジョブを満たせるのでしょうか。今回は新型コロナウイルスによるビジネスの変貌と、アフターコロナでチャンスが舞い込んでいるビジネスについて、実例を取り上げながらご紹介します。
目次
新型コロナウイルスに関する重要なキーワード
中国・武漢で、新型コロナウイルスが発生したのが2019年の末。当時はまだここまで大きな問題になるとは思っていなかったでしょう。全国的に活動自粛宣言が発生し、日本全体として経済活動がストップしてしまいました。感染を避けるために多くの企業が出勤を停止し、消費者はいまだに「巣ごもり」状態を続けています。となると、当然オフラインのビジネスが大きく後退したのが現状であり、逆にオンライン完結を支援するサービスが大きなチャンスとなりました。
PEST分析でまとめると、非常に分かりやすくつかめます。
withコロナのPEST分析
政治的要因Politics
・助成金などの支援
・消費者への10万円支給
・主要都市での活動自粛
経済的要因Economy
・景気の大幅な後退
・雇用率の低下
・外注費の削減
社会的要因Society
・SNSの利用率上昇
・「自粛」「巣ごもり」のキーワード増加
・オンラインサービスの流行
・オフラインサービスの休止
・マスクの流行
技術的要因Technology
・リモート会議ツールなどのアップデート
・宅配サービスのアップデート
・新たなクラウドサービス、SaaSプロダクトの開発
セキュリティ機能のアップデート
このように活動自粛により、顧客とのオフラインでのアプローチをしにくくなり、オンラインでのタッチポイントが重要になっています。またテレワークが一般化し、クラウドサービスの需要が伸びています。経済の後退によって高額な商品が売れにくくなっており、今後は安価な商材が求められるのも確かでしょう。
アフターコロナのキーワードとしては「在宅支援」「クラウド型」「オンライン○○」「リモートワーク」「低価格・高品質」などです。ではアフターコロナではどのようなビジネスモデルのサービス・プロダクトが求められるのでしょうか。
アフターコロナのビジネスモデルをジョブ理論で解説
アフターコロナで求められるビジネスを探すために、まずは新型コロナウイルスによる顧客の変化について見ていきましょう。この際に「ジョブ理論」を用いることで顧客の本質的なニーズの変化が見て取れます。ジョブ理論とは顧客が満たしたい願望や失くしたい苦痛を「ジョブ(仕事)」、企業の商品を用いて解決することを「ハイア(雇う)」として、顧客の本質的な購買欲求を導き出すため理論です。
すると大きく分けて以下の2種類の変化が分かります。
ジョブ自体は変わらないものの「最も楽に解決できる手法が変わった」
まず前提としてお伝えしたいのは新型コロナウイルスのような巨大な外部環境の変化が訪れても、顧客の本質的なジョブは変わっていないということです。例えば今回の変化で大幅に利益を挙げた遠隔コミュニケーションツールの「Zoom」を例に挙げましょう。
Zoomを用いるうえでのコアなジョブは「人とコミュニケーションを取ること」です。新型コロナウイルスによる変化を受けても、そのコアなジョブは変わっていません。ただし外出自粛になってしまったために、最も楽にコミュニケーションを取る方法が「対面」から「遠隔コミュニケーションツール」に置き換わっただけです。
またUber eatsも同じです。最も巨大で本質的なニーズは「料理を食べたい」というもの。しかし新型コロナウイルスの影響を受けて外食や買い出しができなくなり、最も楽に料理を食べられる方法が出前配達に変わりました。
外部環境の変化によっても、本質的なニーズは何一つ変わっていないことを覚えておきましょう。
コアのジョブは変わらないものの、状況に応じて新たなジョブが追加される
ただし、コアなジョブは変わらないものの、新たに付属的なジョブは生まれたといっていいでしょう。分かりやすく説明するために、ジョブ理論で図解してみます。
このようにコロナの前後で「コミュニケーションを取りたい」という中核的なジョブは変わりません。つまりZoomの本質的なバリュープロポジションは変わらないのです。しかし新型コロナウイルスによる自粛という事象が発生したことによって、その以下の機能的・感情的・社会的なジョブが変化したことによって、ヒットしました。
このように外部環境の変化によって、本質的なジョブは変わらないものの、相対的に利便性が向上することがあります。今回のwith/アフターコロナでヒットしたビジネスモデルはどれも同じ現象で、爆発的に売れた商材です。
アフターコロナで期待できるビジネス
ではこの2つの観点からウィズコロナ・アフターコロナで期待できるサービスについて解釈してみましょう。
リモート会議ツール
遠隔地にいても、まるで目の前にいるような感覚で話せるリモート会議ツールがBtoC、BtoBともに求められました。LINEやgoogle meet、Skype、Where.byなど商材の需要が伸びているなか、特に躍進したのはZoomでしょう。先述した通り「対面」という選択肢が消えたからこそ求められるようになったサービスです。一般消費者にも普及していきました。「オンライン飲み会」という行動様式も広く普及し、今後も継続的に行われることが予想されます。
宅配サービス
コロナの影響により、オフラインで飲食店に行けなくなってしまった方々がオンラインで出前を注文できるサービスを利用するようになりました。Uber eatsの利用度が高まっているのはもちろん、積極的にキャンペーンを打ち出していたのが出前館です。ダウンタウンの浜田雅功を起用したプロモーションでより地名度を高めています。こちらも先述した通り、外食ができなくなった状況でも同じように美味しいものを食べたいという外部環境の変化によって求められるようになりました。
在宅で楽しめるエンターテインメント
TwitterやFacebook、LINE、Instagram、YouTubeなどのSNSの利用時間が増えています。またテレビの視聴時間が伸びたという分析結果も。在宅で楽しめるサービスが広く使われており、特に話題になったのは”あつ森”というワードも流行している「あつまれ どうぶつの森」です。ゲーム内に村をつくり他人と交流を図るようになった背景には「外で人と交流ができなくなったから」という理由があります。
在宅で消費者に商品を提供できるサービス
家にいながらしてサービスを提供できる仕組みを作っているBtoB商品が顧客のジョブを満たしています。例えばこのチャンスにテレビCMを始めたのが飲食店が誰でもテイクアウトを導入できるアプリ「menu」です。また誰でも商品をオンラインで販売できる「BASE」「Stores.jp」も店舗販売の企業には助かるサービスだったに違いありません。また今後は国の認可が下り次第、オンライン診療サービスなどもスタートしていき、流行するでしょう。
リモートワークをサポートするツール
先述したZoomなどのリモート会議ツールも含まれますが、そのほか遠隔での営業をサポートする「ベルフェイス」や、チャットツール「Slack」「ChatWork」なども重宝されています。またテレワークしにくい人事総務部門用の「Smart HR」 も期待できるサービスです。
新しい行動様式を理解したビジネスモデルデザインを
コロナを経て、クラウドやSaaSはさらに躍進することでしょう。以前に比べて、対面せずオンラインでのやり取りが増えていくことが予想されます。BtoC向けの商材の場合はオンラインに購入の場を持たせることが必要ですし、BtoBのアプローチもオンラインで進めていけるようになります。
ジョブ理論を活用して顧客のジョブを掴んだうえで、PESTを見ることで「現在、最も楽にジョブを満たせる方法」について仮説を立てることができます。ぜひ売り上げ伸ばしている企業を参考に自社商材を見直してみましょう。それがアフターコロナ対策として非常に役立ちます。
